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使いにくいバフ

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 偽りなく言えば、俺はびっくりした。
 アンの意図がまったく理解できなかったからだ。

「なぜ裸に」

 その一言を捻り出すので精一杯だった。
 豊満な肢体を露わにしたリリスは、頑張って秘部を隠そうと必死になっている。ところが、色々とサイズが大きいので隠しきれていない。
 大きなおっぱいは片腕では隠しきれておらず、桃色の先端が見え隠れしている。下腹部も同様である。生えていないことがわかるくらいには、見えてしまっていた。
 俺は改めて、マシなんとか五世のセンスに脱帽する。

「リリス。我が主があなたの痴態を食い入るように見ておいでです」

 いやいや、言うほど凝視してないって。
 ……してるかも。
 アンに指摘され、俺の視線に気が付いたリリスは、その肌を真っ赤に染めてこれでもというほど恥ずかしがっていた。

「おいおい……!」

 そんな隙を見逃す守護隊じゃない。リリスの動きが止まっているのを好機と見て、一斉に襲いかかる。
 一瞬、俺はリリスの身を案じた。まさか杞憂に終わるとは思ってもみなかった。
 リリスが全身から放った爆風の如き波動が、攻撃的なバリアとなって守護隊らを弾き飛ばしていた。

「うおッ――」

 とてつもない衝撃波だ。俺は姿勢をかがめ、なんとか踏ん張る。アンに至っては早々にその場に座り込んでいた。

「どういうことだ。あのパワーは……!」

 俺と戦った時以上の爆発力だ。瘴気で強化されているとはいえ、これほどの力を発揮できるものなのか。

「いや……そうか。そういうことか!」

 とある記憶を探り当てる。脳裏には、マシなんとか五世の声が蘇っていた。

『そのリリスは羞恥心を力にする。キミが見れば見るほど、強くなってしまうよ?』

 そうだ。
 羞恥心を力にする。そういえば俺がリリスを倒した時は、その習性を逆手に取ったんだった。

「アンお前。羞恥心を煽ればリリスが強くなることを知ってたのか?」

「あーしは魔王です。モンスターについて、誰よりも深く知ることができる。この世に一体しか存在しない人工モンスターとて、その例に漏れません」

 はは。

「すごいじゃねーか」

 素直にそう思う。
 超強化されたリリスは、まさに鬼神のごとき戦いを展開していた。守護隊のほぼ全員を相手に、互角以上の肉弾戦を繰り広げている。
 ぷるっぷるの巨乳を惜しげもなく揺らし、股関節をかっぴろげながらの戦いだ。
 鬼気迫るとはまさにこのことだろう。

「さぁ、あーしはあの二人の相手をします。主、どうぞご照覧ください」

 二人とは、シーラとレオンティーナのことだ。

「気を付けろ。あの二人は強いぞ。なんたって、俺が特別目をかけていた二人だ」

「なおさらやる気が出てきます」

 アンは優雅でありながら力強い一歩を踏み出す。

「主の従者としてどちらが優れているのか、きちんと証明して差し上げましょう」

 左の掌に黒い魔力が滲み、漆黒の柄が伸び出てくる。それを掴んだアンは威勢よく抜刀した。

「まぁ……主に刃を向けている時点で、あーしの勝利は確定していますが」

 守護隊と魔王。
 三つの強き気配が、瞬時に激突した。
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