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衝撃的提案

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「ピンギャン平原での決戦。私は賛成です」

 エレノアの発言を受けて、リュウケンはしてやったりの表情になった。
 逆にアルドリーゼは、口を三角にする。

「え~でも~。聖女さま~」

「ジェルドの女王。あなたの戦場に、特筆すべき敵戦力はいますか」

「いるよ~。エカイユとエルフの混成軍だね~。まぁそこまで脅威ではないけど~」

 俺が送り込んだ軍だな。ハラシーフと、エルフの副長が取り仕切っているはずだ。

「亜人兵だって? はー、グランオーリスもやるねぇ」

 ネルランダーの暢気な様子に、リュウケンが眉をひそめた。

「亜人連邦の差し金アルか」

「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。なにせグランオーリスには亜人街と呼ばれる場所があってね。奴隷を徴兵している可能性もある」

「なるほどアル。亜人の参戦を口実に連邦を糾弾できるかとも思ったアルが」

「出来ないことはないが、だいぶ強引だね」

 セレンが亜人街を整備してくれていたおかげで、そういう面でも助けられているのか。ありがたいことだ。

「脅威でないというのなら、必要以上に気にせずともよいでしょう。それよりも私は、ピンギャン平原にいるアイリスの排除を主張します」

「まじアルか! それは喜ばしいアル!」

 小躍りするリュウケンを無視して、エレノアは話を続けた。

「先程も言われた通り、アイリスは強い。並の強者では太刀打ちできないでしょう。それに彼女は王国出身です。今は我が帝国が押さえつけてはいますが、時間をかけていては王国からの援軍が来る心配もあります。よくお考え下さい、ジェルドの女王。仮に王国と亜人連邦が手を組み、後方より大軍が押し寄せてきたとしたら。そうなれば、マッサ・ニャラブはひとたまりもありません」

「え~。王国と亜人が手を組むって~? そんなの――」

「ありえない話じゃないね。現に、ちょっと前まで牽制し合っていたオレ達が、こうして手を組んでるんだから」

 アルドリーゼが言葉に詰まり、エレノアが頷く。

「そうなる前に決戦を仕掛けます。私もピンギャン平原に向かいます故、マッサ・ニャラブからも援軍を派遣してください」

「……は~い」

 しょぼくれたアルドリーゼ。爆乳美女がしょぼくれる様はなんかいい。
 それはともかく。

 ふむ。
 エレノアは、いまだにアイリスに執着してるのか? 半神となった今も、人間の頃のトラウマが残っているのだとすれば、なんか面白いな。

「じゃあ~……どの軍を派遣しようかな~。うちにはサラマンダー師団みたいな、精鋭部隊はないし~」

 ジェルドの影は少数精鋭の部隊だろうけど、あれは親衛隊とか暗殺部隊みたいなものだから、戦場に送り出すには適していないんだろうな。

「提案があります」

「なんでしょ~聖女様」

 あろうことか、エレノアが俺を見た。

「今あなたの後ろにいる護衛を、派遣してください」

 それはまさに、衝撃的提案だった。
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