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絶望のはじまり

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「さらに。これは公になっていない情報なんですが、ヘッケラー機関なる秘密結社を壊滅させたという話もあります。ノイエ殿は、かの機関についてご存じですか?」

「さぁ?」

「恐ろしい組織でした。神の力を手にし、この天下を我が物にせんと目論む者達です。もし仮にヘッケラー機関が健在であれば、天下は今より比較にならぬほど乱れていたでしょう」

「そんなことはどうでもいい。ロートス・アルバレスについてそれだけ調べておいて、どうして接触しようと思わなかった?」

「……あまりにも妙だからです。まさしく破天荒。前代未聞の人物だ。それゆえ簡単には近づけない。下手に接触すれば、我が祖国グレートセントラルが更なる災いに苛まれる危険があります」

 人を怪獣みたいに言うな。

「虎穴に入らずんば虎子を得ず」

 俺の頭をよぎったのは、転生前の世界にあったことわざだった。
 テンフははっとした顔つきになる。

「けだし名言。ノイエ殿。このテンフ君、棒で叩かれたかのごとく目が覚めました」

「そりゃよかった」

「早速ロートス・アルバレスの消息を探らせましょう。如何せん神出鬼没な人物ゆえ、現在の居場所が掴めぬのです」

 そうだろうね。
 テンフは立ち上がり、一礼する。

「ノイエ殿。突然の訪問にも拘らずご教示下さり感謝いたします。次にやるべきことを理解したゆえ、これにて失礼いたす」

「うぃ」

 そうして、テンフは足早にテントから出ていった。
 直後。

「モンスターの襲撃だッッッッッ!」

 外から兵士の怒号が聞こえてきた。

「ノイエ殿ッ!」

「ああ」

 血相を変えて戻ってきたテンフと共に、俺はテントを飛び出た。

「これは……!」

 テンフが擦れた呟く。
 黄昏の空に瘴気が渦巻き、千を超えようかという数のモンスターが飛び交っていた。
 ドラゴンを筆頭にワイバーンやグリフォンなど強力な種族や、翼を持つ異形のモンスターも数多い。

「うわぁ! あの数は本当にやばいぞ!」

「今までこんな多く来たことなんてなかったのに! どうして今日に限ってこんなに来るんだ!」

「奴ら、いつもより纏っている瘴気が濃い! あんなのが降りてきたら、ひとたまりもないっ!」

 周囲の兵士達は阿鼻叫喚である。
 テンフも冷や汗を垂らし、空を仰いでいた。

「これはまずい……国が滅びるレベルだ……! なぜ急にこんなことが……!」

 絶望とはまさにこのことだ。
 テンフは近くの兵士を捕まえて声を荒げる。

「おい! どうして真上に来るまで気が付かなかった!」

「も、申し訳ありませぬ! しかし、我々が気付いた時にはすでにこの状態でした。つい先程まで影も形もなかったのです……!」

「なんたることだ……! くそっ。全軍、応戦せよ! 貴様はこのテンフ君の武器を持ってこい!」

「はっ!」
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