上 下
436 / 981

バリアってええなぁ

しおりを挟む
 轟音。
 凄まじい爆発音が鼓膜を叩き、馬車を揺るがした。

「なななんだよっ!」

 ロロが肩を震わせる。

「大丈夫、落ち着いて」

 ルーチェは特に慌てた様子はない。

「この馬車には魔法障壁を展開する魔道具が備え付けられているの。このくらいなんともないよ」

「馬も平気なのか?」

「もちろん」

 よかった。
 フォルティスに何かあったらオーサと副長に合わせる顔がないからな。
 次々と飛来する魔法の砲弾の直撃を受けながら、馬車はぐんぐんと進んでいく。

「なぁ……ほんとに大丈夫なのかよ……」

 バリアがあるといっても、衝撃と振動は伝わってくる。爆発音も並じゃない。
 ロロは不安そうに俺に抱き着いてくる。

「ほんとに大丈夫。いつものことだから」

 ルーチェはこともなげに言うが、これがいつものことっていうのは中々にスペクタクルな生活を送っているんだな。
 俺も人のことを言えないけど。
 しばらくすると、砲撃が終わる。

「止まったか。何だったんだ、一体」

「国境を侵犯する者は誰であろうと攻撃するって、協定で決められてるんだよ」

「じゃあ、亜人達の攻撃か」

「そういうことだね。攻撃が止んだのは、この馬車に描かれた『大魔導士』の紋章が見えたから」

「ふーん。エレノアって亜人連邦にも影響力があるってことか」

「亜人連邦っていうか。サラちゃんに、だね」

 ふむ?
 エレノアとサラってそこまで仲が良いイメージはないけどな。

「これは私の推測だけどね」

 ルーチェがぴんと指を立てる。

「ロートスくんが築いてきた人間関係というか、絆みたいなもの。それがエレノアちゃんに引き継がれてるんだと思う」

 それは俺も思っていた。そう考えると辻褄があうところがあるからな。

「でね、たぶんだけどサラちゃんは、ロートスくんがいなくなったことへの違和感に気付いてる」

「……なんだと」

「私もロートスくんと再会して思い出すまではスルーしてたんだけどね。二年前から、サラちゃんは殊更にエレノアちゃんに接触したがってた。ロートスくんを覚えているとまではいかなくても、異変を感じ取ってるような気がしたんだ」

 なるほど。
 確かにサラならありえる。
 というのも、あいつはドルイドの血統。つまり、ファルトゥールの系譜なわけだ。
 確か、ファルトゥールの魔力を受け継いでいるという話だったか。
 会ってみないことには何もわからないけどな。

 しばらくして、馬車が停止する。

「着いたみたいだね」

 ルーチェが馬車の扉を開く。

「行こう。亜人連邦の防衛基地だよ」

 そんなところに入っていって大丈夫なのか。
 と思う間もなく、ルーチェは馬車を降りた。アイリスもそれに続く。
 俺もロロを伴って降車するか。

 馬車の前には、既に大勢の亜人が列を為していた。
 みな、攻撃的な雰囲気だ。
 そして、いた。

「ようこそ亜人連邦へ。歓迎します」

 少し大人っぽくなった声。
 サラだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。

みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ! そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。 「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」 そう言って俺は彼女達と別れた。 しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

処理中です...