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逆転
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上半身と下半身が、真っ二つに分かれる。見開かれた黒い瞳が、驚愕に染まって俺を見る。
「痛……ッ」
苦痛に歪んだ魔王の美貌。
しかし、それだけだった。俺は間違いなく魔王の存在を消滅させるつもりで殴った。それでも、魔王の腹部を完全に破壊するに止まった。これは、予想だにしないことだ。
「見誤ったようですね……愚かなノームがッ!」
魔王が叫んだ次の瞬間。
魔王の上半身と下半身が、別々の軌道を描いて高速移動を始めた。
「なんだ……? きもちわるっ」
「言ったはずです。あーしは既に人の理を外れていると」
飛んできた下半身が開脚し、俺の腕と胴体を挟みこんで拘束する。
「なにっ!」
あまりの奇怪さに呆気に取られ、反応できなかった。
しかも凄まじい怪力だ。この俺が女の股に挟まれて微動だにできない。
「ノームごときが粋がった報いです。死をもって神に許しを乞いなさい」
「くそっ! ふざけんな!」
「潔く諦めなさい」
すごい速度で肉薄してきた魔王の上半身が、その細腕を大きく振りかぶる。すると、それに追随するようにして瘴気の大腕が虚空に顕現する。
うわ。
あんなもんで殴られたら、マジで死ぬ。
またかよ。
また俺はマーテリアに負けるのか。
当初の計画通り〈八つの鍵〉を集めるっていう正規の手段を取るべきだったのかもしれない。
けど、功を焦った。神の山の時と同じ轍を踏んじまった。
ちくしょうめ。
瘴気を克服して、神スキルを手に入れて、俺は知らず慢心していた。
そんなつもりはなかったのに。油断大敵。最大の敵は自分とはよく言ったものだ。
だが、悔やんでももう遅い。
今の俺にできるのは、瘴気と『ものすごい光』を駆使して防御を固めることだけ。
いかんせん、気安めだが。
「死ぬがよい」
極限にまで凝縮された瘴気の大腕が、淡々とした殺意を滾らせて、俺に振り下ろされた。
暗転する視界。
正直、何が起きたか理解できなかった。
痛みはないが、ただ致命的なダメージを負ったことだけは感じる。
寸断されていた意識を取り戻した時には、急激な落下感を憶えていた。
「――イエ! ノイエッ!」
エレノアの声が聞こえる。
ああそうか。
俺は魔王の『黒虚空万象滅閃光』から解放され、上空から落下しているんだ。
まさしくさっきのヘリオスと同じだ。
大地へと真っ逆さまに落ちていく俺を、エレノアが必死になって追いかけてくる。
「や……めろ……」
その隙を魔王が見逃すはずがない。
俺を追って急降下するエレノアの背中を、漆黒のレーザーが貫いた。
「痛……ッ」
苦痛に歪んだ魔王の美貌。
しかし、それだけだった。俺は間違いなく魔王の存在を消滅させるつもりで殴った。それでも、魔王の腹部を完全に破壊するに止まった。これは、予想だにしないことだ。
「見誤ったようですね……愚かなノームがッ!」
魔王が叫んだ次の瞬間。
魔王の上半身と下半身が、別々の軌道を描いて高速移動を始めた。
「なんだ……? きもちわるっ」
「言ったはずです。あーしは既に人の理を外れていると」
飛んできた下半身が開脚し、俺の腕と胴体を挟みこんで拘束する。
「なにっ!」
あまりの奇怪さに呆気に取られ、反応できなかった。
しかも凄まじい怪力だ。この俺が女の股に挟まれて微動だにできない。
「ノームごときが粋がった報いです。死をもって神に許しを乞いなさい」
「くそっ! ふざけんな!」
「潔く諦めなさい」
すごい速度で肉薄してきた魔王の上半身が、その細腕を大きく振りかぶる。すると、それに追随するようにして瘴気の大腕が虚空に顕現する。
うわ。
あんなもんで殴られたら、マジで死ぬ。
またかよ。
また俺はマーテリアに負けるのか。
当初の計画通り〈八つの鍵〉を集めるっていう正規の手段を取るべきだったのかもしれない。
けど、功を焦った。神の山の時と同じ轍を踏んじまった。
ちくしょうめ。
瘴気を克服して、神スキルを手に入れて、俺は知らず慢心していた。
そんなつもりはなかったのに。油断大敵。最大の敵は自分とはよく言ったものだ。
だが、悔やんでももう遅い。
今の俺にできるのは、瘴気と『ものすごい光』を駆使して防御を固めることだけ。
いかんせん、気安めだが。
「死ぬがよい」
極限にまで凝縮された瘴気の大腕が、淡々とした殺意を滾らせて、俺に振り下ろされた。
暗転する視界。
正直、何が起きたか理解できなかった。
痛みはないが、ただ致命的なダメージを負ったことだけは感じる。
寸断されていた意識を取り戻した時には、急激な落下感を憶えていた。
「――イエ! ノイエッ!」
エレノアの声が聞こえる。
ああそうか。
俺は魔王の『黒虚空万象滅閃光』から解放され、上空から落下しているんだ。
まさしくさっきのヘリオスと同じだ。
大地へと真っ逆さまに落ちていく俺を、エレノアが必死になって追いかけてくる。
「や……めろ……」
その隙を魔王が見逃すはずがない。
俺を追って急降下するエレノアの背中を、漆黒のレーザーが貫いた。
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