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コンディション・レッド発令やん

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「白面の――」

 言いかけた瞬間だった。
 食堂に警報が鳴り響く。同時に、天井の魔石が激しく赤点滅していた。

「な、なんだっ! 何事だ!」

 大臣が叫ぶ。この場はにわかに緊迫した。
 途端、食堂に駆け込んでくる影が一つ。アナベルだった。

「パパ! 街にモンスターが現れたって!」

「モンスターだと?」

 帝都カーレーンは鉄壁の守りだ。外部からモンスターが侵入するとは考えられない。
 となると、まさか。

 俺はイキールを見る。
 彼女は耳に念話灯を当てていた。凛と引き締まった表情は、すでに臨戦態勢に入っていることを示している。

「『アウトブレイク』よ」

 イキールにも連絡があったようだ。
 やっぱりか。

 よりによって何故このタイミングで起きるかなぁ。
 俺の人生いつもそうだ。大事な場面でなんらかの邪魔が入る。つくづく、そういう星のもとに生まれてるんだな。

「シエラ!」

「は、はい坊ちゃま!」

「グランブレイドの皆様にはシェルターに避難して頂く。お前とアナベルでご案内しろ」

「かしこまりました!」

 よし。

「イキール。着替えるか?」

「そんな暇はないわ。このまま行くわよ」

 イキールはテーブルナイフを使ってロングスカートの裾を切り裂き、深いスリットを作る。眩いばかりの白い太ももがチラ見えし、俺はちょっと興奮した。

「皆様は万が一に備えてシェルターへお急ぎを!」

「待ってください! 小公爵様はどうされるのです!」

 それまで陰を薄くしていた本物のコーネリアが、替え玉王女をエスコートしながら叫んだ。その疑問に、俺は超絶イケメンスマイルをもって応える。

「任せとけ」

 そして俺とイキールは、揃って屋敷を飛び出した。
 剣を取って馬を駆り、帝都を駆け抜ける。そこかしこで凶悪なモンスターによる破壊活動が行われており、それらに衛兵や冒険者達が対応しているようだった。

「公子。『アウトブレイク』は『リベレーション』で発生したみたい。外に出てきたモンスターはどれも危険指定種に定められてるわ」

「厄介なことになったな。閉鎖してたんだろ? なのにどうして起こった」

「とっくの昔に仕掛けられてたってことでしょうね。学園の卒業生に〝ユグドラシル〟の息がかかった者がいてもおかしくないから」

「スパイ天国だな」

「平和ボケしてるのよ。デメテルも、魔法学園もね」

 苦々しく呟くイキール。

「それで? 俺達は何をする?」

「陛下の安全を脅かす強力なモンスターに対処するよう皇室から指令があったわ。皇宮前の大公園で暴れまくってる。そこに向かうわよ」

「おーけー」

 帝都に住民の悲鳴が響き渡っている。四方八方から聞こえてくる恐怖と苦痛の叫び。そして戦闘の音。剣が舞い矢が飛び、魔法が炸裂する。壮絶な戦火の中で、人もモンスターも次々と命を散らしている。

「くそっ。被害が大きいな」

「すべてを助けることはできないわ。皇宮を守るのが第一よ」

「わーってるって」

 言いながらも、俺は馬のスピードを緩めることなく道中で目にしたモンスターをすべて駆除していた。
 イキールが気付かないほどの刹那の間に、俺は馬を降り、モンスターを斬り伏せ、また馬上に戻る。それを十五回は繰り返している。

 俺にはエレノアの加護であろうスキルがある。その一つが『タイムルーザー』だ。
 これは従来の『タイムルーザー』とは違う。
 従来型は体感時間を速くする効果だったが、新型は体感時間を著しく遅くする。そして尚、ゆっくり流れる時間で俺だけが通常通り動けるのだ。
 いわゆるクロックアップみたいなもので、俺が凄まじい強さを発揮できる一番の理由がこれだった。

 そんな感じでモンスターの駆除が五十体くらいに達したあたりで、俺達は皇宮前の大公園に到着。
 そこには、あまりにも巨大な――十階建てのマンションくらいの――植物型のモンスターがうねうねとツタをうねらせながらそびえ立っていた。
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