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意味なんかあるのか

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 一時間後。

 俺達は帝国製の飛空艇で、空路を移動していた。
 キャビンの中は程よい緊張感に包まれている。誰も無駄口を叩こうとはしない。
 流石の俺も、冗談を言うような空気でないことは察していた。

「まもなく神の山です。船で近づけるのはここまでなので、着陸します」

 パイロットを務めるレオンティーナの言葉を受けて、俺は窓から神の山を見る。
 巨大な山の上空には、暗い雷雲がたちこめ、無数の白い稲妻が閃いている。
 不思議なことに、山の上空だけがそうなっており、それ以外は青々とした快晴だ。

「不穏なのです……」

 サラが不安そうに呟いた。

「瘴気でできた雲……っすね」

 ウィッキーが珍しく深刻な声色だった。

「瘴気だけじゃないのじゃ。ファルトゥールの霧もたちこめておる」

 アカネはいつも通り飄々としている。

「そして、あの稲妻はエンディオーネの光を帯びています」

 アデライト先生の眼鏡がキラリと光った。

「まさか。もう原初の女神が再誕したんじゃ……」

 誰もが心に浮かべ、しかし口にできなかった言葉を発したのは、ルーチェだった。

「可能性はある」

 セレンはあくまで冷静だった。

「種馬さま……」

 オルタンシアが俺の袖を掴む。

「たとえ原初の女神が復活したとしても、殴ればよいのですわ」

 アイリスがさも当然のように言った。

「ここまで来たからには、もう後戻りはできない。みんな、覚悟はいいか?」

 俺がかなりのイケメン感を醸し出しながら言うと、みんなはそれぞれの様相で肯定の意を示した。

「よし」

 腹は括った。
 あとは、実行するだけだ。
 飛空艇が高度を落とし、着陸する。
 降り立ったのは、神の山にほど近い平原だ。

 俺達は飛空艇から降りると、雄々しくそびえる神の山を見上げた。
 こうして地上から見ると、その威容がありありとわかる。
 まさに神の山の名にふさわしい。

「我々はここで待機しております。ご武運を」

「ああ。頼む」

 レオンティーナをはじめとする守護隊の面々に見送られ、俺達は神の山への一歩を踏み出した。
 まず俺達は九人揃って神の山の麓まで進んだ。飛空艇に積んでいた帝国製の人員輸送車での移動だ。運転手はウィッキー。

「お前、免許持ってたんだな」

「免許? なんすかそれ」

「車を運転するなら免許いるだろ?」

「いんないっすよそんなの」

 まじかよ。
 無免許で運転し放題ってか?

「帝国内では免許がいるが、グランオーリスには自動車が普及しておらんのじゃ。運転免許という概念がそもそもないのじゃよ」

「なるほど」

 アカネが補足してくれたおかげで、理解できた。
 運転=免許という意識は、俺の中にまだ現代日本の感性が残っていることを示唆しているのかもしれないな。
 そして俺達は、ほどなくして神の山の麓に辿り着いた。
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