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影の使命
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ただならぬ雰囲気だ。
コッホ城塞でもそうだったが、俺達に対する明確な敵意を持っている。
「私はサニーの方に参ります」
原初の女神が短く呟く。
「ああ。頼む」
あちらの方が深刻な状況だろう。
ここは俺とサラでなんとかするさ。
原初の女神は頷き、その場から姿を消した。
「シーラさん」
俺の腕から離れたサラが、意外にも強い声を発した。
「どうして……どうして、ご主人様の邪魔をするんですか」
切実な響きだった。
「あなた達はアルバレスの守護隊。ご主人様の影となり、すべてを捧げるのが使命だと、そう言っていたじゃないですか。何の憂いもなくそう誓った守護隊の皆さんを、尊敬していたのにっ」
シーラは答えない。
返事の代わりに、彼女は腰の剣を抜く。
「それが、答えですか」
サラの小さな拳がぎゅっと締まった。その小さな体に透徹した魔力がみなぎっていく。
正直、俺はその魔力の強大さに驚いた。以前のサラも人並外れた魔力を有していたが、今は両も質も桁違いだ。ファルトゥールの神性を帯びた魔力を完全に自分の物にしている。
すごい。
今のサラならば、シーラを相手にしても十分に勝算はあるだろう。
「サラ。ちょっと待て」
だが、俺はサラを制止しなければならない。
「ご主人様。ボクのことなら心配ご無用です。誰が相手だろうと、ご主人様のために命をかけて戦う覚悟はできています」
「その意気を疑うわけじゃない。でも、そういうことじゃないんだ」
サラとシーラは旧知の仲だ。
サラがヘッケラー機関の実験体だった際に、シーラがよくしてくれたと言っていた。
それは事実だろう。そしてこの二人が戦うということは、俺のせいで友情をないがしろにするという意味でもある。
それは看過できないし、そもそも俺はこの状況に疑問を抱いている。
「俺も聞きたい」
一歩前に出る。
「俺はなシーラ。お前達守護隊が操られていると思ってた。エレノアの力によって自我を奪われ、強制的に従わされているんだと」
シーラの瞳。その燃えるような紅が、俺をじっと見据えている。
「けど、違うんだな。お前は……お前達守護隊は操られてなんかいない。最初から自分の意思でエレノアについていた」
シーラの瞳に、わずかばかり揺らぎが表れた。
「知っておられたのですか」
久しぶりに、シーラの声を聞いた。
「今の今まで気付かなかったが……お前の目を見てすべて理解したさ」
「……では、この後なにが起こるかも、お分かりのはずです」
剣の切っ先を俺に向け、臨戦態勢を取るシーラ。
「シーラさんっ! やめてください!」
サラが迷わず俺の前に出た。
「守護隊の皆さんに何があったかのは知らないのです。でも、ご主人様に剣を向けるなんて愚かにもほどがある。それでも守護隊の隊長ですか!」
「サラよせ」
「でもっ」
「いいんだよ。世界がこんなことになっちまった以上、シーラのあの振る舞いこそ俺の影である守護隊のあるべき姿だ」
困惑するサラを後ろに下がらせ、俺は虚空から剣を抜いた。
かつて〈妙なる祈り〉によって創造した長剣。懐かしみのある、すべてを切り裂く剣である。
「さぁシーラ。使命を果たせ」
「感謝します。主様」
それ以上の言葉は不要だった。
次の瞬間、俺とシーラの剣が閃光を放って激突した。
コッホ城塞でもそうだったが、俺達に対する明確な敵意を持っている。
「私はサニーの方に参ります」
原初の女神が短く呟く。
「ああ。頼む」
あちらの方が深刻な状況だろう。
ここは俺とサラでなんとかするさ。
原初の女神は頷き、その場から姿を消した。
「シーラさん」
俺の腕から離れたサラが、意外にも強い声を発した。
「どうして……どうして、ご主人様の邪魔をするんですか」
切実な響きだった。
「あなた達はアルバレスの守護隊。ご主人様の影となり、すべてを捧げるのが使命だと、そう言っていたじゃないですか。何の憂いもなくそう誓った守護隊の皆さんを、尊敬していたのにっ」
シーラは答えない。
返事の代わりに、彼女は腰の剣を抜く。
「それが、答えですか」
サラの小さな拳がぎゅっと締まった。その小さな体に透徹した魔力がみなぎっていく。
正直、俺はその魔力の強大さに驚いた。以前のサラも人並外れた魔力を有していたが、今は両も質も桁違いだ。ファルトゥールの神性を帯びた魔力を完全に自分の物にしている。
すごい。
今のサラならば、シーラを相手にしても十分に勝算はあるだろう。
「サラ。ちょっと待て」
だが、俺はサラを制止しなければならない。
「ご主人様。ボクのことなら心配ご無用です。誰が相手だろうと、ご主人様のために命をかけて戦う覚悟はできています」
「その意気を疑うわけじゃない。でも、そういうことじゃないんだ」
サラとシーラは旧知の仲だ。
サラがヘッケラー機関の実験体だった際に、シーラがよくしてくれたと言っていた。
それは事実だろう。そしてこの二人が戦うということは、俺のせいで友情をないがしろにするという意味でもある。
それは看過できないし、そもそも俺はこの状況に疑問を抱いている。
「俺も聞きたい」
一歩前に出る。
「俺はなシーラ。お前達守護隊が操られていると思ってた。エレノアの力によって自我を奪われ、強制的に従わされているんだと」
シーラの瞳。その燃えるような紅が、俺をじっと見据えている。
「けど、違うんだな。お前は……お前達守護隊は操られてなんかいない。最初から自分の意思でエレノアについていた」
シーラの瞳に、わずかばかり揺らぎが表れた。
「知っておられたのですか」
久しぶりに、シーラの声を聞いた。
「今の今まで気付かなかったが……お前の目を見てすべて理解したさ」
「……では、この後なにが起こるかも、お分かりのはずです」
剣の切っ先を俺に向け、臨戦態勢を取るシーラ。
「シーラさんっ! やめてください!」
サラが迷わず俺の前に出た。
「守護隊の皆さんに何があったかのは知らないのです。でも、ご主人様に剣を向けるなんて愚かにもほどがある。それでも守護隊の隊長ですか!」
「サラよせ」
「でもっ」
「いいんだよ。世界がこんなことになっちまった以上、シーラのあの振る舞いこそ俺の影である守護隊のあるべき姿だ」
困惑するサラを後ろに下がらせ、俺は虚空から剣を抜いた。
かつて〈妙なる祈り〉によって創造した長剣。懐かしみのある、すべてを切り裂く剣である。
「さぁシーラ。使命を果たせ」
「感謝します。主様」
それ以上の言葉は不要だった。
次の瞬間、俺とシーラの剣が閃光を放って激突した。
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