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戦いの始まりだ! ①
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目を開くと、そこは戦場だった。
剣を握る兵士の怒号。
駆け回る獣の咆哮。
爆風が大地を抉り、砂塵が宙を舞う。
飛び交う矢と、炎と、閃光が、曇天を覆いつくさんばかり。
死闘ひしめく戦場には、苦い土煙の匂いが立ち込めていた。それに混ざるのは、錆びた鉄のような血の臭気だ。
「いきなりかよ……!」
意気揚々と乗り込んだ異世界。そこは慈悲の介在しない絶望の地。
緩やかな稜線を描く荒野では、四方が激しい殺し合いで敷き詰められていた。
戦場の喊声がカイトの身を震わせる。空気はまるで異質だった。全身を鋭い針で突き刺されている気分だ。
「これ、どうすりゃ……」
ようやく我を取り戻した時、カイトの中に遅すぎる危機感が訪れた。
何度もシミュレーションを重ねたはずだ。この状況ならこうする。あの状況だったらああする。どんなシチュエーションに放り込まれようと、冷静に対処できると自負していた。
剣と魔法の世界だ。いきなり戦いに放り込まれることだって覚悟していた。
「なにか、チートは」
実際はどうだ。その手に力はなく。着のみ着ままの学生服。
猛烈な感情と脅威が満ちるこの場で、カイトはただただ呆然と立ち尽くすしかない。知らず、呼吸は荒くなっていた。
肌が焼けるように熱いのは、戦場の殺気にあてられているせいか。
病的なまでに息苦しいのは、張り詰めた空気が肺を引き裂こうとしているからかもしれない。
風切り音を引いて飛来した一閃の輝きが、カイトの頬を掠めていった。一瞬走った熱さは、すぐにひりつくような痛みに変わる。無様に腰を抜かしてしまったのも仕方のないことだ。平和な日本で生まれ育った男子高校生が、容赦ない殺し合いの中で平静でいられるはずがない。
尻もちをついて目線が下がると、息絶えた兵士の死骸が目に入る。
「ひっ!」
思わず喉が引き攣った。
目の前の戦場に、想像していた華やかさは欠片もない。人間と闇色の獣とが、狂ったように叫び、殺し合うだけ。
人間の兵士達は剣や槍といった武器を用いて、獰猛な獣の爪牙に対抗している。
その上空では真っ黒な飛竜や怪鳥が飛び交い、制空権を支配していた。
最前線の真っ只中。
息を吸おうとして、カイトは激しく咳込んだ。口内と喉の奥がヤスリでもかけられたみたいにざらついて、満足に呼吸もできない。
苦しみに追い打ちをかけるがごとく、すぐ隣を巨獣が駆け抜けていった。軽石のように弾き飛ばされたカイトは、強かに地に叩きつけられて鈍い衝撃に喘ぐ。
剣を握る兵士の怒号。
駆け回る獣の咆哮。
爆風が大地を抉り、砂塵が宙を舞う。
飛び交う矢と、炎と、閃光が、曇天を覆いつくさんばかり。
死闘ひしめく戦場には、苦い土煙の匂いが立ち込めていた。それに混ざるのは、錆びた鉄のような血の臭気だ。
「いきなりかよ……!」
意気揚々と乗り込んだ異世界。そこは慈悲の介在しない絶望の地。
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戦場の喊声がカイトの身を震わせる。空気はまるで異質だった。全身を鋭い針で突き刺されている気分だ。
「これ、どうすりゃ……」
ようやく我を取り戻した時、カイトの中に遅すぎる危機感が訪れた。
何度もシミュレーションを重ねたはずだ。この状況ならこうする。あの状況だったらああする。どんなシチュエーションに放り込まれようと、冷静に対処できると自負していた。
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「なにか、チートは」
実際はどうだ。その手に力はなく。着のみ着ままの学生服。
猛烈な感情と脅威が満ちるこの場で、カイトはただただ呆然と立ち尽くすしかない。知らず、呼吸は荒くなっていた。
肌が焼けるように熱いのは、戦場の殺気にあてられているせいか。
病的なまでに息苦しいのは、張り詰めた空気が肺を引き裂こうとしているからかもしれない。
風切り音を引いて飛来した一閃の輝きが、カイトの頬を掠めていった。一瞬走った熱さは、すぐにひりつくような痛みに変わる。無様に腰を抜かしてしまったのも仕方のないことだ。平和な日本で生まれ育った男子高校生が、容赦ない殺し合いの中で平静でいられるはずがない。
尻もちをついて目線が下がると、息絶えた兵士の死骸が目に入る。
「ひっ!」
思わず喉が引き攣った。
目の前の戦場に、想像していた華やかさは欠片もない。人間と闇色の獣とが、狂ったように叫び、殺し合うだけ。
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最前線の真っ只中。
息を吸おうとして、カイトは激しく咳込んだ。口内と喉の奥がヤスリでもかけられたみたいにざらついて、満足に呼吸もできない。
苦しみに追い打ちをかけるがごとく、すぐ隣を巨獣が駆け抜けていった。軽石のように弾き飛ばされたカイトは、強かに地に叩きつけられて鈍い衝撃に喘ぐ。
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