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追い出されました?
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享年16歳。雅紀の人生はあっという間だった。閻魔様が言うには、雅紀が死んだのは何かの間違いないらしいのだが…。
そんな人生あっという間だったはずの雅紀は今、人生史上?一番のピンチにおちいっている。
「俺のせい?」
優しく穏やかな笑顔のおばあちゃんが、なにやら不穏な空気になっている。
さっきまで穏やかに感じていた空気が、重さを持ち、肌にピリッとした刺激を感じるようになっている。
「どうしてかしら?あの人にしてあげたかったことを忘れてたみたい。」
表情がだんだんと険しくなって、目の色も変わってきている。白目がなくなり、瞳が全部が黒く光っているようだ。
「あの…。」
雅紀は、小声で声をかけてみる。しかし、おばあちゃんは全く反応しない。
「そう。あの人のそばにいなきゃ。ずっと……」
なんか、怖い事をぶつぶつと呟いている。
「トク…。おばあちゃんを元に戻す事は、止める事はできないのか?俺と話したせいで…」
ほんの少し会話しただけだが、おばあちゃんの優しさ、心の温もりを感じた。だからこそ、その、優しさ温もりがきえてほしくない。と強くおもった。
「こうなってしまっては、何もできない。」
「そんな……。」
雅紀は呆然と変化していくおばあちゃんを見つめた。
あの優しかったおばあちゃんが、徐々に黒いモヤのようなものに覆われている。
言葉も聞き取りにくくなっているが、「あの人のそばに」を繰り返しているようだ。
「悪霊化に気づいて、もうすぐ閻魔様の部下が来る。」
「部下?」
ただ見ることしかできない雅紀に、トクが伝える。
「この世界は閻魔様が全て管理されている。異変があればすぐにわかるのさ。」
「じゃあ、おばちゃんはどうなるの?元には、戻れないんだろ?
「ああ。閻魔様でも無理だ。だから、捕らえられたものはそのまま封印され、輪廻からも外される…。」
トクの話を聞いていると、おばあちゃんの動きが止まった。
「?おばあちゃ…」
止まったと思ったら、ものすごい勢いで空へ一瞬で飛び上がり、そして、ガラスが割れるような大きな音が響いた。
バリーン!
空には大きなヒビが入り、バラバラと破片のようなものが降ってくる。もう一度、ヒビの入った場所に衝突すると、大きな穴が開き黒いモヤを纏ったおばあちゃんはその穴から飛び出していった。
「なっ!ヤバい。間に合わなかった…。」
トクが真っ青な顔で呟いたのと、ほぼ同時にものすごい風が起き、雅紀たちを巻き上げた。
「うわ!」
風に押されるように、さっき開いた穴へと吸い込まれていく。
雅紀たちと一緒にさっき降ってきた破片も吸い込まれているようだ。
「ななななななー!???」
ぽしゅ!
プチパニックの雅紀と、青ざめたトクを吸い込んだ穴はなんとなく可愛らしい音を 立てて閉じた。
穴に吸い込まれた雅紀たちが次に見たものは、空からではあるが、見慣れた風景だった。
「ここは?普通の街並み?日本だよな…。」
街頭のあかり。道路を行き交う車のライト。雅紀にははっきりと見えている。どういうことだ?霧がかかっていない…。
「生前の世界だ。狭間の世界から出てしまった。」
今にも魂が口から出るのでは、と思わんばかりのトクから、か細い声がきこえる。
「は?じゃあ、ここは俺が生きていた世界なの?」
まだ、プチパニックを引きずっていた雅紀が驚く。
「そうだ。普通なら、閻魔様から許可を得て来ることしかできないのだが。さっきの衝撃で世界の歪みが起き、こっちの世界に吸い込…、追い出されたようだ。」
よくよく、回りを見ると雅紀は自分浮いていることに気付いた。
「うわ!俺浮いてる?しかも、足がない!」
まさに、正真正銘の幽霊スタイルになっちやった。
しばらく、雅紀はプカプカと浮いて感触を確かめてみた。
さっきまで、死んでいても足はあって、地面を踏んで歩いてたのに…。
「はぁ~ぁ。どうして、お前の回りでイレギュラーばかり起きるんだ。」
いまだに、青ざめた顔でトクが呆れたように話す。
「俺の回りって、言われてもわかんねぇよ。」
雅紀は浮いた状態で、ない足を組み、両手を頭の後ろに回すと、トクは浮くことに慣れているようで、スッと雅紀の足の上に乗って来る。
「トク、慣れてんな。よくこっちに来るのか?俺の時も、いたし…」
「まあな。」
「で、俺ってこれからどうなるの?穴閉じちゃってるし?は!もしかして、生き返れるってオチ?」
「生き返れるか!仮に、出来たとしても、お前の身体はもうないぞ。」
「え?何で、ないの?」
「日本は、火葬だろ。他の国で土葬もあるが、そしたら立派なゾンビの出来上がりだ。まぁ、どのみち生き返ることはあり得ないってことだ。」
トクに、全否定されてしまった。確かに、雅紀も想像するとゾンビは嫌だった。
「とりあえずは、私が一緒にいるので、閻魔様が見つけて下さるだろう。今回は、巻き込まれただけだから、そのまま問題なく狭間の世界へ戻れるはずだ。大人しく待っているといい。」
「そうだ。おばあちゃんは?俺たちと戻れるの?」
雅紀は、おばあちゃんをほっとけないと強く訴えてくる。しかし、トクの表情は厳しいままだ。
「この世界に居着いてしまえば、例え、閻魔様でも無理だ。つれて戻せても、悪霊化はもどせないから、そのまま封印される事になる。もう、諦めろ。」
冷たい声で、雅紀へ告げる。
「そんな…。俺やっぱり嫌だ。どうにか出来ないのか?諦めたくない!」
雅紀は、そう強い口調で言い放し、おばあちゃんが向かって行った方向へ動き出した。
「お前が行ってもどうにもならないって!しかも、この世界から簡単に見つけ出せるはずがない。ここで、待っているのが一番だ。」
そんな人生あっという間だったはずの雅紀は今、人生史上?一番のピンチにおちいっている。
「俺のせい?」
優しく穏やかな笑顔のおばあちゃんが、なにやら不穏な空気になっている。
さっきまで穏やかに感じていた空気が、重さを持ち、肌にピリッとした刺激を感じるようになっている。
「どうしてかしら?あの人にしてあげたかったことを忘れてたみたい。」
表情がだんだんと険しくなって、目の色も変わってきている。白目がなくなり、瞳が全部が黒く光っているようだ。
「あの…。」
雅紀は、小声で声をかけてみる。しかし、おばあちゃんは全く反応しない。
「そう。あの人のそばにいなきゃ。ずっと……」
なんか、怖い事をぶつぶつと呟いている。
「トク…。おばあちゃんを元に戻す事は、止める事はできないのか?俺と話したせいで…」
ほんの少し会話しただけだが、おばあちゃんの優しさ、心の温もりを感じた。だからこそ、その、優しさ温もりがきえてほしくない。と強くおもった。
「こうなってしまっては、何もできない。」
「そんな……。」
雅紀は呆然と変化していくおばあちゃんを見つめた。
あの優しかったおばあちゃんが、徐々に黒いモヤのようなものに覆われている。
言葉も聞き取りにくくなっているが、「あの人のそばに」を繰り返しているようだ。
「悪霊化に気づいて、もうすぐ閻魔様の部下が来る。」
「部下?」
ただ見ることしかできない雅紀に、トクが伝える。
「この世界は閻魔様が全て管理されている。異変があればすぐにわかるのさ。」
「じゃあ、おばちゃんはどうなるの?元には、戻れないんだろ?
「ああ。閻魔様でも無理だ。だから、捕らえられたものはそのまま封印され、輪廻からも外される…。」
トクの話を聞いていると、おばあちゃんの動きが止まった。
「?おばあちゃ…」
止まったと思ったら、ものすごい勢いで空へ一瞬で飛び上がり、そして、ガラスが割れるような大きな音が響いた。
バリーン!
空には大きなヒビが入り、バラバラと破片のようなものが降ってくる。もう一度、ヒビの入った場所に衝突すると、大きな穴が開き黒いモヤを纏ったおばあちゃんはその穴から飛び出していった。
「なっ!ヤバい。間に合わなかった…。」
トクが真っ青な顔で呟いたのと、ほぼ同時にものすごい風が起き、雅紀たちを巻き上げた。
「うわ!」
風に押されるように、さっき開いた穴へと吸い込まれていく。
雅紀たちと一緒にさっき降ってきた破片も吸い込まれているようだ。
「ななななななー!???」
ぽしゅ!
プチパニックの雅紀と、青ざめたトクを吸い込んだ穴はなんとなく可愛らしい音を 立てて閉じた。
穴に吸い込まれた雅紀たちが次に見たものは、空からではあるが、見慣れた風景だった。
「ここは?普通の街並み?日本だよな…。」
街頭のあかり。道路を行き交う車のライト。雅紀にははっきりと見えている。どういうことだ?霧がかかっていない…。
「生前の世界だ。狭間の世界から出てしまった。」
今にも魂が口から出るのでは、と思わんばかりのトクから、か細い声がきこえる。
「は?じゃあ、ここは俺が生きていた世界なの?」
まだ、プチパニックを引きずっていた雅紀が驚く。
「そうだ。普通なら、閻魔様から許可を得て来ることしかできないのだが。さっきの衝撃で世界の歪みが起き、こっちの世界に吸い込…、追い出されたようだ。」
よくよく、回りを見ると雅紀は自分浮いていることに気付いた。
「うわ!俺浮いてる?しかも、足がない!」
まさに、正真正銘の幽霊スタイルになっちやった。
しばらく、雅紀はプカプカと浮いて感触を確かめてみた。
さっきまで、死んでいても足はあって、地面を踏んで歩いてたのに…。
「はぁ~ぁ。どうして、お前の回りでイレギュラーばかり起きるんだ。」
いまだに、青ざめた顔でトクが呆れたように話す。
「俺の回りって、言われてもわかんねぇよ。」
雅紀は浮いた状態で、ない足を組み、両手を頭の後ろに回すと、トクは浮くことに慣れているようで、スッと雅紀の足の上に乗って来る。
「トク、慣れてんな。よくこっちに来るのか?俺の時も、いたし…」
「まあな。」
「で、俺ってこれからどうなるの?穴閉じちゃってるし?は!もしかして、生き返れるってオチ?」
「生き返れるか!仮に、出来たとしても、お前の身体はもうないぞ。」
「え?何で、ないの?」
「日本は、火葬だろ。他の国で土葬もあるが、そしたら立派なゾンビの出来上がりだ。まぁ、どのみち生き返ることはあり得ないってことだ。」
トクに、全否定されてしまった。確かに、雅紀も想像するとゾンビは嫌だった。
「とりあえずは、私が一緒にいるので、閻魔様が見つけて下さるだろう。今回は、巻き込まれただけだから、そのまま問題なく狭間の世界へ戻れるはずだ。大人しく待っているといい。」
「そうだ。おばあちゃんは?俺たちと戻れるの?」
雅紀は、おばあちゃんをほっとけないと強く訴えてくる。しかし、トクの表情は厳しいままだ。
「この世界に居着いてしまえば、例え、閻魔様でも無理だ。つれて戻せても、悪霊化はもどせないから、そのまま封印される事になる。もう、諦めろ。」
冷たい声で、雅紀へ告げる。
「そんな…。俺やっぱり嫌だ。どうにか出来ないのか?諦めたくない!」
雅紀は、そう強い口調で言い放し、おばあちゃんが向かって行った方向へ動き出した。
「お前が行ってもどうにもならないって!しかも、この世界から簡単に見つけ出せるはずがない。ここで、待っているのが一番だ。」
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