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はやくいこうよ

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 いや、理由は後で聞けばいい。
 この街にエレノアがいるとなれば、会いに行かない手はない。

「アイリス。宿の飯屋の案内はいい。エレノアに会わせてくれないか」

「アニキ、何言ってんだよ。オイラ腹減ってんだよー」

「後でたらふく食わせてやるから、ちょっと黙ってろ」

「ちぇっ」

 アイリスがくすりと笑う。

「おあいにくですが、お嬢様はお付きと一緒に旅に出ておいでです。帰ってこられるのはいつになるかわかりませんわ」

「旅? どこに?」

「それは申し上げられません。ただ、国外とだけ」

 王国にはいないってのか。
 俺が帰ってきたのにいないなんて、なんというタイミングの悪さだ。

「じゃあ、アイリスはいま一人で暮らしているのか?」

「一人ではありませんわ。メイド長と一緒に、主の屋敷を守っております」

「メイド長? もしかしてルーチェか?」

「あら、ご存じでしたか」

 まじかよ。ルーチェまでエレノアに仕えているのか。
 となると、俺の従者達はそのままエレノアに引き継がれたってことになるのか。どこの馬の骨とも知らん奴に仕えるよりかは百億倍マシだが、なんか複雑な気分だな。
 ってことは。

「サラもいるのか?」

 はたと、アイリスは足を止める。
 そして、くるりとこちらに振り返った。

「サラちゃんは……」

 声色が暗くなる。

「このお話はやめましょう。出会ったばかりの御仁に話すようなことではありませんわ」

 なんだよ。気になるな。
 それにしても、出会ったばかりの御仁か。
 そういわれると、やはり来るものがあるな。
 アイリスは再び歩き始める。俺とロロもそれを追う。

「わたくしからも質問してもよろしいですか?」

「ああ。なんでも聞いてくれ」

「あなたは何者です? どうしてわたくし達のことをご存じなのですか?」

「……難しい質問だ」

 馬鹿正直に答えても信じちゃくれないだろう。

「なんて言うべきかな。俺は昔、魔法学園に通っててな。エレノアとは同級生だった。戦争にもちょろっと関わってたから、知る機会があっただけだよ」

 俺の返答に、アイリスは俯く。

「どうかしたか?」

「いえ……申し訳ありません。すこし考え事を」

 ふむ。
 記憶の矛盾に戸惑っているようだな。
 マーテリアがどんな風に世界を書き換えたかしらないが、杜撰な仕事に感謝だな。

「なぁアイリス。ルーチェに会わせてもらうことってできるか」

「メイド長に? それはかまいませんが……」

「ありがたい」

 俺には心当たりがある。
 アカネ然り、マシなんとか五世然り。この世の理を超越した者は俺のことを忘れていない。

 そういう意味で、ルーチェに対してはすこし希望があるのだ。
 俺の思い込みに過ぎないのかもしれないが。
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