上 下
488 / 981

打ち切りは不要じゃ

しおりを挟む
「エルフは、亜人でありながらスキルを持つ特別な種族じゃ。そういう意味で、他の亜人とは扱いが異なる。亜人でありながら人間と同格の社会的立場を持っているじゃろう。王国内で森の自治を獲得しておるのはそのためじゃ」

「ああ。それはなんとなくわかるぞ」

「そんなエルフに、わしらは嫉妬しておる」

「嫉妬?」

「情けない話じゃがの、なぜ同じ亜人である奴らが優遇され、わしらが冷遇されるのかと」

「なるほど……」

「エルフは魔法に長けた種族じゃ。だからスキルを持っていても使うことは少ない。エルフにとってはスキルよりも魔法の方が強力じゃからの。そういうところも、また妬み嫉みの原因となるのじゃ」

「スキルを使わないなら俺達と同じじゃないかって?」

「そういうことじゃ」

 うーむ。

「サラ。獣人とか、他の種族とかは、どうだ?」

「おおむねエカイユの方々と同じなのです。エルフのことを嫌いな人はいても、好きな人はいないと思うのです」

 まじか。
 それは辛いな。

「俺としては、エルフに亜人連邦の統一を手伝ってもらおうと思ったんだけど、やっぱダメかな」

 これにはサラも戦士長も、難色を示していた。
 だが、意外なところから賛成の声が上がる。

「いいんじゃねーか? オイラはアリだと思うぜ」

 ロロだった。

「おっかちゃんやおっとちゃんから聞いたことがあるんだよ。オイラ達もエルフみたいになれたらってさ」

「エルフみたいに?」

「ああそうさ。オイラ達が目指すのは、エルフみたいな暮らしだって言ってたぜ。エルフみたいに、人間に邪魔されずに生きたいって」

 これには、サラも戦士長も目から鱗だったようだ。

「むぅ……認めたくないことじゃが、確かにそうかもしれんのぅ」

「妬むってことは、羨ましいってことなのです。みんな心のどこかで、エルフみたいになりたいと思っているからこそなのです」

 亜人のことは亜人にしかわからないだろう。

「エルフの協力があれば、統一しやすくなるか?」

「やってみる価値はあるのです」

 サラは力強い瞳で頷いた。

「それで自由になるのなら、皆よろこんで説得に応じるじゃろう。わしらエカイユも、連邦の統一に力を貸すぞい」

 戦士長の言葉に、サラがちょっと驚いていた。

「協力して下さるのですか?」

「決闘の結果には納得しておらんぞ。ハラシーフが負けたとは思っとらん。じゃが、それでも協力はするつもりじゃ」

「どういう風の吹き回しだ? あんなにキレてたのによ」

「ふん。わしらも変わらねばならんと悟ったのじゃ。時代が変わろうとしておるのに、人が変わらんわけには行くまい。生き残るため、自然の摂理に従うまでよ」

「そうかい。そいつはありがたい。サンキュな」

「勘違いするな。別に貴様のためではない。礼は不要じゃ」

 戦士長はフンと鼻を鳴らす。
 おっさんのツンデレは不要じゃ。

 それはともかく。

「そうと決まれば早速行くか。アイリス」

「はい」

「運んでくれ。エルフの森にひとっ飛びだ」

 アイリスは指示を仰ぐようにルーチェを見る。
 ここで即答してもらえないのが忘れられた男の悲しいところだな。

「ロートスくん。いま王国に行くのは危険だよ。私達はもう、反逆者ってみなされてる」

「関係ないね。正直、この世界に安全な場所なんてひとつもない。クソ女神がのさばってる限りはな」

「……それもそっか」

 ルーチェはにこりと微笑み、

「アイリス。ロートスくんをお願い」

「かしこまりましたわ。おまかせあれ」

 俺はアイリスと共に砦を後にする。

 さあ、盛り上がってきたな。
 俺の戦いは、まだまだこれからだぜ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

処理中です...