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生命の内なる力用
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「あなたの選択を聞かせてください。ロートス・アルバレス」
原初の女神は玉座から立ち上がり、音もなく俺の前に歩み寄ってくる。
「その前に聞きたいことがある」
「なんでしょう?」
「どうしてあんたはあの世界から手を引いたんだ? 言っちゃなんだが、あの三人娘に任せるよりもあんた自身が管理した方が良かったんじゃないか? 原初の女神っていうくらいだしさ。いや別に責めたいわけじゃない。素朴な疑問ってやつだ」
「端的に申し上げれば、多様性を求めたからです」
「多様性……?」
「私は幾度となく神となりましたが、世界の管理については失敗続きでした。私ひとりの意思だけでは、どうしても偏りが生まれるのです。それを回避するため、かの世界の創世において、私は自身を三つに分け、三女神となったのです」
「つまり厳密にはあんたはあの女神達の母じゃなくて……」
「そうです。マーテリア、ファルトゥール、エンディオーネ。あの子達は私の分け身。私自身なのです」
そういうことか。
だから原初の女神はあの世界にいなかったんだ。
そしてエレノアによって三女神が滅されたことで原初の女神が復活した。
「私は円滑に世界を管理すべく多様性を重視しましたが、結果として女神同士の争いが起こり、長きにわたる闘争の歴史を紡いでしまいました」
「今からでも遅くないだろ。俺に任せるんじゃなく、あんた自身がもう一度やり直せばいい」
原初の女神は悲しそうな表情で首を横に振る。
「私の神性はすでに新たな女神に奪われてしまいました。私の手に、かの世界の管理権はないのです」
世界の管理権。
なるほど……神性ってのはそういうことか。
世界の法や理を司る権限。世界のプログラムを書き換えたり、書き足したり、あるいは消したりする権利。
それが神性の正体か。
「わかった。今のあんたに出来ることはないんだな」
「申し訳ありません」
「謝らなくていいよ。それより」
原初の女神の美しさを凝視しつつ、俺は真面目な口調を崩さず続ける。
「世界の管理権を軒並み手に入れたエレノアを相手に、どうやって神性を剥奪すればいいか教えてくれ」
「〈妙なる祈り〉です」
「なに?」
「〈妙なる祈り〉とは、生命が持つ最上にして最大の力。その影響力は世界のみならず、この【座】の隅々に波及します。ひいては無数に存在するあらゆる次元、世界、その内にある森羅万象にまで余さず伝わるということです」
「そんなにすごい力なのか? その言い方じゃ、高い位階にある【君主】も対象に含まれてるってことだろ?」
「もちろんです。【君主】であろうと神であろうと、世界の内に住む人であろうと生命であることに変わりはありません。その価値、重み、尊さは等しく同じ。役割が異なろうと優劣はないのです。ゆえに生命の内から発する〈妙なる祈り〉はすべてに届き得る」
「〈妙なる祈り〉の力で、エレノアの神性に対抗するってことか。そう言われると、やることは今までと変わらないな」
生命の力は無限大。人の心は【座】をも包括する。
それが聞けてよかった。
「質問は以上ですか?」
原初の女神が緊張感のある声を鳴らす。
「さぁ。あなたの選択を聞かせてください。ロートス・アルバレス」
「ああ。もちろんだ」
俺は――。
原初の女神は玉座から立ち上がり、音もなく俺の前に歩み寄ってくる。
「その前に聞きたいことがある」
「なんでしょう?」
「どうしてあんたはあの世界から手を引いたんだ? 言っちゃなんだが、あの三人娘に任せるよりもあんた自身が管理した方が良かったんじゃないか? 原初の女神っていうくらいだしさ。いや別に責めたいわけじゃない。素朴な疑問ってやつだ」
「端的に申し上げれば、多様性を求めたからです」
「多様性……?」
「私は幾度となく神となりましたが、世界の管理については失敗続きでした。私ひとりの意思だけでは、どうしても偏りが生まれるのです。それを回避するため、かの世界の創世において、私は自身を三つに分け、三女神となったのです」
「つまり厳密にはあんたはあの女神達の母じゃなくて……」
「そうです。マーテリア、ファルトゥール、エンディオーネ。あの子達は私の分け身。私自身なのです」
そういうことか。
だから原初の女神はあの世界にいなかったんだ。
そしてエレノアによって三女神が滅されたことで原初の女神が復活した。
「私は円滑に世界を管理すべく多様性を重視しましたが、結果として女神同士の争いが起こり、長きにわたる闘争の歴史を紡いでしまいました」
「今からでも遅くないだろ。俺に任せるんじゃなく、あんた自身がもう一度やり直せばいい」
原初の女神は悲しそうな表情で首を横に振る。
「私の神性はすでに新たな女神に奪われてしまいました。私の手に、かの世界の管理権はないのです」
世界の管理権。
なるほど……神性ってのはそういうことか。
世界の法や理を司る権限。世界のプログラムを書き換えたり、書き足したり、あるいは消したりする権利。
それが神性の正体か。
「わかった。今のあんたに出来ることはないんだな」
「申し訳ありません」
「謝らなくていいよ。それより」
原初の女神の美しさを凝視しつつ、俺は真面目な口調を崩さず続ける。
「世界の管理権を軒並み手に入れたエレノアを相手に、どうやって神性を剥奪すればいいか教えてくれ」
「〈妙なる祈り〉です」
「なに?」
「〈妙なる祈り〉とは、生命が持つ最上にして最大の力。その影響力は世界のみならず、この【座】の隅々に波及します。ひいては無数に存在するあらゆる次元、世界、その内にある森羅万象にまで余さず伝わるということです」
「そんなにすごい力なのか? その言い方じゃ、高い位階にある【君主】も対象に含まれてるってことだろ?」
「もちろんです。【君主】であろうと神であろうと、世界の内に住む人であろうと生命であることに変わりはありません。その価値、重み、尊さは等しく同じ。役割が異なろうと優劣はないのです。ゆえに生命の内から発する〈妙なる祈り〉はすべてに届き得る」
「〈妙なる祈り〉の力で、エレノアの神性に対抗するってことか。そう言われると、やることは今までと変わらないな」
生命の力は無限大。人の心は【座】をも包括する。
それが聞けてよかった。
「質問は以上ですか?」
原初の女神が緊張感のある声を鳴らす。
「さぁ。あなたの選択を聞かせてください。ロートス・アルバレス」
「ああ。もちろんだ」
俺は――。
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