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激動の胎動
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場はしばし沈黙に陥る。
「何故、エンディオーネがここに?」
アンが当然の疑問を口にした。
「ねぇパパ。もしかして『ユグドラシル・レコード』の正体って」
「ああ。こいつだったんだ」
世界樹に物事を記憶する力なんてない。いくらすごい生命力を備えていたとしても、あくまで植物なのだから。
だが、その根幹にエンディオーネがいるとなれば話は別だ。
女神には意思がある。矛盾した記憶と記録を併せ持つことだってできる。
「婿殿。エンディオーネとは一体なんだ? どうやら『ユグドラシル・レコード』の別名のようだが」
フィードリッドが知らないのも無理はない。というより、前世界の記憶を持つ者しか知らないことだ。
創世の三女神は、なかったことになっている。
俺は世界樹に囚われているエンディオーネに近づく。瞼を落としてピクリとも動かない。まるで人形のように。
「ロートス。『ユグドラシル・レコード』と交信するなら、その幼子に触れるでやんす」
指先に意識が集まる。
応えてくれるのだろうか。
いいや。応えてくれなきゃ困るぜ。
俺を異世界に連れてきやがったのは、他でもないお前なんだからよ。
「ったく」
自然と頬が緩む。
世界樹に絡みつかれたエンディオーネの体は、そのほとんどが隠れてしまっている。
露わになっているのは、顔と胸元だけだ。
「頼むぜ。このクソガキが」
祈るような気持ちで、エンディオーネのつるぺたおっぱいに触れる。
その刹那――世界が加速した。
音もなく爆ぜた白い空間。俺はその中に包み込まれる。
いや、俺だけじゃない。
生命の間にいた全員がエンディオーネから生まれた光に呑み込まれた。
「ふ。どうやら成功したようだ」
「で、やんすね。『ユグドラシル・レコード』の起動に立ち会うのは久方ぶりでやんす」
フィードリッドとオーサが感慨深げにうそぶいた。
目の前には、世界樹から解放されたエンディオーネが立っている。
その瞳が、ゆっくりと開いた。
「相変わらず遅すぎだよねぇ。ロートスくんは」
第一声は、へらへらとした嘲笑だった。
「真打ちは遅れてやってくるもんだろ」
「そういう台詞は、真打ちらしい活躍をしてる人が言うからかっこいいんだよ」
「は? してるだろ充分」
「してたら世界はこんなことになってないよん」
心臓を抉るような言葉だな。
これなら鎌で首を刈り取られる方がマシかもしれん。
「『ユグドラシル・レコード』って、案外饒舌なのね」
アナベルが呆れたように言うと、フィードリッドとオーサの緊迫した声が答えた。
「そんなはずがあるか。レコードが言葉を発するなど、見たことも聞いたこともない。族長はあるのか?」
「ないでやんす。レコードは常に、あっしらの精神に情報を送るだけだったやんす」
「エンディオーネが目を覚ましたのです。さすが我が主。眠れる女神を起こすなんて」
アンが俺を褒めそやすが、生憎褒められることには慣れてるんで。
俺は自分を褒めまくるから。
「久しぶりに会ったんだし、旧交を温めたいところだけどね~。そんなことより、聞きたいことがあるんじゃな~い?」
「ある。クソほどな」
聞かせてもらうぜ。
世界のすべてを記録していると言われる『ユグドラシル・レコード』の内容を。
「何故、エンディオーネがここに?」
アンが当然の疑問を口にした。
「ねぇパパ。もしかして『ユグドラシル・レコード』の正体って」
「ああ。こいつだったんだ」
世界樹に物事を記憶する力なんてない。いくらすごい生命力を備えていたとしても、あくまで植物なのだから。
だが、その根幹にエンディオーネがいるとなれば話は別だ。
女神には意思がある。矛盾した記憶と記録を併せ持つことだってできる。
「婿殿。エンディオーネとは一体なんだ? どうやら『ユグドラシル・レコード』の別名のようだが」
フィードリッドが知らないのも無理はない。というより、前世界の記憶を持つ者しか知らないことだ。
創世の三女神は、なかったことになっている。
俺は世界樹に囚われているエンディオーネに近づく。瞼を落としてピクリとも動かない。まるで人形のように。
「ロートス。『ユグドラシル・レコード』と交信するなら、その幼子に触れるでやんす」
指先に意識が集まる。
応えてくれるのだろうか。
いいや。応えてくれなきゃ困るぜ。
俺を異世界に連れてきやがったのは、他でもないお前なんだからよ。
「ったく」
自然と頬が緩む。
世界樹に絡みつかれたエンディオーネの体は、そのほとんどが隠れてしまっている。
露わになっているのは、顔と胸元だけだ。
「頼むぜ。このクソガキが」
祈るような気持ちで、エンディオーネのつるぺたおっぱいに触れる。
その刹那――世界が加速した。
音もなく爆ぜた白い空間。俺はその中に包み込まれる。
いや、俺だけじゃない。
生命の間にいた全員がエンディオーネから生まれた光に呑み込まれた。
「ふ。どうやら成功したようだ」
「で、やんすね。『ユグドラシル・レコード』の起動に立ち会うのは久方ぶりでやんす」
フィードリッドとオーサが感慨深げにうそぶいた。
目の前には、世界樹から解放されたエンディオーネが立っている。
その瞳が、ゆっくりと開いた。
「相変わらず遅すぎだよねぇ。ロートスくんは」
第一声は、へらへらとした嘲笑だった。
「真打ちは遅れてやってくるもんだろ」
「そういう台詞は、真打ちらしい活躍をしてる人が言うからかっこいいんだよ」
「は? してるだろ充分」
「してたら世界はこんなことになってないよん」
心臓を抉るような言葉だな。
これなら鎌で首を刈り取られる方がマシかもしれん。
「『ユグドラシル・レコード』って、案外饒舌なのね」
アナベルが呆れたように言うと、フィードリッドとオーサの緊迫した声が答えた。
「そんなはずがあるか。レコードが言葉を発するなど、見たことも聞いたこともない。族長はあるのか?」
「ないでやんす。レコードは常に、あっしらの精神に情報を送るだけだったやんす」
「エンディオーネが目を覚ましたのです。さすが我が主。眠れる女神を起こすなんて」
アンが俺を褒めそやすが、生憎褒められることには慣れてるんで。
俺は自分を褒めまくるから。
「久しぶりに会ったんだし、旧交を温めたいところだけどね~。そんなことより、聞きたいことがあるんじゃな~い?」
「ある。クソほどな」
聞かせてもらうぜ。
世界のすべてを記録していると言われる『ユグドラシル・レコード』の内容を。
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