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最大の危機がやってきた
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「あぁ……!」
アデライト先生の悲壮な吐息が聞こえてくる。
「なんつー威力だよ……!」
マホさんは姿勢を低くして衝撃に耐えている。
アイリスが盾になっていなかったら、余波だけで二人の身は危うかったはずだ。
それを物語るように、俺が立っている場所からは猛烈な火柱が巻き上がっている。浮遊大地を貫き、下にまで伸びている始末だ。
『純然たる女神の瘴気。あなたのような穢れた生命は、この黒き光に耐えられない』
黒き光。
すなわち瘴気。
それはマーテリアの神性に満たされた根源粒子であり、それ故に生物に対して強く干渉してしまうのだ。
この世界を作り出した神こそが純粋無垢な存在であり、人間を含めた後発の生命はことごとく不純である、と。
つまり、それが瘴気の正体。
『さようなら。アルバレスの御子』
「生憎だけど――」
漆黒の火柱から、俺は悠然と歩み出る。
「俺はもう、そいつを克服しちまってる」
そういうわけで、まともに食らったらやばそうだと思ったけど、実際はそんなことはなかったぜ。
「ロートスさん! よかった……!」
アデライト先生の安堵の声がここまで聞こえてくる。
『そんなバカな……女神の光が、通用しないですって?』
「ああそうだ」
発言とは裏腹に、アンはそこまで驚いていないように見える。
「お前にとっちゃ女神ってのはさぞ偉大な存在なのかもしれないけどよ。本当のところ、別にそんなことはないっていう感じなんだよ」
『なんですって? 女神はこの世界の産みの親。人ごときが、母なる女神に敵うわけがありません』
「子が親を超えるなんざ、ごく当たり前のことってこった」
俺の右手から、漆黒の瘴気が浮かび上がる。
「これが、マーテリアを超えた証」
そして左手には、『ものすごい光』の白い輝きが灯る。
「これが最高神エストの呪いを解いた証だ」
今の俺は、瘴気とスキルの両方を自在に操ることができるのだ。
『なんですか……それは!』
右手の瘴気と、左手のスキルが、俺の頭上で融合していく。
漆黒と純白があわさり、究極に見える。
「おかえしだ」
黒と白のツートンカラーに彩られた一体の龍が、天へと飛翔し、そのままアンへと襲いかかった。
『これは……!』
その威力の凄まじさ、異質さに気が付いたのだろう。アンは咄嗟に回避行動を取るが間に合わない。巨大な龍の体当たりによって、首から下を一瞬にして消滅させられた。
『この力……これは……!』
首だけになったアンは、その傷口から黒い瘴気を垂れ流しながら、ゆっくりと落下していく。
『あはは……神殺しだなんてとんでもない。あなたが……あなたこそが……』
アンは乾いた呟きを残し、粒子となって虚空へ溶けていった。
にわかに、静寂が訪れる。
「倒した、のか?」
マホさんの言葉に、俺は首を横に振った。
「あれは瘴気で出来た分身です。本体はたぶん、神の山にいるでしょう」
出張してきた魔王を倒したところで、神の山に行かなければならないことに変わりはない。
とはいえ、女神との前哨戦が楽勝だったことは、これからの展開に希望をもたらした。
この調子でいけば、神殺しはお茶の子さいさいだ。
やったぜ。
「これでコッホ城塞が地上に落ちることはなくなった。ひとまずは戦争の起こっていない亜人連邦に――」
その時だった。
俺達の立っていた地面に大きな罅割れが生じる。
その罅は蜘蛛の巣のように網目状に広がり、浮遊大地全体に及んでいく。
「なんでだよ! 敵はもういないだろ!」
このままじゃ、コッホ城塞は崩壊して、流星のように大地に降り注ぐだろう。
そうなれば、王国に甚大な被害が出る。罪のない人達が、大勢死ぬ。
これは、マジでやばい。
アデライト先生の悲壮な吐息が聞こえてくる。
「なんつー威力だよ……!」
マホさんは姿勢を低くして衝撃に耐えている。
アイリスが盾になっていなかったら、余波だけで二人の身は危うかったはずだ。
それを物語るように、俺が立っている場所からは猛烈な火柱が巻き上がっている。浮遊大地を貫き、下にまで伸びている始末だ。
『純然たる女神の瘴気。あなたのような穢れた生命は、この黒き光に耐えられない』
黒き光。
すなわち瘴気。
それはマーテリアの神性に満たされた根源粒子であり、それ故に生物に対して強く干渉してしまうのだ。
この世界を作り出した神こそが純粋無垢な存在であり、人間を含めた後発の生命はことごとく不純である、と。
つまり、それが瘴気の正体。
『さようなら。アルバレスの御子』
「生憎だけど――」
漆黒の火柱から、俺は悠然と歩み出る。
「俺はもう、そいつを克服しちまってる」
そういうわけで、まともに食らったらやばそうだと思ったけど、実際はそんなことはなかったぜ。
「ロートスさん! よかった……!」
アデライト先生の安堵の声がここまで聞こえてくる。
『そんなバカな……女神の光が、通用しないですって?』
「ああそうだ」
発言とは裏腹に、アンはそこまで驚いていないように見える。
「お前にとっちゃ女神ってのはさぞ偉大な存在なのかもしれないけどよ。本当のところ、別にそんなことはないっていう感じなんだよ」
『なんですって? 女神はこの世界の産みの親。人ごときが、母なる女神に敵うわけがありません』
「子が親を超えるなんざ、ごく当たり前のことってこった」
俺の右手から、漆黒の瘴気が浮かび上がる。
「これが、マーテリアを超えた証」
そして左手には、『ものすごい光』の白い輝きが灯る。
「これが最高神エストの呪いを解いた証だ」
今の俺は、瘴気とスキルの両方を自在に操ることができるのだ。
『なんですか……それは!』
右手の瘴気と、左手のスキルが、俺の頭上で融合していく。
漆黒と純白があわさり、究極に見える。
「おかえしだ」
黒と白のツートンカラーに彩られた一体の龍が、天へと飛翔し、そのままアンへと襲いかかった。
『これは……!』
その威力の凄まじさ、異質さに気が付いたのだろう。アンは咄嗟に回避行動を取るが間に合わない。巨大な龍の体当たりによって、首から下を一瞬にして消滅させられた。
『この力……これは……!』
首だけになったアンは、その傷口から黒い瘴気を垂れ流しながら、ゆっくりと落下していく。
『あはは……神殺しだなんてとんでもない。あなたが……あなたこそが……』
アンは乾いた呟きを残し、粒子となって虚空へ溶けていった。
にわかに、静寂が訪れる。
「倒した、のか?」
マホさんの言葉に、俺は首を横に振った。
「あれは瘴気で出来た分身です。本体はたぶん、神の山にいるでしょう」
出張してきた魔王を倒したところで、神の山に行かなければならないことに変わりはない。
とはいえ、女神との前哨戦が楽勝だったことは、これからの展開に希望をもたらした。
この調子でいけば、神殺しはお茶の子さいさいだ。
やったぜ。
「これでコッホ城塞が地上に落ちることはなくなった。ひとまずは戦争の起こっていない亜人連邦に――」
その時だった。
俺達の立っていた地面に大きな罅割れが生じる。
その罅は蜘蛛の巣のように網目状に広がり、浮遊大地全体に及んでいく。
「なんでだよ! 敵はもういないだろ!」
このままじゃ、コッホ城塞は崩壊して、流星のように大地に降り注ぐだろう。
そうなれば、王国に甚大な被害が出る。罪のない人達が、大勢死ぬ。
これは、マジでやばい。
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