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秘められたワケ

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 その日の深夜。
 大きな寝台の上で、俺は生まれたままの姿のオルタンシアに腕枕をしていた。
 運動の後で汗ばんだ肌が、妙に色っぽい。

「種馬さま……自分は、本当にここから出られるんでしょうか?」

「出られるさ。女王がそう言ってただろ」

「はい……けど、女王さまが許しても、官僚達がそれを許すかどうかは、わかりません」

「ふーん? 暗躍する連中がいるってことか?」

「おそらくですけど……種馬さまを亡き者に、とか企てるかもしれないんです」

「はは。そりゃ上等だ」

 女王の意思を無視するのかな。
 あるいは、アルドリーゼは口ではああ言っていたが、本当の狙いは俺を殺すことなのかもしれないとか。
 まぁ考えても仕方ない。確かめようがないもんな。

「けど、それなら襲ってこないのはなんでだろうな」

「え?」

「俺とオルたそがやってる最中に襲撃してこなかったのは、なんでだろうなって」

「……えっと」

 顔を赤らめるオルタンシア。かわゆ。

「たしかに……」

「だろ?」

 とはいえ、すんなりとここを出られる確証がない以上、ささっと脱出した方がいいかもな。

「よし。今から行こう」

「今から、ですか?」

「ああ。夜のうちにマッサ・ニャラブを出て亜人連邦に入る。形式だけでも女王の許可は下りてるんだ。問題はないさ」

 というわけで、俺達は服を着る。
 オルタンシアのエスニックな装いが超ベリーグッドだ。
 俺達は互いに手を握り、部屋から出る。

 だが。

「どこに行こうというのですか。聖母さま」

 部屋の扉は、すでに十数の刺客に囲まれていた。
 全員、剣とか槍でがっつり武装している。まじかよ。

「あ……」

 さっと俺の後ろに隠れるオルタンシア。

「さぁ。部屋にお戻りください。救世神さまも」

 刺客達はみんな若い女だ。ヒョウを思わせるしなやかな四肢。ビキニの上に布一枚を巻いているような服装は、オルタンシアと同じような感じだ。だが、鼻から下は布で覆っており、腕と脛には金属製の防具を装着している。
 ジェルドの女戦士ってわけか。

「悪いが夜の散歩は外せない日課なんだ。邪魔しないでくれるか」

「その日課、命をかけるほどのものですか」

「とうぜん」

 言いながら腰の剣に手をかける。

「俺にこいつを抜かせないでくれよ。オルたその同族を斬りたくはねぇ」

「見くびられたものだ。我々ジェルドの影を甘く見ない方がいい」

 場は緊迫した。一触即発の雰囲気だ。
 やる気だなこいつら。

「こいつを抜く前に、一つ聞いていいか?」

「なんだ」

「俺を殺す気なら、どうして俺とオルたそがやってる最中に襲わなかった?」

「っ! それはっ……!」

 なんだこの反応は。なにか理由があるのか。
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