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感動でしょうこれは

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「ありがとうございます」

 先生はぺこりと頭をさげる。

「あなたがいてくれなかったら、もっとたくさんの生徒達が犠牲になっていた。私も危なかったでしょう」

「気にしないでください。やるべきことをやっただけです」

 相変わらずのイケメンだな俺は。

「あなたは、この学園の生徒なんですか?」

「あー。昔通ってた感じですね。ブランドンにあった頃に。まぁ、中退みたいなもんです」

「お名前を伺っても?」

「……ロートス・アルバレス」

 その瞬間、先生の表情が固まった。

「ロートス・アルバレス? あなたが?」

 なんだと。この反応はなんだ。

「俺を知ってるんですか?」

 答えずに立ち上がった先生は、部屋の奥にあるデスクへと向かう。引き出しから一枚の封筒を取り出し、俺に渡してくれる。

「これは?」

「読んでください」

 左手で開封する。
 中には一枚の便箋が入っていた。
 俺はそれを広げ、読んでみる。

『親愛なるロートスさんへ』

 俺宛ての手紙だ。

『あなたがこれを読んでいるということは、目の前には記憶をなくした私がいるのでしょう。どうか、あなたを忘れてしまった私をお許しくだ
さい。ロートスさんが世界から忘れられてしまわないための研究は、遅々として進んでいません。毎日記録を残してはいますが、これが何の役に立つものやら。ですが、一つわかったことがあります。ルーチェさんが持つアイテムボックス。帝国の魔導技術の粋を結集したこのマジックアイテムの内部は、世界から隔絶されています。もしあなたがこの世界から消えてしまっても、その瞬間アイテムボックスの中に入っているものは影響をうけない。ちゃんと残るんです』

 ええ。
 そういう仕組みだったのか。

『ですから、研究のデータと、ロートスさんの今までの足跡は、すべてアイテムボックスの中に記録として残しておきます。恥ずかしいので、私だけに見られるようにしておきますね。ごめんなさい』

 あら~。

『最後に。私のところに戻ってきてくれてありがとう。必ずあなたのことを思い出しますから、もう少しだけ辛抱してくださいね。あなたを世界一愛するアデライトより』

 泣けるぜ。
 アデライト先生はちゃんと俺にメッセージを残してくれていたんだな。

「私はあなたを知っています。でも、それは記録として残されたものを見たから。私の記憶にはロートスという人物はいません」

「わかってます。俺は世界から忘れられた人間だ。俺を覚えてるのは神とか、仙人とか、英霊とか、そういう次元の存在ですし。信じられないのも無理はない」

「信じないわけじゃありません。その字には私の魔力が吹き込まれています。スキルや魔法で捏造できるものじゃないんです。私は確かに、あなたと生きていたのでしょう。けれど、実感がわかないのです」

 申し訳そうに俯く先生に、俺は苦笑する。

「いいんです。無理に思い出そうとする必要はない。先生は何もしなくていい。俺がなんとかします」

「ですが……」

 その時だった。
 研究室の扉が、勢いよく開かれた。
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