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憎しみの連鎖はあかん

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「アニキーッ!」

 ロロがフォルティスを引いて駆け寄ってくる。

「大丈夫か!」

「ああ……」

 今のところ問題はない。
 地面に叩きつけられたダメージもそれほどでもない。普通の人間だったら即死していただろうけど、俺は鍛えてるからな。

「あの、なんか叫んでたやつはなんだったんだ? あれ、ヘリなんとかってやつ」

「それは気にしなくていい」

 戦いは人をおかしくするものだ。戦闘状態においては、普段の落ち着きや聡明さが嘘みたいに消えてしまうのだ。そうだ。俺は普段は落ち着いていて聡明なのだ。
 それはともかく。

「見ろ。瘴気が」

 空に渦巻いていた瘴気が大きく動いている。

「なんだ? こっちに落ちてくる……?」

 揺らめいていた分厚い瘴気が、急に加速して急降下してくる。

「おいおい……うっそだろ!」

「ロロ! 離れてろ!」

 俺はフォルティスのお尻を叩く。手綱を握っていたロロは、フォルティスに引っ張られるしかない。
 集束しながらこちらに向かってくる瘴気は、そのまま俺の右腕の痣に巻き付いた。

「こりゃやばい気がするぜ……!」

 腕の痣が、瘴気をどんどん吸い込んでいく。
 それに合わせて、痣が少しずつ広がっていく。

「うおお」

 空を覆っていた膨大な瘴気を全て吸い込んだ後、前腕にしかなかった黒い痣は二の腕にまで広がっていた。
 まじか。呪いが大きくなった感じかこれは。

 しかし瘴気は晴れた。暗かった空は晴れ渡っており、清々しい朝陽が降り注いでいる。
 エカイユ達から歓声が上がっていた。

「おお! バケモノが死に、瘴気が消えた……!」

「あの人間が、呪いを祓ったというのか」

 そうだよ。
 だから、集落を救った英雄として崇めてくれないかな。
 そんなかすかな望みは叶わない。生き残ったエカイユの戦士達は、武器を構えて俺を取り囲んだ。

「人間に助けられるとはな。我が一族の恥だ!」

「こうなっては、この人間を殺してなかったことにするしかないぞ!」

「その通りだ! そいつは呪いを吸い込んだばかりで弱っている! 殺せ!」

 人間嫌いここに極まるって感じだな。
 中には人間に助けられるくらいなら全滅した方がマシだったと真面目に考える奴もいるかもしれない。

 さて、どうする。
 彼らを返り討ちにするのは簡単だ。だが、エカイユ達を説得しに来た以上ヘタな真似はできない。
 それか予定通りひと暴れするか。遅れてやってきたサラに負ければ、それこそ計画通りになる。
 いや、俺の強さを見せた後にそんなことをすれば、マッチポンプであることがバレバレか。

「ちょっと待てよお前ら!」

 乱入してきたのはロロだった。
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