901 / 981
怒りの日
しおりを挟む
(これが僕の人生の結晶。【ゾハル】だ)
見ただけでわかる。
ヤバいやつだ。
(キミには感じられるはずだ。【ゾハル】の異質。逸脱した概念を)
死にかけの俺にも理解できる。
確かに目の前に浮かんでいるのに、紛れもなくこの世界から外れている。
それはまるで、形は合っているのに絵柄が違うピースのはまったジグソーパズルのようだった。
(長年の研究が実を結んだんだ。【ゾハル】はこの世界のモノじゃない。エレノアちゃんの根源粒子で創られていない唯一の物質だ)
エレノアの根源粒子で創られていないだと。
この世界において、そんなものが存在しうるのか。
(僕の遺作であり、真の最高傑作だよ。これは結果論に過ぎないが、【ゾハル】を完成させるために【座】に至ったと言っても過言じゃない)
その物質に、自分の精神を落とし込んだってわけか。
昔はでっかい歯車の機械だったのが、人間になり、最後には金ピカの本になっちまうとはな。相変わらず意味不明な野郎だ。
(僕がこの境地に辿り着けたのはキミ達のおかげだ。アルバレスの御子らがいなければ、僕は【座】に至ることさえ諦めていただろう。嘘偽りなく、心の底から感謝している。ありがとう。ロートス・アルバレス)
ふざけてやがる。
今すぐあの本を燃やし尽くしてやりたいが、今の俺には怒りに打ち震える体力も残っていない。
(そうだ。この際だから伝えておこう。僕の大目的。キミは聞きたくないかもしれないけど)
ああ聞きたくないね。
どうせロクでもない目的だ。
(僕の大目的は、すべてを破壊すること。原初の女神の創世から続く、この世界のすべてを)
ほらな。
やっぱりクソみてぇな目的だ。
(それだけが、人が神から解放される唯一無二の救済なんだよ)
ちがう。
そんなものは解放でも救済でもない。
ただヤケクソになってるだけだろうが。
(いいね。キミの想いがひしひしと伝わってくる。こればかりは究極にして永遠の謎だ。キミは、死にゆく姿までもが眩い)
好き勝手言いやがって。
燃え滾る感情とは裏腹に、指先ひとつ動かない。
これまで何度も死んできたけど、今度だけは違う。
避けようのない消滅の気配が俺に迫っている。蘇生も再生もありえない。
ここで死ねば、すべてが終わる。
(そうだ。すべてが終わる。共に終止符を打とうじゃないか。永きに渡る、世界を巡る戦いの歴史に)
目はもう見えない。辛うじて光の明暗を知覚できるのみ。
俺に分かるのは『ゾハル』の放つ光が急激に強くなっていることだけ。
これは、すべてを終わらせる金色の光だ。
俺が生まれ落ち、生き抜いてきたこの世界が、終わる。
前世界も。
エレノアの世界も。
神も人も。
その存在と痕跡のすべてが、終わる。
(クライマックスを迎えよう。ロートス・アルバレス!)
見ただけでわかる。
ヤバいやつだ。
(キミには感じられるはずだ。【ゾハル】の異質。逸脱した概念を)
死にかけの俺にも理解できる。
確かに目の前に浮かんでいるのに、紛れもなくこの世界から外れている。
それはまるで、形は合っているのに絵柄が違うピースのはまったジグソーパズルのようだった。
(長年の研究が実を結んだんだ。【ゾハル】はこの世界のモノじゃない。エレノアちゃんの根源粒子で創られていない唯一の物質だ)
エレノアの根源粒子で創られていないだと。
この世界において、そんなものが存在しうるのか。
(僕の遺作であり、真の最高傑作だよ。これは結果論に過ぎないが、【ゾハル】を完成させるために【座】に至ったと言っても過言じゃない)
その物質に、自分の精神を落とし込んだってわけか。
昔はでっかい歯車の機械だったのが、人間になり、最後には金ピカの本になっちまうとはな。相変わらず意味不明な野郎だ。
(僕がこの境地に辿り着けたのはキミ達のおかげだ。アルバレスの御子らがいなければ、僕は【座】に至ることさえ諦めていただろう。嘘偽りなく、心の底から感謝している。ありがとう。ロートス・アルバレス)
ふざけてやがる。
今すぐあの本を燃やし尽くしてやりたいが、今の俺には怒りに打ち震える体力も残っていない。
(そうだ。この際だから伝えておこう。僕の大目的。キミは聞きたくないかもしれないけど)
ああ聞きたくないね。
どうせロクでもない目的だ。
(僕の大目的は、すべてを破壊すること。原初の女神の創世から続く、この世界のすべてを)
ほらな。
やっぱりクソみてぇな目的だ。
(それだけが、人が神から解放される唯一無二の救済なんだよ)
ちがう。
そんなものは解放でも救済でもない。
ただヤケクソになってるだけだろうが。
(いいね。キミの想いがひしひしと伝わってくる。こればかりは究極にして永遠の謎だ。キミは、死にゆく姿までもが眩い)
好き勝手言いやがって。
燃え滾る感情とは裏腹に、指先ひとつ動かない。
これまで何度も死んできたけど、今度だけは違う。
避けようのない消滅の気配が俺に迫っている。蘇生も再生もありえない。
ここで死ねば、すべてが終わる。
(そうだ。すべてが終わる。共に終止符を打とうじゃないか。永きに渡る、世界を巡る戦いの歴史に)
目はもう見えない。辛うじて光の明暗を知覚できるのみ。
俺に分かるのは『ゾハル』の放つ光が急激に強くなっていることだけ。
これは、すべてを終わらせる金色の光だ。
俺が生まれ落ち、生き抜いてきたこの世界が、終わる。
前世界も。
エレノアの世界も。
神も人も。
その存在と痕跡のすべてが、終わる。
(クライマックスを迎えよう。ロートス・アルバレス!)
0
お気に入りに追加
1,202
あなたにおすすめの小説
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
異世界転生!ハイハイからの倍人生
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。
まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。
ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。
転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。
それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる