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ルーチェと対談

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 客間にて。
 俺はロロと隣り合ってソファに座り、対面のルーチェと向き合っていた。

「なにから話そっか」

 目を閉じて思案するルーチェ。

「そうだな……二年前、何が起こったか、とか」

「うん」

 目を開くルーチェ。

「二年前。ロートスくんがグラン・オーリスに向かってる時、私はアデライト先生やウィッキーと一緒に、ロートスくんを忘れないための研究をしていたの。でも、急にみんなあなたのことを忘れちゃった。驚いたよ。エストを消滅させるまでまだ猶予があると思ってたから」

「……先生やウィッキーも?」

 ルーチェは首肯する。

「そうか」

「ごめんなさい」

「ルーチェが謝ることじゃない」

「ううん。それだけじゃないの。実は私も、さっきロートスくんに会うまで、すっかり忘れちゃってたから」

「どういうことだ?」

「私には神族の血が流れてる。だから、ちょっとしたきっかけで思い出せたんだと思うの。今までも違和感を覚えることはあったんだけど、それがロートスくんの顔を見たことではっきりしたっていうか……ごめんね、このあたりは感覚だから言葉じゃうまく説明できないの」

「わかるよ。俺もそういうことはたくさんある」

 なるほどな。
 ルーチェは神族の末裔だから俺のことを覚えているというのは予想通りだったわけだが、思い出したのがついさっきとは意外だった。それでも十分マシだけどな。
 神族は神ではなくただの古代人だが、マーテリアに触れエストを創り出したという過去がある。つまり、その時点でこの世の理から片足を踏み外した者達だ。
 となると、マホさんにも同じことが言えるか。あの人は血が薄いと言っていたからどうかわからないけども。

「なら、みんなの中で俺のことを覚えているのは、いまんとこルーチェだけか?」

「たぶん……たぶんね」

「まぁこうしてルーチェが思い出してくれたんだ。ほんとに安心したぜ」

「うん」

 ルーチェの微笑みには陰がある。今の今まで忘れてしまっていたことに後ろめたさを感じているのだろう。そんなの気にすることじゃないのにな。

「それから、どうなったんだ? 今、みんなはどうしてる? この国はなんかやばいことになってるけど、一体どうしてこんなことに?」

「順を追って話してくね」

 ルーチェは紅茶のカップを持ち上げ、唇を濡らす。

「みんながロートスくんを忘れてから、みんなはそれぞれの生活に戻っていったんだよ。ロートスくんを中心にひとつに集まってた人達が、バラバラになっちゃった感じかな。でも完全に別々になったわけじゃなくて、私達みたいに離れていなかったりしてて」

「そこだよな。どうしてルーチェとアイリスがエレノアの従者になってるんだ?」

「わからないの。私も、なんの疑問もなく最初からそうだったみたいに受け入れちゃってて……さっきも言ったように、ところどころ違和感はあったんだけど。具体的にそれがなんなのかは見当もつかなかった。だから、気のせいかなってずっと思ってたんだ」

 ふむ。おおむね俺の考えていた通りか。
 やはり世界の修正力的なものがはたらいているんだな。
 だがそれも無効化できることがわかった。
 希望はある。
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