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 司令室はしばらく静寂に包まれていた。
 俺達は、目の当たりにした映像にただただ呆気に取られている。
 ウィッキーのおっぱいを揉みしだく俺の手だけが、ゆっくりと動いているのみ。

「先生。あの映像は、今起こっていたことなんですか?」

「いいえ。あれは昨日の映像です」

「昨日?」

 つまり、あれはリアルタイムではなく、記録された映像か。

「ほ。これは驚いたのじゃ。まさか『千里眼』のスキルを拡張し、時空を越えた場所を投影するとは……」

「わずかばかりですが、私も根源粒子に触れましたから」

「〈座〉に片足を突っ込んでおるようじゃな」

 アデライト先生も、理の外に踏み出そうとしているのか。
 まるで神のバーゲンセールだな。

「それはともかく、じゃ」

 アカネはソファに座りなおす。

「何が起こっておるか。理解できた者はおるか?」

 俺は首を横に振る。先生も、ウィッキーも同様だった。

「じゃろうな」

「もったいぶらずに教えてくれ。エレノアは、何をしたんだ? いったい何をしようとしてる?」

「エンディオーネとマーテリアの神性を奪い、その場にファルトゥールまでもが現れた。創世の女神が一堂に会したと言っても過言ではないのじゃ。それが意味するところは、すなわち、神話の再現じゃ」

「神話の再現、っすか……?」

「この世界を創り出した女神の三姉妹。その力が、再び一つになろうとしておる」

 女神の力が一つに?

「そうなると、どうなるんだ?」

「ロートス。ファルトゥールの霧の中で訪れた臨天の間に、どでかい絵画があったのを憶えておるか?」

「ああ。鎧を来た女だろ?」

「あれは女神じゃ」

「え? でも、知らない顔だったぞ?」

「創世の三女神は、もともと一つの存在じゃった。一つの体と魂を共有していたと言い換えてもいい。じゃが世界を創造する際に、神性を三つに分け、それぞれが個の名と人格を持ち、別々の存在となった」

「は? いきなりそんな新情報出されても困るぜ」

「わらわもすこし前まで知らんかったことじゃ。最近至った真実じゃよ。そして、あの絵に描かれていた女こそ……そうじゃな、便宜上、原初の女神とでも呼ぼうかの」

「原初の女神……それは、他の女神とは具体的にどう違うのでしょうか?」

 先生が深刻な面持ちで尋ねる。

「原初の女神は、言うなれば根源粒子の発生源じゃ。この世界のすべては根源粒子から成り立っておる。それは創世の三女神とて例外ではない。つまり、原初の女神は世界の原材料なのじゃよ」

「なんですって? それでは……」

「あれっすよね。原初の女神ってのは、この世界そのものってことっすよね」

「その認識で問題ないのじゃ」

 驚愕する先生とウィッキー。頷くアカネ。
 どうしよう。
 話についていけない。

「分かたれた神性を再び一つに……ちょっと待つっすよ。それじゃあ、エレノアがしようとしてることって」

「原初の女神の再誕……ですね」

 うそやろ?
 本当に、そんなことをしようとしているのかよ。
 一体、何の為にそんなことを。
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