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無敵系

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「ご主人様!」

 サラの叫び。
 シーラは俺の胸に剣を残したまま飛び退く。

 四半秒後、レオンティーナは俺に向かって容赦なく大槌を振り下ろした。
 大地が轟く。
 グランオーリス王城の庭園がひっくり返る。石畳や城壁、樹木などが宙を舞い、衝撃で散り散りになっていく。
 強烈な神性による攻撃は、その余波だけで空間そのものを破壊するほどの威力だった。

 これは流石に、まずいだろ。
 危機感を抱いた俺は即座に指を鳴らす。
 同時に城の崩壊が止まった。時間が停止したかのように、破壊の瞬間のまますべてが停滞した。

「この世界は、エレノアの記憶から創られてる。いくらあいつ自身の意思だとしても、壊されちゃ困るな」

 レオンティーナの大槌は俺の頭部に直撃していた。
 破壊のエネルギーのほとんどは俺に与えられたものだったが、俺にはかすり傷一つついていない。それどころか、俺の頭との衝突に耐えられなかった大槌は、見るも無残に砕け散っていた。

「もういい。わかった」

 守護隊の皆は本気だ。
 真剣にエレノアの味方をし、本気で俺を殺そうとしている。

「お前達の心は、十分に伝わった」

 胸に突き刺されたシーラの剣を無造作に抜き、地面に突き立てる。
 出血はなく、傷は瞬く間に治っていく。俺の心臓は剣で貫かれたくらいじゃビクともしないんだよなぁ。
 我ながら、すごい。

「見せてやる。お前達の主が、どれほどなのか」

 俺が剣を掲げると、今まさに崩壊しつつある城が急速に修復され始めた。まるで巻き戻しでもしているかのように、大槌による破壊がなかったものになっていく。

「これは……世界を再生している……?」

「うそ……? 神性による不可逆の破壊をもたらしたのに」

 シーラとレオンティーナが瞠目していた。

「神性。世界の管理権か。そんなもんは俺にとっちゃなんでもねぇ。より強い権限をもって書き換えちまえばいいだけのことだ」

 そう。できるのだ。
 〈妙なる祈り〉ならね。
 あっという間に元通りになった城。完全に崩壊する前なら、完全に修復することなんてわけないのさ。

「さて」

 俺は剣を虚空に収納し、戦闘態勢を解いた。
 もう戦いは終わり。いや、最初から戦いにすらなっていなかったか。

「今回は退いたらどうだ? このまま俺とやり合うのは、お前達にとってもいい選択じゃないだろう」

 シーラとレオンティーナはアイコンタクトを交わし、頷き合う。

「撤退」

 決断してからは速かった。
 守護隊の二人は一瞬にして姿を消し、その場から離れていった。
 後には、戦いの残り香だけがあった。

「ご主人様……」

 サラが乾いた声を漏らす。

「まさか、シーラさんが……アルバレスの守護隊が裏切るなんて」

 信じられないといったところか。
 そりゃそうだろう。俺もそうだった。

 だが、あれこそが守護隊の使命。
 今はまだ口にできない、必要な役割なんだ。

「ロートス!」

 城門を跳び越えて、サニーと原初の女神が追い付いてきた。

「二人とも無事か? いや、聞くまでもないか」

「ああ……だが妙だな。奴ら、急に退いていったぞ。お前が何かしたのか? ロートス」

「まぁ、そんなとこだ」

 守護隊の襲撃をとりあえず撃退したのはいい。

「外の様子はどうだ?」

 俺の問いに、原初の女神が首を横に振った。

「ダメです。アヴェントゥラは崩壊しました。残っているのはこの城だけです」

「……まじかよ」

 どうして急に街が壊れたのか。
 その原因も、この城に入れば分かるかもしれない。

「行くっきゃないな」

 そういうわけで、俺達は城に足を踏み入れた。
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