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律儀に待つ
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「みなさん。マシーネン・ピストーレ五世が言うように、あの【ゾハル】を壊すことはできません。高位次元の存在であるが故に、我々のできることは限られています。その在り方に干渉はできても、有無の概念には触れ得ないのです」
アデライト先生の説明に、アカネの眉間が寄った。
「ならばどうすればよい。ぶっ叩いて壊れない物をどう処理するというのじゃ」
「高位次元のエネルギーはこの世界においては極めて不安定。常に世界に歪みを生み出します。そこを突くしかないでしょう」
「でも、どうやって?」
質問したルーチェの声は、とても緊張している。
「次元の狭間に閉じ込めてしまえば、いかに【ゾハル】とて簡単には戻ってこられないはず。次元の狭間は混沌に満ちています。あれほどの膨大かつ歪んだエネルギーを持っていれば、【ゾハル】は必ず次元感覚を失います」
「次元の狭間……ですか。しかしその扉であったマザードラゴンは先程消滅いたしましたわ」
アイリスの言葉通りだ。
俺もマザードラゴンが消え去るのを見た。
「次元の狭間と繋がる世界の穴は点在していますが、ここにはない。強いて言えば【ゾハル】そのものが歪みなのですが……それは我々にとって有利に働きません。ですから」
アデライト先生は、ルーチェの胸元に視線を向ける。
「それを使います」
はっとしたルーチェは、その首にかけられたペンダントに触れる。
「そっか。その手がありましたね……!」
俺もルーチェと同じ反応だった。
アイテムボックス。ヴリキャス帝国が造り出したマジックアイテムだ。
その効果は、魔法で作り出した疑似空間に物体を収納できるというもの。内部空間は次元の狭間に近しい性質を持つだろう。その中に【ゾハル】を封じ込めることができれば、ワンチャンあるってことか。
「でも、たかがマジックアイテムが通用するでしょうか?」
「普通なら無理でしょう。魔法とは人がスキルを模倣したものに過ぎません。同じ技術を用いたマジックアイテムも然り。ですが、ルーチェさんの権能は『ホイール・オブ・フォーチュン』を無効化します」
「私なら【ゾハル】をアイテムボックスの中に収納できるってことですね」
「確実ではありませんが、可能性は充分にあります」
というより、それ以外に方法が見つからない。
それほどまでに【ゾハル】は強大だ。精神体になっているせいで加勢できないのがもどかしい。
「試してみる価値はありそうですわ」
「そうじゃな。わらわとアイリスで突破口を開く。その隙に彼奴を封じてしまうのじゃ」
「……やってみます」
唇を引き結ぶルーチェに、アデライト先生がにこりと微笑んだ。
「大丈夫。私達なら勝てます。なんたってここにいる皆は、ロートスさんを選び、彼に選ばれた者達なのだから」
「……そうですよね」
ルーチェもまた微笑み、力強く頷いた。
「これで負けたら、ロートスのせいってことじゃな」
「ふふ。その通りですわ」
四人の間に小さな笑いが生まれる。
ええ……妙な連帯感が育まれてるじゃんよ。
とはいえ、一理あるかもしれない。
もともと世界の存亡は俺の双肩にかかっている。俺はその自覚と決意で今までやってきたんだ。
信じる仲間がここで負けたら、それは俺の責任でもある。
そういうことだ。完全にな。
アデライト先生の説明に、アカネの眉間が寄った。
「ならばどうすればよい。ぶっ叩いて壊れない物をどう処理するというのじゃ」
「高位次元のエネルギーはこの世界においては極めて不安定。常に世界に歪みを生み出します。そこを突くしかないでしょう」
「でも、どうやって?」
質問したルーチェの声は、とても緊張している。
「次元の狭間に閉じ込めてしまえば、いかに【ゾハル】とて簡単には戻ってこられないはず。次元の狭間は混沌に満ちています。あれほどの膨大かつ歪んだエネルギーを持っていれば、【ゾハル】は必ず次元感覚を失います」
「次元の狭間……ですか。しかしその扉であったマザードラゴンは先程消滅いたしましたわ」
アイリスの言葉通りだ。
俺もマザードラゴンが消え去るのを見た。
「次元の狭間と繋がる世界の穴は点在していますが、ここにはない。強いて言えば【ゾハル】そのものが歪みなのですが……それは我々にとって有利に働きません。ですから」
アデライト先生は、ルーチェの胸元に視線を向ける。
「それを使います」
はっとしたルーチェは、その首にかけられたペンダントに触れる。
「そっか。その手がありましたね……!」
俺もルーチェと同じ反応だった。
アイテムボックス。ヴリキャス帝国が造り出したマジックアイテムだ。
その効果は、魔法で作り出した疑似空間に物体を収納できるというもの。内部空間は次元の狭間に近しい性質を持つだろう。その中に【ゾハル】を封じ込めることができれば、ワンチャンあるってことか。
「でも、たかがマジックアイテムが通用するでしょうか?」
「普通なら無理でしょう。魔法とは人がスキルを模倣したものに過ぎません。同じ技術を用いたマジックアイテムも然り。ですが、ルーチェさんの権能は『ホイール・オブ・フォーチュン』を無効化します」
「私なら【ゾハル】をアイテムボックスの中に収納できるってことですね」
「確実ではありませんが、可能性は充分にあります」
というより、それ以外に方法が見つからない。
それほどまでに【ゾハル】は強大だ。精神体になっているせいで加勢できないのがもどかしい。
「試してみる価値はありそうですわ」
「そうじゃな。わらわとアイリスで突破口を開く。その隙に彼奴を封じてしまうのじゃ」
「……やってみます」
唇を引き結ぶルーチェに、アデライト先生がにこりと微笑んだ。
「大丈夫。私達なら勝てます。なんたってここにいる皆は、ロートスさんを選び、彼に選ばれた者達なのだから」
「……そうですよね」
ルーチェもまた微笑み、力強く頷いた。
「これで負けたら、ロートスのせいってことじゃな」
「ふふ。その通りですわ」
四人の間に小さな笑いが生まれる。
ええ……妙な連帯感が育まれてるじゃんよ。
とはいえ、一理あるかもしれない。
もともと世界の存亡は俺の双肩にかかっている。俺はその自覚と決意で今までやってきたんだ。
信じる仲間がここで負けたら、それは俺の責任でもある。
そういうことだ。完全にな。
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