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はっきりとね

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「コーネリアの家はどうなったんだ?」

「公爵家は当主不在のまま保留になってる。一人娘である彼女が爵位を継ぐまで、そのまま。あたしは彼女に家を継いでほしい」

「だから、コーネリアに武勲を立てさせようって?」

「ちがう。彼女には立派な貴族になってほしい。その為には、騎士として、人の上に立つ者として、一人前になってもらわないといけない」

「言わんとすることはわかる。けどな……そんな悠長なことを言ってる場合か? 瘴気のせいで国が、いや、世界が危機に陥ってるってのに」

「こんな時だからこそ、人材の育成が重要」

 セレンの瞳の奥には、折れない意志が垣間見える。

「ここだけの話。俺の従者ならお前をすぐにメインガンに連れていける。コーネリアも一緒にだ。あいつが大切な家族だってんなら、二人で安全な場所に行った方がいいんじゃないか。人材の育成なら、それからでも遅くないだろ」

「真の強者は、戦いを選ばない。それを目指す者もまた同じく」

 抑揚のない、しかし毅然とした声。

「お父様はいつも口癖のようにそう言ってた」

 俺は額を押さえる。

「おねがい。あたしじゃ彼女の導きにはなれないから」

 どうやら、説得に応じる気はなさそうだ。
 自分を危機に晒してまで、コーネリアを未来を開こうとしているのだろう。

「参ったな……」

 まさかこんなことになろうとは。
 さっさとセレンを安全な場所に送り届けて、神の山に向かわないといけないのに。
 普通に考えりゃ、こんな頼みは無視すべきだ。
 だが、俺の心はそうは言っていない。

「わかったよ」

 正直お手上げだな。美少女にこうも頼み込まれちゃ、断れるわけもない。
 これまで同様、直感に従って行動しようかな。

「だけど、こっちからも頼みがある」

「なに?」

「セレン。お前には、鍵の一人になってもらう」

 もともとセレンを探すのは、〈八つの鍵〉を求めてのことだった。
 その目的を達するためだと考えれば、コーネリアを助けるのもそれほど回り道じゃないかもしれない。

 俺はエストを消滅させるために必要な八人のキーパーソンを集めていることを伝える。それから、三人の女神による陰謀も。
 相変わらず無表情を維持していたが、それなりに驚いているようだった。

「女神の真実。エストを消滅。にわかには信じられないこと」

「けど事実だ。神だなんだと崇められちゃいるが、あいつらは人のことなんかなんとも思っちゃいない。神にとっての秩序は、人が思うそれとはかけ離れているのさ」

「あなたの言う通りにすれば、世界はよくなる?」

「……ああ。少なくとも俺はそう信じてる。いま世界に広がってる瘴気だって、元はといえばやつらの仕業だしな」

 セレンはしばらく考え込む。
 頭の中を整理しているのだろう。

「わかった。あなたを信じる。鍵の役割も果たす」

 やったぜ。

「だから、彼女のことも」

「ああ。任せておけ」

 グランオーリスでやるべきことが増えたな。
 まぁ、目的が明確なのはいいことだ。目標もなく放たれた矢が的に命中するわけもない。
 セレンの依頼を果たし、神の山で呪いを解き、封印を破壊する。
 ま、やってやるさ。
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