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今再びの帰還
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「戻ってきたのか?」
「そのようじゃ」
アインアッカは見るも無残な状況だった。
建物は破壊され、大地はぼこぼこにめくれあがっている。
そこかしこに亜人の死体が転がり、街を血に染めていた。
「ひどい有様じゃ」
「くそっ! ファルトゥールのやつ……!」
アカネは歩きながら、街の様子を見渡している。
「お互いに争った形跡がある」
「え?」
「霧を吸って発狂し、同士討ちを起こしたのじゃろう」
「そんな……!」
「おそらくは、あのサラという娘も仲間に襲撃されたのじゃろうな。女神に直接攻撃されておったら、おそらく命はなかったはずじゃ」
言いながら、アカネは袖からアイテムボックスを取り出す。
「とにかく、先に治療を施した方がよい」
アイテムボックスが光った瞬間、アカネの腕の中に瀕死のサラが出現する。
「サラ」
俺はすぐさま駆け寄り、ファーストエイドをかけた。〈妙なる祈り〉の力はすでに戻っているようで、サラの傷はみるみる回復していく。
「ごしゅじんさま……」
「サラ。もう大丈夫だ。今はゆっくりしてろ」
力なく微笑んだサラは、そのまますうっと寝息を立てはじめた。
「要塞は比較的安全そうだな。中で休ませよう」
「わかったのじゃ」
俺とアカネは、要塞の指令室へと向かう。
道中の様子も酷いものだった。要塞の内部でも同士討ちの形跡があり、多くの亜人の死体が転がっている。
その中で息のある者を発見したのは、かなり運が良い出来事だった。
指令室の近く。壁に背を預けて座り込んでいる亜人の衛兵がいたのだ。
「おい。大丈夫か」
俺はすぐさまファーストエイドで治療する。
ぐったりしていた衛兵は、虚ろな瞳を俺を見上げる。
「英雄様、ではありませんか……」
「傷は治した。心配いらないぞ」
「そうですか……」
衛兵はすでに生きる気力をなくしているようだった。ファルトゥールの霧を吸って、かなりのトラウマを負ったようだ。
「一体なにがあった?」
「わかりません。急に空が曇ったかと思うと、濃い霧が出てきて、それからは……」
衛兵の顔が強張り、体が震えだす。
「はっきりとは思い出せません。ですが……なにか、恐ろしい夢を見ていたような気分です」
俺と同じようなことになってたのか。
「ファルトゥールの霧を吸った者は、それぞれの記憶や精神によって作り上げられた世界に飛ばされるのじゃ。そこは、楽園でもあり、地獄でもある」
「それぞれの世界? じゃあ、お前やサラが俺のところにこれたのは、なぜだ」
「それは……」
アカネは素っ気なく、顔をそむける。
「この話は後にするのじゃ。今は状況の把握が先決じゃ」
サラを抱いたまま足早に指令室へと入っていくアカネ。
何かを隠しているようだが、それが何であるか、俺にはなんとなく分かる気がする。
今はのじゃ美女モードだが、アカネの本質は現代日本で一緒に過ごした朱音と何ら変わってはいない。
つまり、照れ隠しというやつだ。
おそらく俺達が同じ世界に至ったのは、多くの記憶と感情を共有しているからだろう。つまるところ、深く愛し合っているからこその結果だ。
アカネ然り。サラ然り。
完全に、そういうことだ。
とはいえ、この状況で暢気に惚気るわけにはいかん。
俺は衛兵を担ぎ上げて、アカネの後を追った。
「そのようじゃ」
アインアッカは見るも無残な状況だった。
建物は破壊され、大地はぼこぼこにめくれあがっている。
そこかしこに亜人の死体が転がり、街を血に染めていた。
「ひどい有様じゃ」
「くそっ! ファルトゥールのやつ……!」
アカネは歩きながら、街の様子を見渡している。
「お互いに争った形跡がある」
「え?」
「霧を吸って発狂し、同士討ちを起こしたのじゃろう」
「そんな……!」
「おそらくは、あのサラという娘も仲間に襲撃されたのじゃろうな。女神に直接攻撃されておったら、おそらく命はなかったはずじゃ」
言いながら、アカネは袖からアイテムボックスを取り出す。
「とにかく、先に治療を施した方がよい」
アイテムボックスが光った瞬間、アカネの腕の中に瀕死のサラが出現する。
「サラ」
俺はすぐさま駆け寄り、ファーストエイドをかけた。〈妙なる祈り〉の力はすでに戻っているようで、サラの傷はみるみる回復していく。
「ごしゅじんさま……」
「サラ。もう大丈夫だ。今はゆっくりしてろ」
力なく微笑んだサラは、そのまますうっと寝息を立てはじめた。
「要塞は比較的安全そうだな。中で休ませよう」
「わかったのじゃ」
俺とアカネは、要塞の指令室へと向かう。
道中の様子も酷いものだった。要塞の内部でも同士討ちの形跡があり、多くの亜人の死体が転がっている。
その中で息のある者を発見したのは、かなり運が良い出来事だった。
指令室の近く。壁に背を預けて座り込んでいる亜人の衛兵がいたのだ。
「おい。大丈夫か」
俺はすぐさまファーストエイドで治療する。
ぐったりしていた衛兵は、虚ろな瞳を俺を見上げる。
「英雄様、ではありませんか……」
「傷は治した。心配いらないぞ」
「そうですか……」
衛兵はすでに生きる気力をなくしているようだった。ファルトゥールの霧を吸って、かなりのトラウマを負ったようだ。
「一体なにがあった?」
「わかりません。急に空が曇ったかと思うと、濃い霧が出てきて、それからは……」
衛兵の顔が強張り、体が震えだす。
「はっきりとは思い出せません。ですが……なにか、恐ろしい夢を見ていたような気分です」
俺と同じようなことになってたのか。
「ファルトゥールの霧を吸った者は、それぞれの記憶や精神によって作り上げられた世界に飛ばされるのじゃ。そこは、楽園でもあり、地獄でもある」
「それぞれの世界? じゃあ、お前やサラが俺のところにこれたのは、なぜだ」
「それは……」
アカネは素っ気なく、顔をそむける。
「この話は後にするのじゃ。今は状況の把握が先決じゃ」
サラを抱いたまま足早に指令室へと入っていくアカネ。
何かを隠しているようだが、それが何であるか、俺にはなんとなく分かる気がする。
今はのじゃ美女モードだが、アカネの本質は現代日本で一緒に過ごした朱音と何ら変わってはいない。
つまり、照れ隠しというやつだ。
おそらく俺達が同じ世界に至ったのは、多くの記憶と感情を共有しているからだろう。つまるところ、深く愛し合っているからこその結果だ。
アカネ然り。サラ然り。
完全に、そういうことだ。
とはいえ、この状況で暢気に惚気るわけにはいかん。
俺は衛兵を担ぎ上げて、アカネの後を追った。
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