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ビッグフェイス

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 俺達がまず辿り着いたのは、リッバンループだった。
 俺が旅立って、最初に立ち寄った街。
 サラと出会った場所だ。

「えらくあっさり着いたな」

 サニーがクールに呟く。

「空間が収縮していますね。精神世界ではよくあることです」

 原初の女神は、街の大通りを進んでいく。
 俺とサニーはその後に続いた。

 大通りはたくさんの人で賑わっており、喧騒と活気が満ちている。
 だが、それが虚像であることは感覚として明らかだった。

「落ち着かないな。この景色」

「彼女の記憶がそのまま投影されているのでしょう」

「ああ。確かに俺がこの街に来た時もこんな感じだった。エレノアの奴は一体何のためにこんなものを……」

 その瞬間だった。
 リッバンループに満ちていた喧騒が、はたと消えた。
 行き交う人々はみな足を止め、ぴたりと直立している。

「なんだ……?」

 サニーが戸惑うのも束の間。
 大通りにいるすべての人間が、俺達を視た。
 表情に感情は乗らず、生気のない瞳が俺達を映している。
 誰もが口を閉じ、視線の槍衾を作り出していた。

「穏やかな雰囲気じゃないな」

 サニーが背中の剣に手をかける。

「待てサニー。そういう感じじゃない」

「バカ言え。すぐにでも襲いかかってきそうだぞ」

「いや……これはたぶん……」

 俺の考えが正しければ、この現象は敵意からのものじゃない。
 むしろ――。

「っ! 上ですっ!」

 原初の女神が叫んだ。
 揃って天を仰いだ俺達は、上空から飛来する巨大な物体を目にした。

「おい。なんだあれは」

 さしものサニーも、マジで驚いているようだった。
 俺だってそうだ。
 なぜなら、空から降ってきたのは、巨大な白い顔だったからだ。

 ただ巨大な真っ白い顔。
 そしてそれは、完全にエレノアの顔だった。

「こっちに落ちてきているぞ!」

 エレノアの顔が、落ちてきているだと。
 どういうことだ。

「周りを見てください!」

 原初の女神に言われて周囲を見渡してみると、こちらを見ていた住民達が全身から光を放っていた。
 そして、すべての住民達が一斉に空に飛び立ち、エレノアの顔へと向かっていった。
 白い残光を引いて空へ飛翔した無数の住民達は、高性能ミサイルのごとくエレノアの顔に次々と着弾していく。
 連続する爆発。
 無数に生じた爆発が、エレノアの顔を爆炎と黒煙で包み込んだ。

「撃ち落とすつもりなのか……? おいロートス!」

「俺にも何が何だかわかんねー! あんたはどうだ!」

「私にはなんとなくわかります」

 原初の女神は神妙な面持ちだ。

「なにが……わかるんだ?」

「空から降ってきた顔は、彼女の意思が具現化したものでしょう。異物である私達を排除しようとしているのです」

「異物、か」

「彼女にすれば、心の中に土足で踏み入られているのと同じ。決して愉快ではないでしょう」

「じゃあ、街の人たちが飛んでいったのは、どうしてだ」

「私達にも味方がいるということです」

「味方だと?」

 それは、一体……。

「ご主人様っ!」

 背後から聞こえた声に、俺は背筋を震わせた。
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