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救世神的な強さ

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 エマが怪我をしないように細心の注意を払って疾駆する。
 数秒後に辿り着いたのは講堂前の大広場。
 今まさに、ヒーモがメテオ・オーガに踏み潰されそうになっていた。

「フレイムボルト」

 俺の指先から射出された火炎の短矢が、メテオ・オーガの足の裏に命中。股関節から先を木っ端みじんに吹き飛ばす。

「うおぉぅっ!」

 ヒーモが情けない声を出す。
 体勢の崩れたメテオ・オーガに、追撃のフレイムボルトが三発突き刺さり、その巨体を爆散させた。

「うわぁああっ! なんだっ!」

 うずくまるヒーモは、突然弾け飛んだメテオ・オーガを前を錯乱している。
 もう脅威は去ったというのに。
 俺はエマを下ろし、ヒーモへと歩み寄る。

「おい。こんなところで何をしてんだ」

「え、あ……? ロートス?」

「助けにきたぜ」

「お、お、お……ロォトスウゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!」

 両目から涙を垂れ流し、ヒーモは俺に抱き着いてきた。
 流石の俺も空気を読んで、避けないでおいた。

「吾輩は今ほどキミの友情を感じたことはないぞぉっ。まさに親友だぁ!」

「わかったから」

 俺はヒーモは引きはがすと、傍らのエマを見た。

「エマ嬢が報せてくれたんだ。バカが一人学園に向かったってな」

「そうだったのか。感謝するよ、エマくん。キミも吾輩の命の恩人だな」

「いえ。そんな大袈裟な」

 九死に一生を得たヒーモと、無事に目的を達成できたエマは、ほっと胸を撫でおろしていた。

「二人とも。安心するのはまだ早いぞ」

「え? 何故だい?」

「周りを見ろ」

「あ……!」

 先程のヒーモの叫びを聞いたのは俺だけじゃなかったようだ。
 大広場に夥しい数のモンスターが集結しつつあった。

 その数、ゆうに百を超えている。そのすべてが危険指定種だ。
 この場所はすでに包囲されている。

「はは、嘘だよな。吾輩は幻覚でも見てるのか?」

「モンスターがこんなにいっぱい……!」

「エマくんにも見える……? そんなのはだめだぁっ……もうおしまいだぁっ……!」

 エマは腰を抜かしていた。
 ヒーモは膝から崩れ落ちていた。

「危険指定種がこんなに、か。ペネトレーションと『アウトブレイク』が重なると、それこそ世界が終わるってわけだ」

 そうなったら、前世界と同じような状況になる。
 平穏に思えた世界の裏で、まさかこんなヤバイことが起こっていたなんてな。

「世界がどうなるとかどうでもいいだろう! その前に吾輩達が殺されるんだから!」

「公子さま! 早く逃げましょう!」

「乱心したかエマくん! 逃げ場なんてどこにもないじゃない!」

「だから落ち着けって」

 溜息。

「もう終わってる」

「終わってる? 吾輩達の運命がか……?」

「違う。ほら」

 俺は顎でモンスターを指す。
 次の瞬間。
 百超の危険指定種はことごとくバラバラに弾け飛んだ。
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