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フォーレンス学園一年生

ありがとう

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男に服を剥がされそうになったそのとき
「エルサァァァァァァァ!!!!」
いきなり男が火だるまになった
「きゃあ!!」
いきなり出てきた火に驚いて、叫んでしまう
「エルサ!!大丈夫?!」
そう叫んだのは金色の髪が靡く、美しい青年だった
「ラルク様·····??」
「エルサ!エルサ!!」
今にも泣きそうな声で私の名前を叫ぶ
ぎゅっと抱きしめてきた彼の腕の中はとても温かくて、ずっとそこにいたいとさえ思ってしまう
「ぐっぐはぁ·····だ、誰だ·····お前·····」
男が起き上がり私たちを睨んでくる
「ひゃあ·····」
さっきまでの恐怖がよみがえってくる·····
「·····穢れた目で、エルサを見るな!!」
ラルク様が剣をぬき、男に飛びかかろうとする
「ラルク様!ダメ!」
ラルク様の腕を握りしめた
「エルサ·····ダメだよ、こいつは絶対に殺さないと!!」
「ダメよ、ラルク!!私のせいであなたの手を汚すわけにはいかないわ!!」
「エルサ·····」
そう言うとラルク様はしぶしぶといった様子で剣を戻して、男を蹴飛ばした
「··········」
「蹴りだけにしたんだ、エルサに感謝しろよ、ゴミ」
あれでもかなり痛かったと思うんだけど·····
「エルサ·····何もされてない?触られてない?」
「大丈夫·····ラルク様のおかげで助かったわ·····」
「エルサ·····エルサ!!」
私を再度抱きしめるラルク様、正直ちょっと苦しい
「ごめんね、エルサ!君を傷つけてしまって·····君に伝えようと思ったんだけど·····エルサが悲しむ顔を見たくなかったんだ!!エルサにはずっと笑っていてほしいんだ!!でも·····そのせいで君をもっと傷つけてしまった·····俺は·····俺は·····俺のせいで·····エルサを·····」
「ラルク様、落ち着いて、私が悪かったわ·····いきなり学園から飛び出して、ラルク様の言うことを聞かなくて·····これは自業自得なの·····でも·····あなたが助けてくれたわ·····ありがとう、ラルク様·····こんな私を助けてくれて」
「こんななんて言わないで、エルサは凄いんだってみんな知ってるから、君のおかげで何人が救われたと思う?何人が笑顔になってると思う?君の周りにいる人は全員幸せになってるんだよ!」
「そ、そんな褒めないでよ·····恥ずかしいわ!」
「とにかくエルサ·····無事で良かった·····」
「ラルク様·····」
私·····あんなこと言ったのに心配してくれるなんて·····
「·····お前ら·····死ね!!!!」
「えっ·····」
ラルク様の後ろで倒れていた男がどこからか取り出した剣を振り下ろそうとしている
「きゃぁぁ!!」
「·····そろそろいい加減にしろ、散れ!」
そう言ったと思うと真っ赤な炎がボワっと男を包む
「お前·····死にたいのか?なら、殺してやるよ·····エルサに触った罪はそんなんじゃ消えないぞ?」
「ぎゃぁぁぁあぁぁぁぁああああ!!!」
男が床に倒れ、悶え苦しむ
「ラルク!!ダメだってば!」
「·····いいの?本当にいいの?」
「許してあげて、お願い」 
「うぅ·····不本意だけどやめてあげるよ·····」
真っ黒になった男はケホケホと咳をして、苦しんでいた
「エルサ·····今気づいたんだけど·····その格好は·····こいつがやったの·····」
私の服がボロボロになっているのに気づいたのか、ラルク様が顔を真っ赤にして聞いてきた
そしてそう言ったラルク様がまた男を襲おうとしたから必死に止めた
「違うわ、これは転んで破れちゃったの」
「転んだの?!·····ていうことは町のやつらがこの姿の君を見たってこと?」
「そんな私のことなんて見てないと思うわ」
「ちょっと待って、エルサ、町を壊してくる」
「ダメダメ!!」
「だったらこれ着て」
ラルク様は上着を脱いで私に着せてくれた
「ありがとう」
ちょっとブカブカだけど温かい
「くっ·····これが彼シャツの可愛さか!!!」
悶えているラルク様はほっとこう

「「エルサ!!」」
「ルー兄様!カイト様!!」
「エルサ、大丈夫?!」
「うん、ラルク様が助けてくれたわ」
「兄さん、間に合ったんだ」
「今回だけは礼を言わせてもらう!!」
「キール、俺の方が身分上だからな?」
「はぁ·····2人は仲がいいんだから·····エルサは疲れてるんだから静かにしろよ!」
いつもの雰囲気が戻ってきた、さっきのラルク様は少し怖かったけど私のためにしてくれたんだもんね
焼け焦げた男はカイト様とルー兄様に連れていかれ、どこかの騎士たちに渡された
「·····なぁ、キール·····後でこいつを·····」
「そうですね·····こういうところだけは気があいますよね~ラルク様」
「·····二度と表を歩けないようにしてやる」
ラルク様とルー兄様がこそこそ話しているようだけど、どうしたのかしら?
「聞いちゃダメだ、エルサ」
「え?」
なんでだろう?
「ていうかエルサ!その服は?」
「ラルク様が貸してくれたの」
「ねぇ、それ脱いで僕のほう着て·····」
「えっ?なんで?」
「おい、キール!脱がそうとするな!!」
「もっと早く着いていれば·····」
「へっ、お前は鈍いからな!」
「うるさい!!」
2人は本当に仲がいいよね~
やっぱりこんなかんじが一番好きだ
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