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戦場に行くことが決まりましたの

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 場の視線が俺に集まる。

「ロートスさん。ですが〈妙なる祈り〉は……」

 先生の問いかけに、俺は頷く。

「そうです。あの力は、もう俺の中にはありません」

「おい。自信満々に言いやがってなんだそりゃ。だったらどうするつもりなんだよ」

「大丈夫です。俺の中にはありませんが、とある場所に残っているはずです」

「もったいぶらず言えよ。どこにあるんだ」

「旧王都ブランドン。魔法学園の広場に立つ、ファルトゥールの塔にあります」

 ヘッケラー機関が送り込んできた刺客と戦った時、俺は一振りの剣に祈りを吹き込んだ。覚醒した〈妙なる祈り〉をもってして、剣で無双をしようとしたからだ。そして、やっぱりいらねってなって床にぶっ刺した。
 あの剣はまだあの場所に刺さったままのはず。剣術を習得した今の俺なら、あれを自在に使いこなせるに違いない。

「〈妙なる祈り〉を吹き込んだ剣。あれなら、斬るということに関しては無限の可能性を秘めてる。だから、エレノアから神性だけを切り離すことだってできる」

 マホさんは、まさに目からウロコ状態だった。

「ははっ……そんなモンを、隠してやがったとはな」

 別に隠してたわけじゃない。単に忘れていただけだ。
 だが、必要な時に思い出すことができたからいいんだ。あの時、特に意味もなく作り出した剣が、今になって役に立とうとしている。俺の戦いに無駄なことなんか一つもないんだ。

「さぁ。光明が見えてきたところで、みんなお茶を飲もう。せっかくこの子が淹れてくれたんだ」

 俺の言葉に、のっぺら少女はぺこりと頭を下げる。

「あら、とても美味しいですわ」

 真っ先に飲んだアイリスが、のほほんとした笑みで感想を述べた。
 アデライト先生とマホさんも、同意の首肯を見せている。
 のっぺら少女は嬉しそうだ。ちょっと照れている節もある。不思議と、俺にはこの子の感情が理解できるのだ。

「エレノアを殺す必要はないとわかった。じゃあ次はどうするか、って話になるんだけど」

「簡単に流すなよ。死ぬほど悩んでたアタシがバカみてぇじゃねぇか」

「悩みってのは、一人が抱え込むから辛いんです。こうやって誰かと共有すれば、意外とすんなり解決するもんですよ」

「……違いねぇ」

 もちろん、俺が有能オブ有能だからいうのも理由の一つだけどね。

「あの剣を手に入れれば、エレノアの神性を切り離すことはできる。問題は、今のこの世界情勢でどうやってエレノアに会うか、だけど」

 俺は顎を押さえて考える。

「あいつは聖女って身分で崇められちゃいるが、教会にとって遊ばせておくには惜しい戦力だ。戦争が始まった今、教会の権威を強めるためにも、必ず戦場に出てくるはずだぜ」

「……結局は、戦うしかないってことですね」

 俺の呟きがよほど落ち込んでいたのか、アデライト先生が肩を抱いてくれる。

「一刻も早く、この戦いを止めましょう。及ばずながら私も力を尽くします」

「先生……ありがとうございます」

 俺は先生を抱きしめ返す。
 それを見たマホさんは、呆れたように額を押さえていた。

「やれやれ。エレノアが見たら発狂モノだろうな……」

 そうかもしれない。
 それでも、再会した婚約者との戯れを邪魔される謂れはないさ。

「まぁ、色恋沙汰なんか、アタシには関係のねぇことか」

 マホさんがそんなことを囁いた、その直後。
 カフェテリアに轟音が鳴り、大きな振動が生じた。
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