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よくわからん

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 一面が眩い光に満たされながら、俺の視界は驚くほど鮮明だった。
 上も下も真っ白に染まった、異質な空間。
 ウィッキーの『ツクヨミ』が完全なる闇の世界だとしたら、こちらは完全なる光の世界だ。

「ここで一体、何が起きるんだ?」

 根源粒子によってスキルを獲得するというが、何をすればいいんだろう。ぼーっと突っ立っていてもいいんだろうか。

『聞こえるかい?』

 あ、この声は。

「マシなんとか五世?」

『ああ、ようやく声が届いたね』

 声を聞くだけで、胡散臭い笑顔が浮かぶようだ。

『その場所は〈座〉に限りなく近い空間のようだね』

「だから声が届くってか?」

『そう。根源粒子によって、君の生命が純粋な状態に戻りつつあるのさ』

 よくわからん。

『うぇーい。ロートス君おっひさ~!』

「やっぱりお前もいるんだな」

 エンディオーネの声は相変わらずやかましい。

『つれないなー。もーちょっと喜んでよ~。久しぶりにお話できるのにぃ』

「そんな余裕はねぇな。俺は今どうやったらスキルを得られるか考えるのに忙しいんだ。つーか、こうやって話しかけてきたからには、それを教えてくれるんじゃないのか?」

『そーそー』

『アデライト女史がキミに何も伝えなかったのは、僕達の声が届くことを知っていたからだよ』

 なるほど。
 先生が、この世の真実云々と言っていたのは、座と交信をしたということだったのか。

「わかった。それで俺は、どうすればいい?」

『内なる魔と戦うんだ』

「なに?」

『宿命と言った方がわかりやすいかな? このままただスキルを付与すれば、運命が補強されるだけだ。エストに対抗したいなら、それは避けたいだろう?』

「まぁな」

『だから、まずは自分の宿命と向き合うんだ。この場所なら、それができる』

「できるったって」

『そう思うことが大事ってわけ! ほら、思い描いてみて! 自分の宿命!』

「自分の宿命ねぇ」

 いきなりそんなこと言われてもな。
 たしかに、自分の運命についてはいつも考えている。

 何の因果か、異世界にやってきて、この世界のために生きることを決意した。
 元の世界でただなんとなく生きていたら、こんなことにはなっていなかったし、自分の運命とか宿命とか、そんなことについて考えるなんて一切なかっただろう。

 神だとか世界だとか、スキルだとか瘴気だとか、思えば散々な目にあってきた。
 結局のところ、人の宿命ってのは、自分のクソったれな運命との終わりなき戦いなのかもしれない。

『そろそろ出てくるんじゃないかなーっ?』

 俺の目の前に、人型の靄が浮かび上がる。
 それは次第に輪郭を鮮明にし、人間の姿を取った。

「ははっ……」

 その姿は、元の世界での俺自身の姿だった。
 御厨蓮。冴えない男子大学生。
 苦笑もやむなしだ。

「宿命ってのは、つきつめれば過去からの軌道だ。敵でもなく、環境でもない。自分が歩いてきた道そのもの。その道がどういう意味を持つのかは、これからの歩き方次第だろう」

 目の前の俺が言う。

「不遇を嘆かず、大きな目的に生きる時、この先の道は無限に広がっていくに違いない。そういう意味で、宿命とは、使命を果たす戦場とも言える」

 俺はそう答えた。

「完全に、そういうことだな」

 目の前の俺が、同意の呟きを口にした。
 俺と俺は、互いに手を取り、そして、ゆっくりと溶けあっていく。
 御厨連と、ロートス・アルバレスが、融合する。

「完全に、そういうことだ」

 二つは一つになった。
 過去と現在、そして未来は、すべて俺の中にある。
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