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無手じゃあ
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限りなく侍っぽい守衛達が、十字の刃を拵えた槍を手に、ムサシへと躍りかかっていく。
「怪我をさせても構わんっ!」
「応ッ!」
素早く軌道を描き、二つの十字の刃がムサシに迫る。だが、ムサシはまだ柄に手をかけてもいない。
「御免」
次の瞬間、二本の槍と、二人の守衛が、それぞれ別々の方向に飛び、宙を舞った。
「お?」
一瞬の出来事だった。
脱力して腰を落としたムサシは、凄まじい踏み込みで目にも留まらぬ初速を実現。槍の間合いの内側に入り込み、その両手を舞うようにしならせ、槍をいなし守衛を投げ飛ばしたのだ。
「なにッ!」
守衛の一人が驚きの声をあげる。
「こやつ! できるぞ! 心してかかれぃ!」
そこからは打って変わって、静かになった。守衛たちは一定の間合いを保ってムサシを取り囲み、槍を向けてじりじりと牽制している。
「やめるでござるよ。同胞に剣を向けたくないでござる」
「黙れ乱波者めっ」
ムサシは依然、直立したままだ。その立ち姿は一見隙だらけのようだが、実際はいかなる攻撃にも対応できる自然体の極致。
「思った以上の実力者だな」
「はい」
独り言のつもりで言った言葉に、レオンティーナが返事をする。
「さっきの、見えたか?」
「辛うじて」
「ふむ」
「第三者として観察している分には見えましたが、もしあの場で対峙していたのが私なら、反応できなかったと思います。あのムサシとかいう男、英雄級の実力です」
心持ち悔しそうに言うレオンティーナを、すこし可愛らしいと思ってしまった。
それはともかく、守護隊の一員であるレオンティーナをして英雄と言わしめるとは、すごいと言わざるを得ない。
おそらくサニーやハラシーフ、エルゲンバッハと同じクラス。それはつまり〈妙なる祈り〉的な力に目覚めているということか。
「かかれぇい!」
守衛らは一斉に動き、槍を突き放った。ムサシはそれらをするりと避けると、手の甲や拳を使って一人一人のしていく。刀を抜く素振りも見せない。
あっという間に、守衛十数人は大地の上でへばることになった。
「本城の門番がこのていどとは……国を得て甘んじ、クィンスィンの武芸も地に落ちたでござるか。否、拙者が強くなり過ぎたのやもしれぬでござるな」
ぱんぱんと手を払い、ムサシは着崩れた服を整える。
「では、通らせてもらうでござる」
まずいな。タイミングを見計らっていたら、ついに乱入できなかった。計画は失敗だ。
しかたない。俺も正攻法で行くか。
「待ちな」
俺はムサシの背中に声をかける。
近づいていく俺に、ムサシは油断なく振り返った。そして、俺の姿をじっと見据える。
「異国の者……先程からの重たい視線は、おぬしでござったか」
「悪かったな。ぶしつけに見ちまって」
「拙者に何か御用でござるか?」
ムサシの目は不審と警戒に満ちている。
「いやな。俺もこの城に用があるんだわ。ああ。ジョッシュとかいう城主にもな」
面倒だから一緒に連れて行ってほしいという俺の願いを口にする前に、場の緊張感は飽和状態に陥った。
「怪我をさせても構わんっ!」
「応ッ!」
素早く軌道を描き、二つの十字の刃がムサシに迫る。だが、ムサシはまだ柄に手をかけてもいない。
「御免」
次の瞬間、二本の槍と、二人の守衛が、それぞれ別々の方向に飛び、宙を舞った。
「お?」
一瞬の出来事だった。
脱力して腰を落としたムサシは、凄まじい踏み込みで目にも留まらぬ初速を実現。槍の間合いの内側に入り込み、その両手を舞うようにしならせ、槍をいなし守衛を投げ飛ばしたのだ。
「なにッ!」
守衛の一人が驚きの声をあげる。
「こやつ! できるぞ! 心してかかれぃ!」
そこからは打って変わって、静かになった。守衛たちは一定の間合いを保ってムサシを取り囲み、槍を向けてじりじりと牽制している。
「やめるでござるよ。同胞に剣を向けたくないでござる」
「黙れ乱波者めっ」
ムサシは依然、直立したままだ。その立ち姿は一見隙だらけのようだが、実際はいかなる攻撃にも対応できる自然体の極致。
「思った以上の実力者だな」
「はい」
独り言のつもりで言った言葉に、レオンティーナが返事をする。
「さっきの、見えたか?」
「辛うじて」
「ふむ」
「第三者として観察している分には見えましたが、もしあの場で対峙していたのが私なら、反応できなかったと思います。あのムサシとかいう男、英雄級の実力です」
心持ち悔しそうに言うレオンティーナを、すこし可愛らしいと思ってしまった。
それはともかく、守護隊の一員であるレオンティーナをして英雄と言わしめるとは、すごいと言わざるを得ない。
おそらくサニーやハラシーフ、エルゲンバッハと同じクラス。それはつまり〈妙なる祈り〉的な力に目覚めているということか。
「かかれぇい!」
守衛らは一斉に動き、槍を突き放った。ムサシはそれらをするりと避けると、手の甲や拳を使って一人一人のしていく。刀を抜く素振りも見せない。
あっという間に、守衛十数人は大地の上でへばることになった。
「本城の門番がこのていどとは……国を得て甘んじ、クィンスィンの武芸も地に落ちたでござるか。否、拙者が強くなり過ぎたのやもしれぬでござるな」
ぱんぱんと手を払い、ムサシは着崩れた服を整える。
「では、通らせてもらうでござる」
まずいな。タイミングを見計らっていたら、ついに乱入できなかった。計画は失敗だ。
しかたない。俺も正攻法で行くか。
「待ちな」
俺はムサシの背中に声をかける。
近づいていく俺に、ムサシは油断なく振り返った。そして、俺の姿をじっと見据える。
「異国の者……先程からの重たい視線は、おぬしでござったか」
「悪かったな。ぶしつけに見ちまって」
「拙者に何か御用でござるか?」
ムサシの目は不審と警戒に満ちている。
「いやな。俺もこの城に用があるんだわ。ああ。ジョッシュとかいう城主にもな」
面倒だから一緒に連れて行ってほしいという俺の願いを口にする前に、場の緊張感は飽和状態に陥った。
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