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第14話 告白
しおりを挟む……まずい。
答えてしまった。
……これじゃ、私が元からシルエじゃなかったって、バレるかもしれない。
「……また後でね~」
肩にポンと手を置かれて、2人は去っていった。
……やばい、ホントにやばい。
と、とりあえずフォルティアの仕事に専念しなきゃ。
……時計台ってここだよね?会計の先輩来なくない?
「……あ」
「あ……」
……シャルローゼ様だ。
あれ以来喋っていないんだよなー……。生徒会の先輩になったんだから、謝るべき?でも謝りたくない……。
「……ディークなら来ませんわ」
「え?」
「あいつ、いいとこのお嬢様大嫌いなんですの。私やサクラ先輩、ロディも嫌われてますのよ。」
「えええ……。」
確か、唯一の平民出身の役員だって言ってたな。
……別にリタ王国の貴族は国民を苦しめるような真似はしていないし、民のためにお金をつかう貴族の方が多い。まぁでも、貴族を嫌う人がいるのも事実なんだけどね。きっとその先輩もそうなのだろう。
「その先輩はお仕事をちゃんとこなしているのですか?」
「最低限の仕事はしていますわ。でも、いつも単独行動。困ってますのよ」
「あー…、なるほど。」
「という訳で、警備は1人でした方がいいわよ。ディークは来ないもの」
「…」
失礼だけど、にわかに信じ難い。
嘘つかれてるかもしれないんだよな~……。
一応恋敵な訳だし、嫌がらせかもしれない。
「な、何ですのその目は!ホントですわよ!?」
「……」
「……んんんもうっ!分かりました!!アーディル家の名にかけて誓いますっ!」
「そうですか。では失礼しますわ」
1人で学園内を警備したが、何事もなかった。
……明日サクラ先輩になにを聞かれるやら……。
「ただいま帰りました」
「あ、帰ったかシルエ」
「お兄様!お帰りになっていたんですね」
「ああ。生徒会はどうだった?」
「……あの、サクラ先輩ってどんな方ですか?」
「……サクラ?んー……、よくわからんやつだな。
笑っているくせに、いつも心の中は真っ黒って感じの女だ。あーいうのが1番怖い。」
……さすがにそれは失礼なのでは……?
心の中は、真っ黒か。
サクラ先輩って、やっぱり日本人?
考えたら頭痛くなってきた……。
もう寝ちゃえ。
案の定サクラ先輩はお昼休みに私のところへ来た。
「ちょっといいかなぁ~」
そう言われ、テラスについて行く。
「……これってなんて読むのかなぁ~」
紙には、漢字で「椿」と書かれていた。
「……つばき」
それを、普通に読んでしまったことを、後悔した。
サクラ先輩が、ニヤァっと、不気味な程に笑ったのが、怖かった。
「……100点満点の答えをありがとぉ~。」
「何が、したいんですか」
「これねぇ~、私のお母様の名前~。」
「!!」
「他にも色々聞きたいな~。今日は警備の当番じゃないから生徒会はおやすみだよ~。放課後悪いけど時間ちょ~だいね、シルエさん」
椿、お母さんの名前……?
じゃあサクラ先輩が珍しい黒髪なのも、名前がサクラなのも、すべて私の予想通りだったってこと?
「そんな……」
考えれば考えるほど、頭が痛い。
やっぱり放課後、サクラ先輩は私の教室まで迎えに来た。
「……ねぇ、シル。あなたってサクラ様と仲がよろしいの?」
「……どーなんだろうねぇ。」
カナが心配そうな顔で私を見ていた。
それにニコッと微笑んだ。
「……大丈夫ですわ、カナ。」
「シル!!」
カナにいきなり抱きつかれた。
「えっ!?ちょ、カナ……、ここ教室ですわよ!」
「……あなたが、どこか遠くへ行ってしまいそうですごく、すごく怖いですわ。お願いシル……。どこへもいかないで」
「……お約束いたしますわカナ。そんなことにはなりません。」
「本当に?」
「ええ。」
「……取り乱してごめんなさい。行ってらっしゃい、シル」
「…行ってまいります。」
「ごめんね2回も呼び出して~」
「いえ。で、何でしょう」
「君って何者なのかな~。」
2人で中庭の椅子に座った。
……このまで来れば逃げきれない。
話すしか、ないか。
「……今から私が言うことを守れるなら、お話します」
「……約束します。あなたの言うことを守る。」
「1つ、このことは家族にも誰にも口外しないこと。
2つ、今から話すことについて、話すのは今日で最後。
3つ、話を聞いた後も私をシルエ・ルナリスとして接すること。これだけ守っていただけますか」
「わかった。」
「……」
緊張する。誰にもこんな話したことないし。
「……まず、私は初めからシルエ・ルナリスだった。わけではございません。」
「え……?」
「私はおそらくあなたのお母様と同じ世界にいた人間で、日本と呼ばれる国にいました。」
紙とペンを取り出し、「矢崎・澪」と書いた。
「これが日本での私の名前でした。……ですが、ある日通り魔に刺され、その世界での私は死にました。……ですが、目覚めたらこの世界にシルエ・ルナリスとなっていた。私は、転生……と呼ばれるものをしたのです。」
「転生……?」
「はい。」
「死んでもう一度生を受けたということ?」
「はい。ですが、サクラ先輩のお母様は、日本人として生きている時にこの世界に来たようですね。
椿という名前があるくらいですし。
なぜこの世界に来たのかは、わかりませんが何かに巻き込まれたのでしょう。」
「……そういう、ことか。」
「前世の記憶があったから、私は漢字が読めたし、桜も椿も知っていた。それだけなのです。」
「……じゃあ私には日本という国の血が入っている、そういうこと?」
「そうです。」
誰にもしたことのない、初めての告白だった。
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