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神からの巣立ち
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「アイリス! 先生とマホさんを抱えて飛び降りろ! 巻き込まれるぞ!」
俺が言い終える前に、アイリスはすでに二人を抱えて跳躍していた。
高らかに跳んだアイリス。二人の叫び声が聞こえる。
そして三人は、城塞の縁を飛び越え、空から真っ逆さまに落ちていった。
「さぁ、どうする……?」
この崩壊を止めるにはどうすればいい?
落ちても被害が出ないよう、浮遊大地を粉々に粉砕するか?
それとも一つ残らず宇宙に打ち上げるか?
だめだ、どちらにしても時間がかかりすぎるし、余波で地上にまで影響を与えかねない。
こんな時〈妙なる祈り〉があれば、どうとでもできるってのに。
神を超えたと言っても、今の俺はただ無敵で最強なだけの男にすぎない。こういった繊細な作業には向いていないんだ。
焦る俺の袖が、ちょいちょいと引っ張られる。
横を見れば、のっぺら少女が俺を見上げていた。
「どうした?」
何か言いたげだ。
あ、もしかして。
「方法があるのか? この崩壊を食い止める方法が」
のっぺら少女は首肯すると、小さな手を天へと掲げる。
数秒後、コッホ城塞を揺るがしていた振動がぱたりと静まった。
「止まった……のか?」
大きくなり続けていた罅割れや、大地の分割が、まるで時が止まったように動かなくなった。
「そうか。キミの能力」
この世界に戻ってきた時、時の進みの遅い場所で訓練に励んだ。あれは、この子の力で時間を引き延ばしていたから。
つまり崩壊が止まったのではなく、崩壊の進みがめちゃくちゃ遅くなったんだ。この調子でいくなら、コッホ城塞が地上に墜落するのは、何百年後か何千年後か、そのレベルだろう。
「ふぅ……一応は、食い止められたってことか」
根本的には解決していない。問題の先延ばしかもしれないが、猶予ができたことはありがたい。時間がある時に対処すればいいだけだからな。
「ありがとう」
ふるふると、少女は首を振る。長い髪がふわりと舞った。
一歩、二歩、ゆっくりと歩いてから、細い指がある方向を指す。アイリスが跳んでいった方向だった。
俺に行けと促しているのだろう。
「キミはやっぱり、ここに残るんだな」
少女は答えない。
崩壊を止めておくためではなく、彼女は自らの願望によってここに残るのだろう。故郷であり、墓場であるコッホ城塞に。
「また来るよ」
俺は後ろ髪を引かれる思いで、城塞の外縁に歩を進める。
ここに帰ってこれるのは、いつになるだろうか。少なくとも、すべてが終わるまでは、帰ってはこれない。
「じゃあ、また」
地面を蹴り、空へと舞う。
視界の端に映った顔のない少女が、にこりと微笑んでいた気がした。
俺が言い終える前に、アイリスはすでに二人を抱えて跳躍していた。
高らかに跳んだアイリス。二人の叫び声が聞こえる。
そして三人は、城塞の縁を飛び越え、空から真っ逆さまに落ちていった。
「さぁ、どうする……?」
この崩壊を止めるにはどうすればいい?
落ちても被害が出ないよう、浮遊大地を粉々に粉砕するか?
それとも一つ残らず宇宙に打ち上げるか?
だめだ、どちらにしても時間がかかりすぎるし、余波で地上にまで影響を与えかねない。
こんな時〈妙なる祈り〉があれば、どうとでもできるってのに。
神を超えたと言っても、今の俺はただ無敵で最強なだけの男にすぎない。こういった繊細な作業には向いていないんだ。
焦る俺の袖が、ちょいちょいと引っ張られる。
横を見れば、のっぺら少女が俺を見上げていた。
「どうした?」
何か言いたげだ。
あ、もしかして。
「方法があるのか? この崩壊を食い止める方法が」
のっぺら少女は首肯すると、小さな手を天へと掲げる。
数秒後、コッホ城塞を揺るがしていた振動がぱたりと静まった。
「止まった……のか?」
大きくなり続けていた罅割れや、大地の分割が、まるで時が止まったように動かなくなった。
「そうか。キミの能力」
この世界に戻ってきた時、時の進みの遅い場所で訓練に励んだ。あれは、この子の力で時間を引き延ばしていたから。
つまり崩壊が止まったのではなく、崩壊の進みがめちゃくちゃ遅くなったんだ。この調子でいくなら、コッホ城塞が地上に墜落するのは、何百年後か何千年後か、そのレベルだろう。
「ふぅ……一応は、食い止められたってことか」
根本的には解決していない。問題の先延ばしかもしれないが、猶予ができたことはありがたい。時間がある時に対処すればいいだけだからな。
「ありがとう」
ふるふると、少女は首を振る。長い髪がふわりと舞った。
一歩、二歩、ゆっくりと歩いてから、細い指がある方向を指す。アイリスが跳んでいった方向だった。
俺に行けと促しているのだろう。
「キミはやっぱり、ここに残るんだな」
少女は答えない。
崩壊を止めておくためではなく、彼女は自らの願望によってここに残るのだろう。故郷であり、墓場であるコッホ城塞に。
「また来るよ」
俺は後ろ髪を引かれる思いで、城塞の外縁に歩を進める。
ここに帰ってこれるのは、いつになるだろうか。少なくとも、すべてが終わるまでは、帰ってはこれない。
「じゃあ、また」
地面を蹴り、空へと舞う。
視界の端に映った顔のない少女が、にこりと微笑んでいた気がした。
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