異世界転生でチートを授かった俺、最弱劣等職なのに実は最強だけど目立ちたくないのでまったりスローライフをめざす ～奴隷を買って魔法学(以下略)

急に発覚した真実や

　なんとか倒せた。
　はやくセレンの所に向かおう。
　アイリスがいるから大丈夫だとは思うが、それでも一人じゃきついはずだ。

　そんなことを思って馬車の後を追おうとした時、ちょうど隊列がこちらへ戻ってきているのを発見した。
　どうやらモンスターに追い立てられているらしく、アイリスが殿を務めて敵を防いでいる。
　モンスターの数は三体。どれも大型のやつだ。

「コーネリア！　急げ！」

　俺は軍を率いるコーネリアに呼びかける。
　彼女をはじめとする騎士達は必死にこちらに駆けてくるが、モンスターを引き離せない。アイリスがいるのにこれって、ギリギリすぎる。
　だが、俺が加わればなんとかなるだろう。なぜならサーデュークはすでに倒したからな。

　そう思った瞬間だった。
　背後から強大なプレッシャー。
　咄嗟に振り返ると、サーデュークの吹き飛んだ上半身が再生し終えるのが見てとれた。

「おいおい……！」

　しくじった。
　俺自身、斬り落とされた腕を瘴気で再生させた経験がある。
　ならば、同じことが奴にもできるはず。どうしてそこに思い至らなかったのか。油断していた。瘴気に侵されたモンスターは、頭部を失っていも生きていたということを失念していた。
　馬鹿か俺は。

「ダメだ！　来るな！」

　さっきとは反対の言葉を叫ぶ俺。

「ウーム。無駄だ」

　遅かった。詰んだ。
　復活したサーデュークは地を蹴り、一直線に馬車へと迫る。
　ダメージを負った俺はそれに追い付けない。

　ヤバイ。
　これはまじでヤバイ。
　万事休すとはまさにこのことだ。

「うおおッ！」

　叫んだのはコーネリアだった。
　剣を抜き、迫るサーデュークに立ち向かう。
　あのバカ女。お前なんかが勝てる相手じゃねぇ。

「ム！」

　俺の予想に反して、サーデュークは一瞬の困惑を見せた。
　コーネリアが放った斬撃を、急停止からの後退で回避する。

「よけた？」

　思わず俺の口から零れたのはそんな言葉だ。
　コーネリアの攻撃なんか構わず、蹴散らして馬車を襲うこともできたはずなのに。
　何故そうしなかったのか。
　コーネリアとはじめとする騎士達と、サーデュークが睨み合う。

「その剣を下ろせ。コーネリア」

　サーデュークの言葉に、コーネリアがびくりと肩を震わせる。

「なに……！」

「お前が王室のために剣を振るうことはない」

「何を言う！　魔族ごときに指図される覚えはない！」

　必死に虚勢を張るコーネリアだが、気圧されている感は否めない。

「フン。それがあるのだよ」

　おもむろに兜を脱ぐサーデューク。
　さらりと、艶やかな長い銀髪が露わになる。

「な……そんな……！」

　コーネリアは愕然とする。
　彼女だけじゃない。周囲の騎士達の中にも同じ反応をしている者もいた。

「お父様……！」

　は？
　なんだと。どういうことだ。
　サーデュークが、コーネリアの父親だってのかよ。