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神聖という単語は厳か

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 フランクリンは深く頷いていた。

「ロートス殿には、何か妙案がお有りか」

「ない。今のところはな」

 スキルに関しては、そこまで詳しくないし。

「ただ、すこし気になることがある。カマセイ」

「あ?」

「昨日あんなにメイさんにご執心だったのに、どういうわけか今はさっぱりしてる。なんでだ?」

「……昨夜のことは忘れろ」

 自嘲気味の溜息が部屋に満ちる。

「あの後、うちの駐屯地に神聖騎士が派遣されてきた。そいつが俺達を見て、魅了されていることに気付いてな。解除してくれたんだ」

「解除……そんなことができるのか?」

「神聖騎士は聖女様のご加護を受けている。だから、浄化の力を扱えるんだよ」

 浄化とな。スキルの効果を打ち消すという意味では、その言い方も間違っちゃいないのかな。

「神聖騎士……聖ファナティック教会の聖女エレノアに仕える、女性だけで構成された精鋭部隊でしたか」

「ああ。今までは聖女様に付きっきりだったんだが、戦争が始まってからは各地に派遣されてるらしい」

 なるほど。
 開戦によって、いろいろ帝国内部でも事態が動いてるんだな。

「神聖騎士が魅了を解除した、その仕組みを解明できれば、メイさんのスキルを封じる手だてが見つかるんじゃないか」

 それに、スキルについて詳しい人なら俺も何人か知っている。アデライト先生やウィッキーならいい知恵をかしてくれるかもしれない。
 とはいえ、今は神聖騎士についてのことが気になる。

「会わせて頂けますか。その神聖騎士に」

 フランクリンも俺と同じ考えのようだ。

「別に取り次ぐのはかまわねぇが、それでなんか俺様に得があるのかよ」

 なんだと。がめつい奴め。
 しかし、カマセイの言うこともわかる。何の利益にもならないのに、わざわざ他国の面倒事に協力する義理はないし。

「報酬が欲しいんだったら、その腕を治してやるけど。どうだ?」

「てめぇが斬り落としたんだろうが!」

「誰がやったかは関係ない。治すか治さないかだ」

「……クソッ。わかったよ……!」

 はは。こいつの腕を斬り落としておいてよかった。

「で、どうしたらいいんだ? 俺達の駐屯地に来るか? それともここに連れて来ればいいのか?」

「ここに連れてきて頂けるのが最善です。なにせ、この部屋はセキュリティがしっかりしています。外に情報が漏れる心配がない」

「あいよ。じゃあちょっくら行ってくるわ。あのお高く留まった神聖騎士が、素直に来てくれるかは知らないけどな」

 そう言うカマセイは案外素直に行ってくれるようだ。

「念のため俺も一緒に行った方がいいかな」

「あ? なんでだよ」

「念のためだ」

 カマセイは不服そうだが、そんなことはどうでもいい。
 俺はカマセイについて、帝国軍の駐屯地に向かうことになった。
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