597 / 984
戦場に行くことが決まりましたの
しおりを挟む
場の視線が俺に集まる。
「ロートスさん。ですが〈妙なる祈り〉は……」
先生の問いかけに、俺は頷く。
「そうです。あの力は、もう俺の中にはありません」
「おい。自信満々に言いやがってなんだそりゃ。だったらどうするつもりなんだよ」
「大丈夫です。俺の中にはありませんが、とある場所に残っているはずです」
「もったいぶらず言えよ。どこにあるんだ」
「旧王都ブランドン。魔法学園の広場に立つ、ファルトゥールの塔にあります」
ヘッケラー機関が送り込んできた刺客と戦った時、俺は一振りの剣に祈りを吹き込んだ。覚醒した〈妙なる祈り〉をもってして、剣で無双をしようとしたからだ。そして、やっぱりいらねってなって床にぶっ刺した。
あの剣はまだあの場所に刺さったままのはず。剣術を習得した今の俺なら、あれを自在に使いこなせるに違いない。
「〈妙なる祈り〉を吹き込んだ剣。あれなら、斬るということに関しては無限の可能性を秘めてる。だから、エレノアから神性だけを切り離すことだってできる」
マホさんは、まさに目からウロコ状態だった。
「ははっ……そんなモンを、隠してやがったとはな」
別に隠してたわけじゃない。単に忘れていただけだ。
だが、必要な時に思い出すことができたからいいんだ。あの時、特に意味もなく作り出した剣が、今になって役に立とうとしている。俺の戦いに無駄なことなんか一つもないんだ。
「さぁ。光明が見えてきたところで、みんなお茶を飲もう。せっかくこの子が淹れてくれたんだ」
俺の言葉に、のっぺら少女はぺこりと頭を下げる。
「あら、とても美味しいですわ」
真っ先に飲んだアイリスが、のほほんとした笑みで感想を述べた。
アデライト先生とマホさんも、同意の首肯を見せている。
のっぺら少女は嬉しそうだ。ちょっと照れている節もある。不思議と、俺にはこの子の感情が理解できるのだ。
「エレノアを殺す必要はないとわかった。じゃあ次はどうするか、って話になるんだけど」
「簡単に流すなよ。死ぬほど悩んでたアタシがバカみてぇじゃねぇか」
「悩みってのは、一人が抱え込むから辛いんです。こうやって誰かと共有すれば、意外とすんなり解決するもんですよ」
「……違いねぇ」
もちろん、俺が有能オブ有能だからいうのも理由の一つだけどね。
「あの剣を手に入れれば、エレノアの神性を切り離すことはできる。問題は、今のこの世界情勢でどうやってエレノアに会うか、だけど」
俺は顎を押さえて考える。
「あいつは聖女って身分で崇められちゃいるが、教会にとって遊ばせておくには惜しい戦力だ。戦争が始まった今、教会の権威を強めるためにも、必ず戦場に出てくるはずだぜ」
「……結局は、戦うしかないってことですね」
俺の呟きがよほど落ち込んでいたのか、アデライト先生が肩を抱いてくれる。
「一刻も早く、この戦いを止めましょう。及ばずながら私も力を尽くします」
「先生……ありがとうございます」
俺は先生を抱きしめ返す。
それを見たマホさんは、呆れたように額を押さえていた。
「やれやれ。エレノアが見たら発狂モノだろうな……」
そうかもしれない。
それでも、再会した婚約者との戯れを邪魔される謂れはないさ。
「まぁ、色恋沙汰なんか、アタシには関係のねぇことか」
マホさんがそんなことを囁いた、その直後。
カフェテリアに轟音が鳴り、大きな振動が生じた。
「ロートスさん。ですが〈妙なる祈り〉は……」
先生の問いかけに、俺は頷く。
「そうです。あの力は、もう俺の中にはありません」
「おい。自信満々に言いやがってなんだそりゃ。だったらどうするつもりなんだよ」
「大丈夫です。俺の中にはありませんが、とある場所に残っているはずです」
「もったいぶらず言えよ。どこにあるんだ」
「旧王都ブランドン。魔法学園の広場に立つ、ファルトゥールの塔にあります」
ヘッケラー機関が送り込んできた刺客と戦った時、俺は一振りの剣に祈りを吹き込んだ。覚醒した〈妙なる祈り〉をもってして、剣で無双をしようとしたからだ。そして、やっぱりいらねってなって床にぶっ刺した。
あの剣はまだあの場所に刺さったままのはず。剣術を習得した今の俺なら、あれを自在に使いこなせるに違いない。
「〈妙なる祈り〉を吹き込んだ剣。あれなら、斬るということに関しては無限の可能性を秘めてる。だから、エレノアから神性だけを切り離すことだってできる」
マホさんは、まさに目からウロコ状態だった。
「ははっ……そんなモンを、隠してやがったとはな」
別に隠してたわけじゃない。単に忘れていただけだ。
だが、必要な時に思い出すことができたからいいんだ。あの時、特に意味もなく作り出した剣が、今になって役に立とうとしている。俺の戦いに無駄なことなんか一つもないんだ。
「さぁ。光明が見えてきたところで、みんなお茶を飲もう。せっかくこの子が淹れてくれたんだ」
俺の言葉に、のっぺら少女はぺこりと頭を下げる。
「あら、とても美味しいですわ」
真っ先に飲んだアイリスが、のほほんとした笑みで感想を述べた。
アデライト先生とマホさんも、同意の首肯を見せている。
のっぺら少女は嬉しそうだ。ちょっと照れている節もある。不思議と、俺にはこの子の感情が理解できるのだ。
「エレノアを殺す必要はないとわかった。じゃあ次はどうするか、って話になるんだけど」
「簡単に流すなよ。死ぬほど悩んでたアタシがバカみてぇじゃねぇか」
「悩みってのは、一人が抱え込むから辛いんです。こうやって誰かと共有すれば、意外とすんなり解決するもんですよ」
「……違いねぇ」
もちろん、俺が有能オブ有能だからいうのも理由の一つだけどね。
「あの剣を手に入れれば、エレノアの神性を切り離すことはできる。問題は、今のこの世界情勢でどうやってエレノアに会うか、だけど」
俺は顎を押さえて考える。
「あいつは聖女って身分で崇められちゃいるが、教会にとって遊ばせておくには惜しい戦力だ。戦争が始まった今、教会の権威を強めるためにも、必ず戦場に出てくるはずだぜ」
「……結局は、戦うしかないってことですね」
俺の呟きがよほど落ち込んでいたのか、アデライト先生が肩を抱いてくれる。
「一刻も早く、この戦いを止めましょう。及ばずながら私も力を尽くします」
「先生……ありがとうございます」
俺は先生を抱きしめ返す。
それを見たマホさんは、呆れたように額を押さえていた。
「やれやれ。エレノアが見たら発狂モノだろうな……」
そうかもしれない。
それでも、再会した婚約者との戯れを邪魔される謂れはないさ。
「まぁ、色恋沙汰なんか、アタシには関係のねぇことか」
マホさんがそんなことを囁いた、その直後。
カフェテリアに轟音が鳴り、大きな振動が生じた。
0
お気に入りに追加
1,209
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
クラス転移で裏切られた「無」職の俺は世界を変える
ジャック
ファンタジー
私立三界高校2年3組において司馬は孤立する。このクラスにおいて王角龍騎というリーダーシップのあるイケメンと学園2大美女と呼ばれる住野桜と清水桃花が居るクラスであった。司馬に唯一話しかけるのが桜であり、クラスはそれを疎ましく思っていた。そんなある日クラスが異世界のラクル帝国へ転生してしまう。勇者、賢者、聖女、剣聖、など強い職業がクラスで選ばれる中司馬は無であり、属性も無であった。1人弱い中帝国で過ごす。そんなある日、八大ダンジョンと呼ばれるラギルダンジョンに挑む。そこで、帝国となかまに裏切りを受け─
これは、全てに絶望したこの世界で唯一の「無」職の少年がどん底からはい上がり、世界を変えるまでの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
カクヨム様、小説家になろう様にも連載させてもらっています。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる