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プロローグ
しおりを挟む恩返しが、したかった。今思えば恋愛感情か全てではなかったと思う。ただただ、あの方のお役に立ちたかった。必要とされる、傍にいることが許される人間になりたかった。
「アンジャベル帝国立魔法学院中等部卒業試験、第一位は…ジェンティアナ・レ・イフェイオン子爵令嬢!!」
ほら、これが私が頑張った結果です、貴方のための、努力の結晶。勝ち誇ったみたいな、自信満々で親に褒めることを要求する子供みたいな表情であなたを人混みの中で探した。
ずっとあなただけを見てた、だから私はすぐあなたを見つけられる。少しは、こちらを笑って見てくれているだろうか…だなんて少しも期待はしてはいけなかったのに。
「……え?」
見つけたあなたの顔は、なんだか曇っていて、どうみても嬉しそうには見えやしない。この努力は全部、あなたのためだけにしてきたのに……、少しは笑ってよ。
その時、ドクンと心臓が胸に手を当てていなくても分かるほど、大きく揺れた。ここは私が見ている世界に間違いはないのに、何故かタブレットの画面越しに、この世界を見たことがある記憶。タブレットって何?画面越しって、どこでそれを見た?今私が思った記憶の全てが、全部文字に並んで、見たことの無い言語が読めてしまう。そして、自分のことなのに"好きな人に見向きもされなくて可哀想"といった、申し訳程度の哀れみまで、何か感じる。
なにこれ、私の目がどうかしてしまったのだろうか。…いや、多分違う。
これは、この記憶を私は確かにどこかでみたことがある。ここは正真正銘、乙女ゲーム「lumtère」の世界の中だ。
「…てことは、私が一切報われない世界線なのかぁ、」
そんなことをぼそりとつぶやいては、私は地面にぺちゃりと膝をついた。
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