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デルニエール攻防戦 魔王軍サイド② 下
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「あはっ。あれにきーめた」
隊列飛行する五人の後方につく。
「お手並み拝見と行きましょうか」
さしあたり、拳大の炎弾をひとつ撃ち込んでみる。一見地味な、見るからに牽制の一射である。
「散開!」
背後を一瞥したメイホーンが一声を飛ばし、直後に五人は別々の方向へ旋回。互いに距離を取る。
その判断は正しかった。飛来した炎弾は突如爆裂し、隊列のあった空間を中心に四方八方へと凶悪な黒炎をまき散らしたのだ。黒い波動は無差別な軌道を描き、上昇によって失速していた二人の術士に食らいついた。一人は両脚を吹き飛ばされ、もう一人は左半身に致命的なダメージを負ってしまう。
「あー当たっちゃった。惜しい!」
ソーニャが唇に嬉しそうに笑う。
牽制射撃に見えた地味な炎弾。実際は広範囲に凄絶な威力を放つ致死の一撃であった。人間達が使っていた対空魔法を即興で模倣してみたのだ。案外使いでのある術式だった。
それを逸早く見抜いたメイホーンの慧眼は流石と言えるが、如何せん相手が悪すぎた。
「くそっ! ジャンとルイがやられた!」
「隊長! どうするんです!」
「怯むな! 隊列を組みなおせ!」
回避に成功したメイホーン含む三人は、落下していく仲間を助けることもできず、ソーニャに応戦するしかない。
「そーそー。もうちょっと楽しませてくれなきゃ」
隊列を組みなおし、正面から突撃してくるメイホーン達に向かって、ソーニャも真っ向から飛び込んでいく。
術士らは腰からショートソードを抜いて接近戦の構えである。なるほど。魔法対決では敵わぬと判断し、武器による攻撃を選んだようだ。
「バッカじゃないの」
強化魔法の施されていない術士風情が笑わせてくれる。たかが金属の棒きれでは、ソーニャのきめ細やかな皮膚一枚斬ることさえ不可能だ。
ソーニャの両手に黒炎が灯る。
メイホーン達は裂帛の気合だ。決死の覚悟が見て取れた。
両者は凄まじい速度で肉薄――する直前。隊列は再び散開し、ソーニャをやり過ごす。
「馬鹿は貴様の方だ」
遥か上空に舞い上がったメイホーンが口角を吊り上げた。
ソーニャは急制動をかけて彼を見上げ、次に周囲を見渡した。
「ふぅん?」
上にも下にも右にも左にも、術士の隊列が飛び交っている。メイホーンに気を取られ、他の隊列にまで気を配れていなかったのだ。味方が何人かやられてしまったのだろう。その分、こちらに集まってきたというわけだ。
敵に囲まれた状況を、ソーニャは素直に喜んだ。
「ありがたいわねぇ」
わざわざ追いかける手間が省いてくれるなんて。
隊列飛行する五人の後方につく。
「お手並み拝見と行きましょうか」
さしあたり、拳大の炎弾をひとつ撃ち込んでみる。一見地味な、見るからに牽制の一射である。
「散開!」
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その判断は正しかった。飛来した炎弾は突如爆裂し、隊列のあった空間を中心に四方八方へと凶悪な黒炎をまき散らしたのだ。黒い波動は無差別な軌道を描き、上昇によって失速していた二人の術士に食らいついた。一人は両脚を吹き飛ばされ、もう一人は左半身に致命的なダメージを負ってしまう。
「あー当たっちゃった。惜しい!」
ソーニャが唇に嬉しそうに笑う。
牽制射撃に見えた地味な炎弾。実際は広範囲に凄絶な威力を放つ致死の一撃であった。人間達が使っていた対空魔法を即興で模倣してみたのだ。案外使いでのある術式だった。
それを逸早く見抜いたメイホーンの慧眼は流石と言えるが、如何せん相手が悪すぎた。
「くそっ! ジャンとルイがやられた!」
「隊長! どうするんです!」
「怯むな! 隊列を組みなおせ!」
回避に成功したメイホーン含む三人は、落下していく仲間を助けることもできず、ソーニャに応戦するしかない。
「そーそー。もうちょっと楽しませてくれなきゃ」
隊列を組みなおし、正面から突撃してくるメイホーン達に向かって、ソーニャも真っ向から飛び込んでいく。
術士らは腰からショートソードを抜いて接近戦の構えである。なるほど。魔法対決では敵わぬと判断し、武器による攻撃を選んだようだ。
「バッカじゃないの」
強化魔法の施されていない術士風情が笑わせてくれる。たかが金属の棒きれでは、ソーニャのきめ細やかな皮膚一枚斬ることさえ不可能だ。
ソーニャの両手に黒炎が灯る。
メイホーン達は裂帛の気合だ。決死の覚悟が見て取れた。
両者は凄まじい速度で肉薄――する直前。隊列は再び散開し、ソーニャをやり過ごす。
「馬鹿は貴様の方だ」
遥か上空に舞い上がったメイホーンが口角を吊り上げた。
ソーニャは急制動をかけて彼を見上げ、次に周囲を見渡した。
「ふぅん?」
上にも下にも右にも左にも、術士の隊列が飛び交っている。メイホーンに気を取られ、他の隊列にまで気を配れていなかったのだ。味方が何人かやられてしまったのだろう。その分、こちらに集まってきたというわけだ。
敵に囲まれた状況を、ソーニャは素直に喜んだ。
「ありがたいわねぇ」
わざわざ追いかける手間が省いてくれるなんて。
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