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そういえばあれな

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「まさか……オルたそ……」

 そうだよ。確かそうだ。

「もしかしてその子、オルタンシアの子どもなのか?」

 アルドリーゼがにやりと唇を動かした。

「おや~。よく知ってるね~。キミ、うちの一族について詳しいんだね~」

「詳しいっていうか……いや待て。っつーことは」

 タイミング的にも間違いない。
 いや、もちろん他の可能性だってあるが。
 普通に考えたら、そうなるだろ。

「アー」

 その時、赤ん坊が声を上げた。
 アルドリーゼの腕の中で、俺を指さしている。

「ぱぱー!」

 そして嬉しそうに、そんなことを言い出した。

「やっぱり、俺の子か……」

 オルタンシアとの旅の途中、俺は確かに彼女に種付けした。それが命中していたんだろう。
 あれから二年。生まれた子が一歳になっている。
 俺からすれば、ちょっとしたパニックだな。

「ん~? ぱぱー? どういうことかな~?」

「ぱぱ! ぱぱ! ぱぱー!」

 子どもは必死に何かを主張している。何かっていうか、パパって言ってるんだけど。

「ん~。なるほど~。あの人がアナちゃんのパパなんでちゅか~」

「はぁーい!」

 元気に手を挙げる。明らかな肯定の仕草。

「そっかそっか~。わかったよ~」

 アルドリーゼがよしよしすると、キャッキャッと喜ぶアナちゃん。

「ね~キミ~」

「……なんだ」

「名前。なんだっけ? さっき聞いてなかったんだけど~」

「ロートス・アルバレスだ」

「ほ~ん。どこかで聞いたことある名だね~」

 ジェルド族に伝わる石板。救世神について書かれたあれは、今は消滅しているだろう。だから、俺の名を知る方法はないはずだが。

「女王さんよ。一つ聞いていいか」

「なに~?」

「その子の母親。オルタンシアは、今どこにいる?」

「ジェルドの里にいるよ~。ちょっと体調を崩しててね~」

「……病気なのか?」

「まぁそんなとこ~」

 それは心配だな。会いに行ってやりたいが。

「まぁいいじゃないのそんな話は~。兵隊引き連れてする話でもないしさ~」

「……そうかもな。それならこっちの話をさせてもらう。いま連邦はヴォーパル・パルヴァレートとの戦いでバタバタしてる。今日のところは帰ってほしいんだが、どうだ?」

 ジェルド族のざわめきが大きくなる。

「ん~。まぁアレを倒しちゃったんなら余達の用事もなくなったも同然だもんね~」

「なら」

「けど~、ここまで来て何もなしに帰るってのは~、国民感情的にも政治的にも都合が悪いっていうか~」

「なんだと?」

「だってそうでしょ~? 何の為に税金使ってこんな大軍引っ張り出したんだ~、って言われちゃうんだよ~。世知辛い~。ね~アナちゃーん」

「んー」

 言わんとすることは分かる。むこうにも言い分ってのがあるのは当然だ。
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