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誤った選択

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 俺は否定しなかった。
 いや、できなかった。
 それは紛うことなき真実だから。

「ロートスくんったら、肝心な時に限ってつまんないヘマをするよねー」

 その言い方は気に入らない。

「俺だって必死でやってんだ。この世界を守るために」

「はい出ましたー。成果が出ない人の決まり文句ー」

 きゃっきゃと笑うエンディオーネ。
 何がそんなにおかしいのか。

「気付いていないかもしれないけどさー。キミは、傲慢なんだよ。ロートスくん」

 俺が、傲慢とな。

「気付いてるさ。仕方ないだろ。俺は心身ともにイケメンで、とんでもなく強くて、世界中の人間を魅了する大人物なんだからよ」

「あはは。やっぱり気付いてないかー」

 へらへらしやがって。

「あんねー。そーゆーのじゃないんだよなー。優れた能力を自覚してるとか、自己肯定感が高すぎるとか、てんで的外れだよ。ってゆーより、ひょっとして『むしろ』って感じなのかなー?」

「何が言いてぇ」

「ロートスくん。なんでもかんでも自分が頑張れば成し遂げられると思い込んでるでしょー?」

「それの何がダメだってんだ。俺は自分の力を信じてるんだ。それとも、自分を過信してるって言いてぇのか」

「いんや。あたしがキミを傲慢って評価したのはねー?」

 エンディオーネは笑みを絶やさず頬杖をついて、

「心から誰かを信じることができないからだよ」

 は。
 何を言い出すかと思えば。

「それこそ的外れだな。俺は仲間や恋人達を信じてる。それは俺のこれまでの生き様が証明してるぜ。俺はみんなと一緒に戦って、ここまできたんだ」

「ふーん? ま、そういう時もあるよね。でもねー、さっきも言ったけどさ。ホントのホントに肝心な時は、一人で戦ってきたじゃん?」

「……なに?」

「そだねー。具体的には、キミが最初に神の山に入った時かなー。エストを滅ぼすために〈八つの鍵〉が必要だって事前に分かってたのに、結局一人で勇み足を踏んじゃったよね?」

「あれは……成り行き的に仕方なかったんだよ……」

 俺は国家反逆罪で指名手配されていたし、正直なところ時間をかけて〈八つの鍵〉を探す手間を惜しむ気持ちもあった。
 だが、なぜそれが誰も信用していないことになるのか。

「もう一つ例を挙げよっか。神性を手に入れたエレノアちゃんと戦った時のこと。あの時は〈八つの鍵〉が揃ってたよね?」

「ああそうだ。前回の失敗を教訓にしてだな……」

「でも、エレノアちゃんと戦うってなった時に、半分はその場を離れちゃった。ロートスくんがそう指示したんだよ」

「そんなの、当たり前だろ。人には得手不得手がある。戦いに参加する奴と、そうじゃない奴を選んだだけだ。それは信じる信じないとは別の話だろ」

「ちがう。ちがうよロートスくん」

 エンディオーネは失望の色を濃くして、首を振った。

「あの時、鍵がそろってれば、エレノアちゃんを止めることができた。世界は、創り直されずに済んだんだよ」

 なん……だと……。
 どういうことなんだ、一体。
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