7 / 152
異世界の美女あらわる! ②
しおりを挟む
「少なくとも、彼には害意を感じません」
高圧的なクディカとは対照的に、リーティアは極めて物柔らかな印象だった。優しげなたれ目と、整った鼻筋に乗った眼鏡が、特にそう感じさせるのかもしれない。
「カイトさん。あなたは、どこからいらっしゃったのですか?」
安心させるような声色で語りかけるリーティア。それだけでこの場の緊張が少し和らいだ気がした。
「俺は」
言いかけて、言葉に詰まる。異世界から来たと言って、はたして信じてもらえるか。異世界からの訪問者が認知される世界なのか。
目の前の女性達が信用に値する人物なのかも定かではない。まずはこの世界の情報を集める方が先ではなかろうか。
「……わかりません」
「またそれか」
クディカが苛立ちの吐息を漏らす。
「いいかイセ・カイトとやら。我々はマナ中毒で死にかけていたお前を助けたのだ。にも拘らず素性すら明かさぬとは、実に誠意に欠ける振る舞いだとは思わないか」
カイトは何も反論できなかった。彼女の言う通りだ。
代わりに口を開いたのはリーティアである。
「中毒の影響で記憶が混濁しているのかもしれません」
「そんな都合のいい症状があるか。この男が意図的に隠していることは明らかだろう」
「クディカ、あなたは取り乱しています。少し落ち着いてください」
「なんだと? 私はこれ以上ないほど冷静だ」
「いいえ。あなたについて私が間違えたことがありますか」
眼鏡の弦をくいと上げて、リーティアははっきりと言い切った。
クディカは不服そうに腕を組む。
「ともかく! こいつの身柄は捕虜として扱うぞ。得体の知れない男だ。戦況が落ち着くまでは牢にぶち込んでおく」
「そこまでする必要はありませんわ。言ったでしょう。害意は感じられないと」
リーティアの言葉に、クディカが呆れたように息を吐いた。
「害意のあるなしは関係ない。身の潔白を証明できないことが問題なのだ」
クディカの声には芯があり、佇まいには圧力さえ感じる。とんでもない美人であるということが、余計に威容を際立たせていた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
カイトはやっと正座を崩した。なんとかベッドを下りるも、長時間の正座で脚が痺れてしまい、勢い余ってたたらを踏んでしまう。
その行動がいけなかった。
目にも留まらぬ速度で抜かれたクディカの剣が、カイトの首筋にぴたりと触れていた。
「な……あ……っ!」
「妙な真似をすれば殺す」
その声は真実の響きをもってカイトの背筋を凍らせた。鋭利な眼光も、ひんやりとした刃の感触も。決してこけおどしではない。
高圧的なクディカとは対照的に、リーティアは極めて物柔らかな印象だった。優しげなたれ目と、整った鼻筋に乗った眼鏡が、特にそう感じさせるのかもしれない。
「カイトさん。あなたは、どこからいらっしゃったのですか?」
安心させるような声色で語りかけるリーティア。それだけでこの場の緊張が少し和らいだ気がした。
「俺は」
言いかけて、言葉に詰まる。異世界から来たと言って、はたして信じてもらえるか。異世界からの訪問者が認知される世界なのか。
目の前の女性達が信用に値する人物なのかも定かではない。まずはこの世界の情報を集める方が先ではなかろうか。
「……わかりません」
「またそれか」
クディカが苛立ちの吐息を漏らす。
「いいかイセ・カイトとやら。我々はマナ中毒で死にかけていたお前を助けたのだ。にも拘らず素性すら明かさぬとは、実に誠意に欠ける振る舞いだとは思わないか」
カイトは何も反論できなかった。彼女の言う通りだ。
代わりに口を開いたのはリーティアである。
「中毒の影響で記憶が混濁しているのかもしれません」
「そんな都合のいい症状があるか。この男が意図的に隠していることは明らかだろう」
「クディカ、あなたは取り乱しています。少し落ち着いてください」
「なんだと? 私はこれ以上ないほど冷静だ」
「いいえ。あなたについて私が間違えたことがありますか」
眼鏡の弦をくいと上げて、リーティアははっきりと言い切った。
クディカは不服そうに腕を組む。
「ともかく! こいつの身柄は捕虜として扱うぞ。得体の知れない男だ。戦況が落ち着くまでは牢にぶち込んでおく」
「そこまでする必要はありませんわ。言ったでしょう。害意は感じられないと」
リーティアの言葉に、クディカが呆れたように息を吐いた。
「害意のあるなしは関係ない。身の潔白を証明できないことが問題なのだ」
クディカの声には芯があり、佇まいには圧力さえ感じる。とんでもない美人であるということが、余計に威容を際立たせていた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
カイトはやっと正座を崩した。なんとかベッドを下りるも、長時間の正座で脚が痺れてしまい、勢い余ってたたらを踏んでしまう。
その行動がいけなかった。
目にも留まらぬ速度で抜かれたクディカの剣が、カイトの首筋にぴたりと触れていた。
「な……あ……っ!」
「妙な真似をすれば殺す」
その声は真実の響きをもってカイトの背筋を凍らせた。鋭利な眼光も、ひんやりとした刃の感触も。決してこけおどしではない。
20
お気に入りに追加
91
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる
シンギョウ ガク
ファンタジー
※2019年7月下旬に第二巻発売しました。
※12/11書籍化のため『Sランクパーティーから追放されたおっさん商人、真の仲間を気ままに最強SSランクハーレムパーティーへ育てる。』から『おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる』に改題を実施しました。
※第十一回アルファポリスファンタジー大賞において優秀賞を頂きました。
俺の名はグレイズ。
鳶色の眼と茶色い髪、ちょっとした無精ひげがワイルドさを醸し出す、四十路の(自称ワイルド系イケオジ)おっさん。
ジョブは商人だ。
そう、戦闘スキルを全く習得しない商人なんだ。おかげで戦えない俺はパーティーの雑用係。
だが、ステータスはMAX。これは呪いのせいだが、仲間には黙っていた。
そんな俺がメンバーと探索から戻ると、リーダーのムエルから『パーティー追放』を言い渡された。
理由は『巷で流行している』かららしい。
そんなこと言いつつ、次のメンバー候補が可愛い魔術士の子だって知ってるんだぜ。
まぁ、言い争っても仕方ないので、装備品全部返して、パーティーを脱退し、次の仲間を探して暇していた。
まぁ、ステータスMAXの力を以ってすれば、Sランク冒険者は余裕だが、あくまで俺は『商人』なんだ。前衛に立って戦うなんて野蛮なことはしたくない。
表向き戦力にならない『商人』の俺を受け入れてくれるメンバーを探していたが、火力重視の冒険者たちからは相手にされない。
そんな、ある日、冒険者ギルドでは流行している、『パーティー追放』の餌食になった問題児二人とひょんなことからパーティーを組むことになった。
一人は『武闘家』ファーマ。もう一人は『精霊術士』カーラ。ともになぜか上級職から始まっていて、成長できず仲間から追放された女冒険者だ。
俺はそんな追放された二人とともに冒険者パーティー『追放者《アウトキャスト》』を結成する。
その後、前のパーティーとのひと悶着があって、『魔術師』アウリースも参加することとなった。
本当は彼女らが成長し、他のパーティーに入れるまでの暫定パーティーのつもりだったが、俺の指導でメキメキと実力を伸ばしていき、いつの間にか『追放者《アウトキャスト》』が最強のハーレムパーティーと言われるSSランクを得るまでの話。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~
飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。
彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。
独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。
この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。
※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。

~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。
破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。
小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。
本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。
お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。
その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。
次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。
本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる