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異世界の美女あらわる! ②
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「少なくとも、彼には害意を感じません」
高圧的なクディカとは対照的に、リーティアは極めて物柔らかな印象だった。優しげなたれ目と、整った鼻筋に乗った眼鏡が、特にそう感じさせるのかもしれない。
「カイトさん。あなたは、どこからいらっしゃったのですか?」
安心させるような声色で語りかけるリーティア。それだけでこの場の緊張が少し和らいだ気がした。
「俺は」
言いかけて、言葉に詰まる。異世界から来たと言って、はたして信じてもらえるか。異世界からの訪問者が認知される世界なのか。
目の前の女性達が信用に値する人物なのかも定かではない。まずはこの世界の情報を集める方が先ではなかろうか。
「……わかりません」
「またそれか」
クディカが苛立ちの吐息を漏らす。
「いいかイセ・カイトとやら。我々はマナ中毒で死にかけていたお前を助けたのだ。にも拘らず素性すら明かさぬとは、実に誠意に欠ける振る舞いだとは思わないか」
カイトは何も反論できなかった。彼女の言う通りだ。
代わりに口を開いたのはリーティアである。
「中毒の影響で記憶が混濁しているのかもしれません」
「そんな都合のいい症状があるか。この男が意図的に隠していることは明らかだろう」
「クディカ、あなたは取り乱しています。少し落ち着いてください」
「なんだと? 私はこれ以上ないほど冷静だ」
「いいえ。あなたについて私が間違えたことがありますか」
眼鏡の弦をくいと上げて、リーティアははっきりと言い切った。
クディカは不服そうに腕を組む。
「ともかく! こいつの身柄は捕虜として扱うぞ。得体の知れない男だ。戦況が落ち着くまでは牢にぶち込んでおく」
「そこまでする必要はありませんわ。言ったでしょう。害意は感じられないと」
リーティアの言葉に、クディカが呆れたように息を吐いた。
「害意のあるなしは関係ない。身の潔白を証明できないことが問題なのだ」
クディカの声には芯があり、佇まいには圧力さえ感じる。とんでもない美人であるということが、余計に威容を際立たせていた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
カイトはやっと正座を崩した。なんとかベッドを下りるも、長時間の正座で脚が痺れてしまい、勢い余ってたたらを踏んでしまう。
その行動がいけなかった。
目にも留まらぬ速度で抜かれたクディカの剣が、カイトの首筋にぴたりと触れていた。
「な……あ……っ!」
「妙な真似をすれば殺す」
その声は真実の響きをもってカイトの背筋を凍らせた。鋭利な眼光も、ひんやりとした刃の感触も。決してこけおどしではない。
高圧的なクディカとは対照的に、リーティアは極めて物柔らかな印象だった。優しげなたれ目と、整った鼻筋に乗った眼鏡が、特にそう感じさせるのかもしれない。
「カイトさん。あなたは、どこからいらっしゃったのですか?」
安心させるような声色で語りかけるリーティア。それだけでこの場の緊張が少し和らいだ気がした。
「俺は」
言いかけて、言葉に詰まる。異世界から来たと言って、はたして信じてもらえるか。異世界からの訪問者が認知される世界なのか。
目の前の女性達が信用に値する人物なのかも定かではない。まずはこの世界の情報を集める方が先ではなかろうか。
「……わかりません」
「またそれか」
クディカが苛立ちの吐息を漏らす。
「いいかイセ・カイトとやら。我々はマナ中毒で死にかけていたお前を助けたのだ。にも拘らず素性すら明かさぬとは、実に誠意に欠ける振る舞いだとは思わないか」
カイトは何も反論できなかった。彼女の言う通りだ。
代わりに口を開いたのはリーティアである。
「中毒の影響で記憶が混濁しているのかもしれません」
「そんな都合のいい症状があるか。この男が意図的に隠していることは明らかだろう」
「クディカ、あなたは取り乱しています。少し落ち着いてください」
「なんだと? 私はこれ以上ないほど冷静だ」
「いいえ。あなたについて私が間違えたことがありますか」
眼鏡の弦をくいと上げて、リーティアははっきりと言い切った。
クディカは不服そうに腕を組む。
「ともかく! こいつの身柄は捕虜として扱うぞ。得体の知れない男だ。戦況が落ち着くまでは牢にぶち込んでおく」
「そこまでする必要はありませんわ。言ったでしょう。害意は感じられないと」
リーティアの言葉に、クディカが呆れたように息を吐いた。
「害意のあるなしは関係ない。身の潔白を証明できないことが問題なのだ」
クディカの声には芯があり、佇まいには圧力さえ感じる。とんでもない美人であるということが、余計に威容を際立たせていた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
カイトはやっと正座を崩した。なんとかベッドを下りるも、長時間の正座で脚が痺れてしまい、勢い余ってたたらを踏んでしまう。
その行動がいけなかった。
目にも留まらぬ速度で抜かれたクディカの剣が、カイトの首筋にぴたりと触れていた。
「な……あ……っ!」
「妙な真似をすれば殺す」
その声は真実の響きをもってカイトの背筋を凍らせた。鋭利な眼光も、ひんやりとした刃の感触も。決してこけおどしではない。
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