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まずいやん

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「くらえ……!」

 サーベルから溢れだしたのは、あまりにも強い光の奔流。それが無数の光線となって迸る。まるで空を照らすサーチライトのごとく伸びた色とりどりのレーザービームは、それぞれが異なる軌道を描いて暴れまわり、数百のモンスター達を切り裂いてまもなく爆発四散させた。
 跡形も残らない。飛び散った血すらも、一滴残らず蒸発して消えていった。
 粒子となった瘴気の残滓のみが、粉雪のように大地に降り注ぐ。

「す、すごい……!」

 グランオーリスの軍の将校の一人が、そんな呟きを漏らした。

「瘴気を纏ったモンスターの群れを、いとも簡単に……! 間違いなく、超絶神スキルだ……!」

 グランオーリス軍に、勝利のムードが波及していく。
 ヘリオスも、『ものすごい光』のものすごさに驚いているようだった。
 だが。

「油断するな!」

 俺は緩みかけていた雰囲気を一喝する。

「取るに足らないザコを半分片づけただけだ! 本命がまだ残ってる!」

 戦いとは往々にして、勝ちが見えた時こそ一番危ないんだ。一歩間違えば、油断や慢心に繋がり、敗北に陥る。
 俺の言葉に、ヘリオスが小さく笑いを漏らした。

「瘴気を纏ったドラゴンは、単体で都市一つを壊滅させるというのに。それを、取るに足らないザコと評するか」

「俺の強さは、大概インフレしてるんだよ」

 俺は空を見上げる。
 黒々とした瘴気の雲に空いていたいくつもの穴が、みるみるうちに塞がっていく。何事もなかったかのようだ。
 そして、そこから瘴気を纏った大型モンスターが際限なく生み出されている。

「まじか……」

 流石の俺も、しんどくなってくる。
 絶望的な光景を見た兵士達から、勝利のムードが消え失せていった。

「ジェルドのノイエ」

 ヘリオスが俺の隣に馬を寄せてくる。

「魔王が健在である限り、あの雲が消滅することはない。いくらモンスター共を倒してもキリがないぞ」

「みたいだな」

「そのスキル。あと何発撃てる?」 

「さっきみたいな大規模なやつは、撃ててあと一回だ」

「成程。所詮はスキル。制約はつきものというわけだな」

 その通り。『ものすごい光』は強力だが、弾数には限りがある。ただでさえ異次元を創造したことでエネルギーを使い果たしてしまったんだし。
 つまるところ、無限に湧いてくるモンスターには通用しないってことだ。

「この場を打開するには、魔王を討つしか方法はない。そのために、我が国の悪評を流布してまで聖女を参戦させたのだ」

 エレノアの参戦すらも計画のうちだったってわけだ。
 たしかに、魔王とタメ張れるのは、女神の力を得た聖女しかいないと考えるのが普通だからな。
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