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いざ異世界へ!
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「好きにって……異世界に行くにあたって、何か目的とか、ないのか?」
「ない」
「言い切るなぁ」
なにかしら行動の指針があってもいいだろうに。自由度が高すぎるのも考え物だ。
「じゃあえっと……俺が向かう世界ってどんなところ?」
「あなたが望む世界を、思い描いて」
「おお? 望んだ世界に行けるのか?」
思わず拍手をしてしまうほどに、カイトは舞い上がった。
脳裏をよぎったのは今まで何度となく見たアニメやマンガの世界である。
「やっぱり異世界と言えばファンタジーだよな。剣と魔法の、ザ・王道ってやつ」
少女に冷たい瞳を向けられても、カイトはまるで気付かない。
剣を握り、派手な魔法を操って、自由自在に怒涛の戦いを駆け抜ける。
痛快な勝利。浴びるほどの称賛と、向けられる羨望。
その全てが、人生を彩る花となるはずだ。
眩い光に包まれて、カイトは拳を掲げた。
「よっしゃあ! 異世界ライフを思う存分満喫するぜ!」
何の変哲もない人生はもう終わった。
さぁ、いざ行かん憧れの異世界へ。本当の人生が、今ここから始まるのだ。
「あ、そうそう」
希望に満ちた心境のまま、カイトは掲げていた拳をぽんと叩く。
「ちなみに、俺に与えられる能力って、どういうものになるんだ?」
「能力?」
少女の声にようやく色が表れた。それは訝しむような、あるいは蔑むようなネガティブな感情である。
「ほら、異世界に行くなら、普通あるだろ? 神様から貰える……その、いわゆるチートってやつが!」
手に入れる力の如何で、どのように生きるかが決まるといっても過言ではない。カイトにとっては、最大の懸念事項である。
純粋な戦闘力か。あるいは莫大な魔力か。はたまた稀有な特殊体質か。
少女はじっとカイトを見つめる。吸い込まれてしまいそうな闇色の瞳。彼女の美貌がカイトの鼓動を高鳴らせた。
そして少女は口を開く。
「そんなものはない」
後頭部を殴られたような鈍い衝撃と共に、カイトの視界は黒に染まった。
「ない」
「言い切るなぁ」
なにかしら行動の指針があってもいいだろうに。自由度が高すぎるのも考え物だ。
「じゃあえっと……俺が向かう世界ってどんなところ?」
「あなたが望む世界を、思い描いて」
「おお? 望んだ世界に行けるのか?」
思わず拍手をしてしまうほどに、カイトは舞い上がった。
脳裏をよぎったのは今まで何度となく見たアニメやマンガの世界である。
「やっぱり異世界と言えばファンタジーだよな。剣と魔法の、ザ・王道ってやつ」
少女に冷たい瞳を向けられても、カイトはまるで気付かない。
剣を握り、派手な魔法を操って、自由自在に怒涛の戦いを駆け抜ける。
痛快な勝利。浴びるほどの称賛と、向けられる羨望。
その全てが、人生を彩る花となるはずだ。
眩い光に包まれて、カイトは拳を掲げた。
「よっしゃあ! 異世界ライフを思う存分満喫するぜ!」
何の変哲もない人生はもう終わった。
さぁ、いざ行かん憧れの異世界へ。本当の人生が、今ここから始まるのだ。
「あ、そうそう」
希望に満ちた心境のまま、カイトは掲げていた拳をぽんと叩く。
「ちなみに、俺に与えられる能力って、どういうものになるんだ?」
「能力?」
少女の声にようやく色が表れた。それは訝しむような、あるいは蔑むようなネガティブな感情である。
「ほら、異世界に行くなら、普通あるだろ? 神様から貰える……その、いわゆるチートってやつが!」
手に入れる力の如何で、どのように生きるかが決まるといっても過言ではない。カイトにとっては、最大の懸念事項である。
純粋な戦闘力か。あるいは莫大な魔力か。はたまた稀有な特殊体質か。
少女はじっとカイトを見つめる。吸い込まれてしまいそうな闇色の瞳。彼女の美貌がカイトの鼓動を高鳴らせた。
そして少女は口を開く。
「そんなものはない」
後頭部を殴られたような鈍い衝撃と共に、カイトの視界は黒に染まった。
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