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無理なものは無理じゃん

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「で、どういうことだ? それは」

 基地への道すがら、後をついてくるカマセイが不思議でたまらないといった風に尋ねてきた。

「お堅い神聖騎士様が、まさかだろ」

 遠慮がちに俺と腕を組むレオンティーナを、しげしげと見つめている。

「話せば長い。色々と察してくれ」

「……いや、さっぱりわかんねぇっつーの」

 たしかに、俺の複雑な人生を察しろというのは、あまりにも酷な要求かもしれない。
 でも、説明が面倒なんだ。それだけは分かってほしい。 

「レオンティーナ」

「はい」

「これからこの国の軍部に向かう。フランクリンって奴に会いに行くんだ」

「フランクリン・ナイトフリートですか? 参謀次官補佐の」

「そうそう。よく知ってるな」

 神聖騎士としてこの国に派遣されてきたのだから、それくらい知ってて当然なのかな。

「もしや、魅了の件でしょうか?」

「話が早くて助かる。カマセイのも、レオンティーナが解除してくれたんだってな」

「はい。対象へ継続的に影響を与えるスキルは、比較的容易に浄化することができます」

「浄化ね。エレノアの力か?」

「……エンディオーネの力とする方が、適切かと」

「だな」

 スキルはあくまでエスト由来の力だ。
 そしてエストはマーテリアを元に、古代人の叡智を結集して造られた人工神でもある。
 純粋なる女神の業に比べて、スキルは下位のはたらきに過ぎないのだろう。
 だから、女神の神性を得たエレノアはスキルを超越している。その加護を享けた神聖騎士もまた同じく。
 それは奇しくも、俺が瘴気によってスキルを無効化するのと同様の原理だ。

「フランクリンは、魅了を封じる手だてを探しているんだ。魅了を浄化できるレオンティーナなら、その方法が分かるんじゃないか?」

「申し訳ありません。現時点で、魅了を対策することは不可能です」

「そうなのか? 解除できるのに?」

「すでに魅了された者の解除と、まだ魅了されていない者の予防とでは、根本的に異なるのです。予防の方が、より複雑な処置が必要になります」

「マジか」

 そいつは悪い知らせだな。フランクリンが聞いたら落胆するだろう。

「まぁ、どうなるかはわからないだろう。知恵を出し合えば解決策は見つかるかもしれない。とりあえず、フランクリンのところに戻って、しっかり話し合おう」

 俺が言うと、レオンティーナは頷く。
 カマセイは不満そうに、あるいは不思議そうに俺達のあとをついてきていた。
 そして、基地の客室に帰還。改めて四人で卓を囲むことになった。

「早かったですね」

 フランクリンは実に意外だ、と言わんばかりだった。

「たまたま知り合いだったらしいぜ。ラッキーだったな」

 カマセイが椅子にもたれてそんなことを言う。
 たまたまでもラッキーでもないんだなこれが。
 俺とレオンティーナの再会は、運命だった。
 過去の宿縁によって引き寄せ合ったと、そういうことだ。固く結ばれた主従ってのは、実際そんなもんだろう。

「では早速、議論を進めましょう。メイ嬢の『魅了のまなざし』について」  
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