上 下
417 / 981

ドボール編はこれにておしまい

しおりを挟む
 とりあえず宿を取ることにした。
 俺にも休養が必要だし、ロロの身なりを綺麗にしてやりたいとも思ったからだ。

「すっげー高そうな宿だなぁ……」

 部屋に入ったロロは、ほぉーっと感動しながらそんなことを言っている。

「実際高い部屋だからな。一泊十万エーンだ」

「じゅうまんっ?」

 えらく素っ頓狂な声だな。

「無駄遣いじゃねぇかっ。だめだぜアニキ。金ってのはもっと大事に使わなきゃ」

「わかってる。今日は特別だ」

「とくべつ?」

「俺もまだ万全じゃない。療養も取りたいし……それに、お前が晴れて自由の身になった記念っていうのが一番だな」

「自由たって……おいら、アニキの奴隷じゃねぇか?」

「俺の奴隷は自由なんだよ。なんならそこらの市民よりよっぽど自由だぞ?」

「そうなのか? だったらなんでアニキはおいらを買ったんだよ?」

「それは……」

 うーん。答えにくい質問だ。

「同情しただけってんなら感心しないぜ。そんな理由で散財してたら、いくら金があっても足りねぇよ」

「違いない」

「それによ。この宿の奴らだっておいらが泊まるのイヤな顔してやがったし」

「それは仕方ないな。身なりが身なりだ」

 さすがに清潔感のない客は誰でも嫌がるだろう。

「ま、とりあえずお前は風呂に入ってろよ。しばらく入ってないだろ」

「そーだけど……おいら、着替えなんか持ってないぜ」

「買ってきてやるよ。宿の売店に服屋があったはずだ。身だしなみを整えれば嫌な視線も消えるだろうよ」

「ん。わかった」

 というわけで、俺は部屋を出て、一階の服屋に向かう。
 ふむ。

 服を選びつつ、俺は大会での出来事を思い出していた。
 アイリスは、少女の形をとった理由が分からないと言っていた。
 答えは俺に喜んでもらうためなんだが、それを忘れてしまっているようだった。そりゃそうだろう。俺という存在がいなかったことになっているんだから。

 となると、そこにぽっかりと矛盾ないし空白が生まれている感じだ。矛盾を解消するために記憶を捻じ曲げられていないのは幸いか。
 詰めるとしたらそこだな。
 いずれにしろ、みんなとの関わりをもう一回作らないとな。まずはそこからだ。

 服を買って、ロロのもとに戻る。
 部屋の奥からシャワーの音が聞こえてくる。

「おーい。ここに着替え置いとくぞ」

「おっ……おーう! あんがとなアニキ!」

「うい。俺はちょっと馬を取ってくるから、適当にくつろいでてくれ」

「あいよー」

 フォルティスを街の繋ぎ場に留めたまんまだからな。宿の馬屋に置かせてもらおう。
 その後はゆっくり休ませてもらおう。アイリスにやられたダメージを回復させないといけないからな。
 俺はふかふかのベッドにダイブする。

 回復したら、すぐにでも出発しよう。
 色々足止めを喰らったが、収穫はあった。
 とにかく、急いで魔法学園に行くんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

処理中です...