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「皇女殿下に隠し事だなんてとんでもない。ただダンス後なので涼もうとテラスに行こうとしていた
だけですが。」
「そう。じゃあ私、貴方の大事にしているフィアンセにお話しがあるのよ。少しお話をさせていただいても?」
「ジェンティアナに、ですか。」
先程母に皇女と目を合わせるなと言われた手前、ジェンティアナは焦る表情を顔に浮かべて、不安そうにうつむいていた。そして組んでいる腕に少し力が入っているのが分かる。彼女は皇女を、怖がっている。だから、
僕が守らなければならない。いつも僕は肝心な時ジェンティアナを守ってやれない、そばにいてやれない。だから、隣にいるのに彼女を守ることが出来なければ婚約者失格だ。大丈夫、目を合わせさえしなければいい。
精霊憑きは、強力な精霊力を持っている人間と目を合わせた時、何やらリンクするものを感じるのだという。
母の持っているその力は微弱であるため、少しの間目を合わせてもジェンティアナが自覚を持つことはないらしい。
だが皇女は話が別だ。この国の精霊王にさえ愛される魂。その魂の持ち主なんかがジェンティナと目を長い間合わせれば何が起きるかだなんて、分かったものではないのだ。
「そう、ジェンティアナ嬢に。」
「恐れ入りますが、何の用でしょう。」
「何、と言われましても。社交界で初めて見る姫君にご挨拶したかっただけよ、そんな怖い顔をなさならないで。」
「はは、怖い顔だなんて嫌だな。していませんよそんなこと。すみませんが、今彼女は人込みに酔ってしまった
みたいで体調が優れないんです。また別の機会にしてくれませんでしょうか。」
何とか逃げ切りたい。まさか正面にいきなり現れるとは思っていなかったが、民衆の前で「婚約者の体調がよくないから後にしてくれ」と言えば会話を強要できないはずだ。こんな手しか使えないのが情けない限りだが、
相手は皇族。上手く交わさないとこちらが不敬罪に問われてしまう。
「…ふむ、先程から彼女は青い顔をしているので本当にそのようですわね。ああまって、でも一つだけ。」
目を合わせる以外に精霊憑きであることを確認する方法はないと母は言った。皇女アルテミシアとジェンティアナには面識がないはず。だからその確認方法を用いらないと、彼女はジェンティアナが精霊憑きであることを確認できない。
「アルカンディア帝国第一皇女、アルテミシア=メイヴ・アルカンディアの名において、今ここに新たな精霊姫の
誕生を宣言いたします!」
「「!!??」」
アルテミシアは、ホール全体に響くように、高らかで美しい声を響かせた。それに驚いて、
僕は彼女を信じられないと物を見るような眼差しで見つめた。だが、それにハッとする。まだジェンティアナは、
アルテミシアと目を合わせてはいないだろうか。
「だめだジェンティアナ、皇女様を見てはいけない。」
「っ、分かっています…。」
ジェンティアナも、皇女のいきなりの宣言に驚いたはずなのに彼女は必死に地面を見つめ続けてくれていた。
だがその努力を無駄にするかのように、皇女はこちらに近づいて来るとジェンティアナの手を両手で握った。
やられた……、まさか確証がないのに宣言まがいの事を
こんな公の場でするだなんて。こんなことをされたら、
ジェンティアナの自覚うんぬんの問題ではなくなる。
彼女が精霊憑きである事は、周囲が知る"事実"になってしまうではないか。
「ふふ、大丈夫ですよジェンティアナ。私とリンクをしないように必死なのよね。でも大丈夫、そんなことを
しなくても私は分かっていましてよ。貴方が学院生だったころから知っているわ、貴方が持つその力はとっても
美しいの。それを身をもって体験してみない?」
「皇女殿下、何をおっしゃっているのか一体…。」
「…私と目を合わせるなといったのは公爵夫人ね。彼女は貴方に苦しい思いをさせたくないみたい。
ジェンティアナはアスクレピアス家に大切にされているのね。」
「で、ですから先ほどから何を…!精霊姫とは、何なのですか。」
「知りたい?知りたいなら私の目を見て。すべてを教えてあげる。貴方にはまだ、アスクレピアス家の
役に立てる大いなる力があるのよ。」
それに、ジェンティアナの体がピクりと反応する。だめだ、彼女の力はもう十分にある、公爵家に認められる
才が、ジェンティアナにはあるんだ。それ以上何かを手にして、彼女が傷ついてしまうだなんて、何かを失うかもしれないだなんて、あってはならないんだ。
「君には力がある。…だから、彼女の言葉に耳をかさなくていい。」
「……。」
一瞬知りたそうな表情をした彼女だったが、僕の言葉がまだ聞こえているようで安心した。
ぐっとこらえて、まだ下を向いてくれている。問題は、このままどうこの場から抜け出すかだ。
「…恐れながら、殿下。小公爵様は、私の力を十分とお認めになってくれています。ですから、」
「従順なのね。そういう子は嫌いじゃない。でもうかつだったわね、本当に私が怖いなら言葉すら交わすべき
じゃなかった。」
「…!?」
ジェンティアナの顔が、露骨に一瞬歪んだ。そしてその場で地面にへたりと座り込んでしまう。
そして美しく仕立てあげられたドレスには、ポタポタと
赤い血が垂れて滲んだ。ジェンティアナは、咳き込むでも
何でもなく、いきなり吐血してしまっていた。
「ジェン!?」
「…今のは、一体。」
地面に座り込んでいても、血を吐いても、彼女は皇女の手を離していなかった。ただ力の抜けた顔をして、ただ皇女と眼は合わさずに、握られた手を強く握り返していた。
「皇女殿下、ジェンティアナに何をっ、」
「手荒な真似をしてごめんなさい。でもね、私この子が欲しいの。」
周りがこちらを見てざわめきを起こす中、皇女はにこりと美しく花がほころぶように微笑む。だが、
彼女のその笑みがこちらからすれば悪魔の微笑みなのを知っている。彼女は、ジェンティアナをどこか
遠くに連れて行ってしまうのではないかと、子供みたいな恐怖が、どんどん募っていく。
「さあこれで、やっと貴方の目が見れるわね。精霊妃の魂に語りかけられたら、さすがにもう
貴方の騎士の声は聞こえないでしょう。」
「駄目だジェンティアナ、皇女殿下の目を見るなっ!!」
すかさず彼女の目を隠そうとした。だがそれを、後ろから押さえつけられる。
「!?皇太子殿下、離してください!!」
「…悪いレシュノルティア。多分これ以上姉上の言葉に逆らうと不敬罪になる。やめておけ。」
僕を押さえつけたのはなんとイーシアスだった。そうだ、イーシアスとアルテミシアは双子の兄弟。
精霊憑きの姉をもつ彼なら、今夜何が起きるのかを分かっていたのかもしれない。
拘束を解こうとするが、もう、遅かった。
「不敬でも何でもいいっ、離してくれ!!」
「ジェンティアナ、私の探し求めた愛しい子。私の目を見なさい。」
「…はい、姫様。」
そう言って顔を上げたジェンティアナの瞳には、生気がこもっていなかった。何か操られるように
ゆっくりと顔を上げると、虚ろな表情で皇女と目を合わせた。
「やっぱり、やっぱりそうよイーシアス。何て綺麗で美しい魂なの…。澄のようじゃない。
今すぐにでもお友達になりたい所だけれど…貴方は今から少し長い夢を見なければならないから
お預けね。ぐっすりおやすみジェンティアナ。貴方が正しい魂を宿して帰ってこれますように。」
だけですが。」
「そう。じゃあ私、貴方の大事にしているフィアンセにお話しがあるのよ。少しお話をさせていただいても?」
「ジェンティアナに、ですか。」
先程母に皇女と目を合わせるなと言われた手前、ジェンティアナは焦る表情を顔に浮かべて、不安そうにうつむいていた。そして組んでいる腕に少し力が入っているのが分かる。彼女は皇女を、怖がっている。だから、
僕が守らなければならない。いつも僕は肝心な時ジェンティアナを守ってやれない、そばにいてやれない。だから、隣にいるのに彼女を守ることが出来なければ婚約者失格だ。大丈夫、目を合わせさえしなければいい。
精霊憑きは、強力な精霊力を持っている人間と目を合わせた時、何やらリンクするものを感じるのだという。
母の持っているその力は微弱であるため、少しの間目を合わせてもジェンティアナが自覚を持つことはないらしい。
だが皇女は話が別だ。この国の精霊王にさえ愛される魂。その魂の持ち主なんかがジェンティナと目を長い間合わせれば何が起きるかだなんて、分かったものではないのだ。
「そう、ジェンティアナ嬢に。」
「恐れ入りますが、何の用でしょう。」
「何、と言われましても。社交界で初めて見る姫君にご挨拶したかっただけよ、そんな怖い顔をなさならないで。」
「はは、怖い顔だなんて嫌だな。していませんよそんなこと。すみませんが、今彼女は人込みに酔ってしまった
みたいで体調が優れないんです。また別の機会にしてくれませんでしょうか。」
何とか逃げ切りたい。まさか正面にいきなり現れるとは思っていなかったが、民衆の前で「婚約者の体調がよくないから後にしてくれ」と言えば会話を強要できないはずだ。こんな手しか使えないのが情けない限りだが、
相手は皇族。上手く交わさないとこちらが不敬罪に問われてしまう。
「…ふむ、先程から彼女は青い顔をしているので本当にそのようですわね。ああまって、でも一つだけ。」
目を合わせる以外に精霊憑きであることを確認する方法はないと母は言った。皇女アルテミシアとジェンティアナには面識がないはず。だからその確認方法を用いらないと、彼女はジェンティアナが精霊憑きであることを確認できない。
「アルカンディア帝国第一皇女、アルテミシア=メイヴ・アルカンディアの名において、今ここに新たな精霊姫の
誕生を宣言いたします!」
「「!!??」」
アルテミシアは、ホール全体に響くように、高らかで美しい声を響かせた。それに驚いて、
僕は彼女を信じられないと物を見るような眼差しで見つめた。だが、それにハッとする。まだジェンティアナは、
アルテミシアと目を合わせてはいないだろうか。
「だめだジェンティアナ、皇女様を見てはいけない。」
「っ、分かっています…。」
ジェンティアナも、皇女のいきなりの宣言に驚いたはずなのに彼女は必死に地面を見つめ続けてくれていた。
だがその努力を無駄にするかのように、皇女はこちらに近づいて来るとジェンティアナの手を両手で握った。
やられた……、まさか確証がないのに宣言まがいの事を
こんな公の場でするだなんて。こんなことをされたら、
ジェンティアナの自覚うんぬんの問題ではなくなる。
彼女が精霊憑きである事は、周囲が知る"事実"になってしまうではないか。
「ふふ、大丈夫ですよジェンティアナ。私とリンクをしないように必死なのよね。でも大丈夫、そんなことを
しなくても私は分かっていましてよ。貴方が学院生だったころから知っているわ、貴方が持つその力はとっても
美しいの。それを身をもって体験してみない?」
「皇女殿下、何をおっしゃっているのか一体…。」
「…私と目を合わせるなといったのは公爵夫人ね。彼女は貴方に苦しい思いをさせたくないみたい。
ジェンティアナはアスクレピアス家に大切にされているのね。」
「で、ですから先ほどから何を…!精霊姫とは、何なのですか。」
「知りたい?知りたいなら私の目を見て。すべてを教えてあげる。貴方にはまだ、アスクレピアス家の
役に立てる大いなる力があるのよ。」
それに、ジェンティアナの体がピクりと反応する。だめだ、彼女の力はもう十分にある、公爵家に認められる
才が、ジェンティアナにはあるんだ。それ以上何かを手にして、彼女が傷ついてしまうだなんて、何かを失うかもしれないだなんて、あってはならないんだ。
「君には力がある。…だから、彼女の言葉に耳をかさなくていい。」
「……。」
一瞬知りたそうな表情をした彼女だったが、僕の言葉がまだ聞こえているようで安心した。
ぐっとこらえて、まだ下を向いてくれている。問題は、このままどうこの場から抜け出すかだ。
「…恐れながら、殿下。小公爵様は、私の力を十分とお認めになってくれています。ですから、」
「従順なのね。そういう子は嫌いじゃない。でもうかつだったわね、本当に私が怖いなら言葉すら交わすべき
じゃなかった。」
「…!?」
ジェンティアナの顔が、露骨に一瞬歪んだ。そしてその場で地面にへたりと座り込んでしまう。
そして美しく仕立てあげられたドレスには、ポタポタと
赤い血が垂れて滲んだ。ジェンティアナは、咳き込むでも
何でもなく、いきなり吐血してしまっていた。
「ジェン!?」
「…今のは、一体。」
地面に座り込んでいても、血を吐いても、彼女は皇女の手を離していなかった。ただ力の抜けた顔をして、ただ皇女と眼は合わさずに、握られた手を強く握り返していた。
「皇女殿下、ジェンティアナに何をっ、」
「手荒な真似をしてごめんなさい。でもね、私この子が欲しいの。」
周りがこちらを見てざわめきを起こす中、皇女はにこりと美しく花がほころぶように微笑む。だが、
彼女のその笑みがこちらからすれば悪魔の微笑みなのを知っている。彼女は、ジェンティアナをどこか
遠くに連れて行ってしまうのではないかと、子供みたいな恐怖が、どんどん募っていく。
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貴方の騎士の声は聞こえないでしょう。」
「駄目だジェンティアナ、皇女殿下の目を見るなっ!!」
すかさず彼女の目を隠そうとした。だがそれを、後ろから押さえつけられる。
「!?皇太子殿下、離してください!!」
「…悪いレシュノルティア。多分これ以上姉上の言葉に逆らうと不敬罪になる。やめておけ。」
僕を押さえつけたのはなんとイーシアスだった。そうだ、イーシアスとアルテミシアは双子の兄弟。
精霊憑きの姉をもつ彼なら、今夜何が起きるのかを分かっていたのかもしれない。
拘束を解こうとするが、もう、遅かった。
「不敬でも何でもいいっ、離してくれ!!」
「ジェンティアナ、私の探し求めた愛しい子。私の目を見なさい。」
「…はい、姫様。」
そう言って顔を上げたジェンティアナの瞳には、生気がこもっていなかった。何か操られるように
ゆっくりと顔を上げると、虚ろな表情で皇女と目を合わせた。
「やっぱり、やっぱりそうよイーシアス。何て綺麗で美しい魂なの…。澄のようじゃない。
今すぐにでもお友達になりたい所だけれど…貴方は今から少し長い夢を見なければならないから
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