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王の故
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指令室に入ると、広い部屋が手狭に感じるほどの人数が俺を待っていた。
アデライト先生。
アイリス。
オルタンシア。
ロロ。
マホさん。
エルフのオーサと副長もいる。
そして、エカイユの戦士長とハラシーフまで。
そこにサラとルーチェを加えると、人口密度がそれなりになった。
「アニキ! おかえり!」
パタパタと駆け寄ってきたロロが、俺の手を引く。
「ほらこっちだ。早く座ってくれっ」
連れてこられたのは指令官のデスクだ。
「おい、ここはサラの席だろ」
「今はアニキの席になったんだよ。そうだよな、アネキ」
俺とロロが揃ってサラを見る。
「ロロの言う通りなのです。ご主人様が帰ってきたからには、この国の王になってもらわないといけないのです」
「え?」
なんだって。
「俺が……王?」
「そうだぜアニキ。みんなで話し合って決めたんだ」
「俺の意思はどこやねん」
そんなことを言われても戸惑うばかりだ。みんなを見渡しても、否定するような素振りは見せない。どうやらここにいる全員は了承済みのようだ。
「人間の俺が亜人の王って、そりゃなんかおかしくないか?」
俺の疑問には、ルーチェが答えてくれた。
「これまで亜人が人間に従わされてきた歴史を考えると、人間がこの国の王になるなんて悪い過去の繰り返しにしか見えないかもしれない。でもね、服従を強いられることと、自ら望んで仕えることは、まったく違うことなの」
「言いたいことは分かるけど、亜人達が俺を王と認めるわけないって」
「さっきのを見てもそう思う?」
何百人の亜人達が俺を褒め称えていた。けれどその数は、亜人の全人口に比べたらごく一部に過ぎない。
「中には俺を認めない人達だっているだろうし」
「古今東西、非難されない統治者はいないよ。どんな名君でも、心無い者達からの悪口を避けることはできない。むしろ君主は、誹謗されてこそ真価がわかるものなんだよ?」
「そういう問題なのか……?」
なんか上手く言いくるめられているような気がする。
「他のみんなも、同じ気持ちか?」
俺は部屋を見渡す。
おずおずと手を挙げたのは、ソファに浅く腰掛けるオルタンシアだった。
「自分は……種馬さまは王の座にふさわしいと、思います」
「オルたそ、そう言ってくれるのは嬉しいけどさ。俺、政治とかよくわかんないんだけど」
俺の呟きの後、今度はアデライト先生が口を開く。
「王の資質は政治力ではありませんよ。そういったことは宰相に任せてもよいのです。幸い、この場には優秀な子達が集まっているではありませんか」
「たしかに……」
それまで椅子の上で沈黙を保っていたオーサが、小さく咳払いをした。
「あっしらのおかげでこの国の亜人は統一できたでやんす。それで国家として安定はしたものの、国際情勢が不安定すぎるでやんすよ。こういう時は、牽引力のある指導者がいた方がいいと思うでやんす」
オーサの言葉に、ハラシーフも同調した。
「エルフの族長の言う通りだ。世が乱れる時、強い英雄が現れるのは必然。英雄が王となるも、また必定だろう」
「おいおい……みんな本気かよ……」
一体どうしちまったんだ。満場一致で俺を王に即位させようとするなんて。どうしてそんなことになっちゃってるんだ?
「ちょっといきなりすぎてな……すこし考える時間をくれないか」
俺がそう言うと、みんなは顔を見合わせる。
「すみません。ご主人様のお気持ちも考えずに、急なお話だったかもしれません。でも、ここにいる全員、そして亜人連邦の国民達は、ご主人様が王になることを望んでいる。それだけは理解してほしいのです」
「ああ……わかってる。わかってるさ」
重たくなりかけた空気を払拭するように、ルーチェがぱんぱんと手を叩く。
「なら、この話は後にして、先に決めるべきことを決めましょう。私たち亜人連邦が、諸外国に対してどのように立ちまわるのか」
ここから、日が暮れるまですごい有意義な会議が続いた。
優秀な人材が揃っているだけあり、きわめて有意義な会議だったと思う。
俺は政治に詳しくないので、詳細は割愛させてもらうが、な。
アデライト先生。
アイリス。
オルタンシア。
ロロ。
マホさん。
エルフのオーサと副長もいる。
そして、エカイユの戦士長とハラシーフまで。
そこにサラとルーチェを加えると、人口密度がそれなりになった。
「アニキ! おかえり!」
パタパタと駆け寄ってきたロロが、俺の手を引く。
「ほらこっちだ。早く座ってくれっ」
連れてこられたのは指令官のデスクだ。
「おい、ここはサラの席だろ」
「今はアニキの席になったんだよ。そうだよな、アネキ」
俺とロロが揃ってサラを見る。
「ロロの言う通りなのです。ご主人様が帰ってきたからには、この国の王になってもらわないといけないのです」
「え?」
なんだって。
「俺が……王?」
「そうだぜアニキ。みんなで話し合って決めたんだ」
「俺の意思はどこやねん」
そんなことを言われても戸惑うばかりだ。みんなを見渡しても、否定するような素振りは見せない。どうやらここにいる全員は了承済みのようだ。
「人間の俺が亜人の王って、そりゃなんかおかしくないか?」
俺の疑問には、ルーチェが答えてくれた。
「これまで亜人が人間に従わされてきた歴史を考えると、人間がこの国の王になるなんて悪い過去の繰り返しにしか見えないかもしれない。でもね、服従を強いられることと、自ら望んで仕えることは、まったく違うことなの」
「言いたいことは分かるけど、亜人達が俺を王と認めるわけないって」
「さっきのを見てもそう思う?」
何百人の亜人達が俺を褒め称えていた。けれどその数は、亜人の全人口に比べたらごく一部に過ぎない。
「中には俺を認めない人達だっているだろうし」
「古今東西、非難されない統治者はいないよ。どんな名君でも、心無い者達からの悪口を避けることはできない。むしろ君主は、誹謗されてこそ真価がわかるものなんだよ?」
「そういう問題なのか……?」
なんか上手く言いくるめられているような気がする。
「他のみんなも、同じ気持ちか?」
俺は部屋を見渡す。
おずおずと手を挙げたのは、ソファに浅く腰掛けるオルタンシアだった。
「自分は……種馬さまは王の座にふさわしいと、思います」
「オルたそ、そう言ってくれるのは嬉しいけどさ。俺、政治とかよくわかんないんだけど」
俺の呟きの後、今度はアデライト先生が口を開く。
「王の資質は政治力ではありませんよ。そういったことは宰相に任せてもよいのです。幸い、この場には優秀な子達が集まっているではありませんか」
「たしかに……」
それまで椅子の上で沈黙を保っていたオーサが、小さく咳払いをした。
「あっしらのおかげでこの国の亜人は統一できたでやんす。それで国家として安定はしたものの、国際情勢が不安定すぎるでやんすよ。こういう時は、牽引力のある指導者がいた方がいいと思うでやんす」
オーサの言葉に、ハラシーフも同調した。
「エルフの族長の言う通りだ。世が乱れる時、強い英雄が現れるのは必然。英雄が王となるも、また必定だろう」
「おいおい……みんな本気かよ……」
一体どうしちまったんだ。満場一致で俺を王に即位させようとするなんて。どうしてそんなことになっちゃってるんだ?
「ちょっといきなりすぎてな……すこし考える時間をくれないか」
俺がそう言うと、みんなは顔を見合わせる。
「すみません。ご主人様のお気持ちも考えずに、急なお話だったかもしれません。でも、ここにいる全員、そして亜人連邦の国民達は、ご主人様が王になることを望んでいる。それだけは理解してほしいのです」
「ああ……わかってる。わかってるさ」
重たくなりかけた空気を払拭するように、ルーチェがぱんぱんと手を叩く。
「なら、この話は後にして、先に決めるべきことを決めましょう。私たち亜人連邦が、諸外国に対してどのように立ちまわるのか」
ここから、日が暮れるまですごい有意義な会議が続いた。
優秀な人材が揃っているだけあり、きわめて有意義な会議だったと思う。
俺は政治に詳しくないので、詳細は割愛させてもらうが、な。
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