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真実の行方 ②

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 心変わりか。あるいは気まぐれか。どちらにしろソーニャは魔王軍の内情を口にする意思を見せた。それまで問答無用の敵対者だった魔族を対話のテーブルにつかせたことは、王国にとって紛れもなく大きな一歩である。

「まず言っとくけど、戦争をおっぱじめたのはそっちだからね。そこんとこ、間違えないでほしいわ」

「魔王からカイン三世に送られた親書は、宣戦の布告でないと?」

「ったりまえでしょ。なんでわざわざ今から攻撃しますー、なんて教えなきゃいけないのよ。もし本当にやる気なら、んなもん書く前にさっさと攻めるでしょフツー」

「たしかに」

 思わず呟いたのはカイトである。元の世界でもそうだったが、なぜ宣戦布告なんて習慣が存在するのか理解できなかった。ソーニャの言うように黙って奇襲を仕掛けた方が勝率は上がるだろう。騎士道精神的な文化なのだろうか。
 そんな困惑を察したか、クディカが呆れたように口を開く。

「戦争は子どもの喧嘩ではないのだぞ。外交の一手段であり、各々に大義があってはじめて成立するものだ。敵国だけではなく、周辺諸国への意思表明でもある」

 そこまで言って、クディカは思いついたように顎を押さえる。

「そうか……国を持たぬ魔族が宣戦布告など妙だとは思っていたが、もとよりしていないとなれば合点がいく」

「では、あの書状にはなんと書いてあったのですか?」

 リーティアの質問。その返答を、誰もが緊張の面持ちで待つ。

「まったくの逆よ、逆。あのお手紙には、魔王様が私達をまとめ上げれらたことと、めざめの騎士を殺したことへの謝罪。それから、乙女を傷つける気はないから巡礼の再開をお願いしますってことが書かれてたの。今まで関わりは薄かったけど、これからはお隣同士仲良くしていきましょう、なんてのも書いてあったはずよ」

 いかにもカイリが書きそうなことだと、カイトはしみじみと実感した。決して他者に害意を持たず、誠実と友好をもって接する。ありし日のカイリを思い出し、戦争が起こってしまった現状を憂う。

「魔王様は一刻も早い乙女の解放を願っていらっしゃった。今だってそうよ。このまま乙女を閉じ込めてたらどうなるか、あなた達だってわかってるはずでしょ」

 無論この場の誰も、乙女を留め置くことが最善であるとは思っていない。灰の巡礼が滞ればマナは淀み、生命に多大な悪影響を及ぼす。その先に待っているのは破滅。無機の世界である。

「それなのに自分の国の利益ばっかり追いかけて。人間ってほんとバカすぎ」

 何一つ反論の余地のない、至極まっとうな苦言だった。
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