狭間の世界からこんにちは

RIKU

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死んでしまいました。そして…

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鳴り響く救急車のサイレント。だんだんと近づいて来る複数の足音。言葉が聞き取り分けれないほどの人の声。そんな中で、段々と薄れていく意識の中で俺は、自分のことを認識した。
ああ…。俺、死ぬんだな…。


世間では、夏休みに入り連日酷暑が続いていた。この日は、夏休み中の登校日になっており雅紀は自転車で通学中だった。
「あっち~!何でこんな日に学校に行かなきゃならないんだよ!」
まだ数分しか自転車を漕いでないのに、すでに雅紀は汗だくになっている。
そして、汗と同じように口からはしぜんと愚痴がこぼれている。

雅紀は暑さや、学校に対してぶつぶつと愚痴をこぼしいつも通り坂を下り曲がろうとしたところ、急に目の前に猫が飛び出してきた。
「うわ!」
飛び出してきた猫を避けようとして、雅紀は自転車のハンドルをきると、ギリギリのところで猫は避けることができた。

「はあ~、良かった。」
後ろを振り向き、無事な猫を確認し安堵した瞬間、雅紀は何か大きく、そして硬いものにぶつかった。
    ガシャン!
あまりにも一瞬の事で雅紀は何が自分に起きたのか飲み込めない。
ただ、ものすごいスピードでぶつかったのだろう。全身が動かない。そして、身体の中から熱さを感じていた。
しかし、不思議と痛みを感じない。
いまだに状況が飲み込めない雅紀は、ゆっくりと唯一動かすことのできた眼を使い回りを見渡した。
そして、自分の状況を理解した。
「俺…。あれにぶつかったんだ…」
雅紀が倒れている近くに、大きなコンクリートの塀が落ちていて、少し離れたところに横転したトラックが見えた。
どうやら、トラックが何らかの理由で横転し、積んでいたコンクリート塀も荷台から外れてしまったようだ。  
「運、わりぃな…」
雅紀は、いまだに痛みを感じずないまま、
「猫。逃げたかな。巻き込まれてないよな」
薄れていく意識の中で猫を気にしていた。

8月17日。享年15歳。秋月雅紀(あきつ まさき)


ふわふわ。
「ん?」
何が頬に触っている感触がある。少しずつ、あの時に途切れた意識が戻ってきた。
雅紀は、頬に触れる物を確かめるため手をゆっくり動かした。
あの時、全く動かなかった身体を動かすことができた。痛みも全然ない。
いや、感じれないのだろうか?本当にじぶんの身体を、手を動かせているのだろうか?と雅紀は混乱した。
しかし、頬まで動かした手の先に、動物のような毛、細く長くしなやかに伸びるものを触った感触がした。
「にゃぁ~」
頬に触れているものを触った瞬間、耳元で聞こえた鳴き声に驚き、両目を見開いた。
「何で猫??俺、死んだんじゃ…。」
横には、鳴き声の主だろう。見るからにふわふわ毛で全身真っ黒の猫が、長い尻尾をゆっくり動かしながらこっちを見ている。
「???」
雅紀は何がどうなっているのかわからずにいる。死んだはずの自分。見たことのない猫。
そして、回りを見渡すと見たことないような風景がひろがっている。

「ここはどこなんだ。病院ではないようだし…。」
雅紀が目を覚ました部屋は、雅紀が寝ているベッド以外ものがほとんどない。
いや、ベッドしかない。窓は開いており、気持ちのいい風がカーテンを揺らしている。
しかし、雅紀にははっきりと見えるものと、霧がかかっているようなぼやっとした他のものが見えていた。

「何なんだ…。薄く人が…、別の風景がダブって見える?」
両目を赤くなるくらい強く、おもいっきりこすってもう一度辺りを見渡した。
雅紀の目には、今いる部屋の風景と薄くスクリーンの映像のような風景が重なり合うように見えているのだ。
瞼がヒリヒリ痛むのを感じながらも、もう一度目をこすった。
「不思議な風景だろう。」
何度も目を擦ったり、細めたりしている雅紀にどこからか男性の声がした。
若い声だか、どこか落ち着いていて聞きやすい、いわゆるイケボだ。
声からかなりのイケメンだろうと、想像しながら声のした方を振り返るが誰もいない。
雅紀はキョロキョロと辺りを見渡したが、やはり人は見当たらない。
「ちっ!どこを見ている。私は、ここだ。」
いつまでも見つけれない雅紀に、少しイラついたような強めの口調、そして、舌打ちをして改めて声をかけた。
「えっ!」
雅紀は、声がした方をもう一度見てかしかめた。
そこには、隣に寝ていた猫が座って雅紀を見つめている。
「やっと、わかったか。」
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