上 下
405 / 981

ここまでが第三部の導入ちゃいます?

しおりを挟む
 マーテリアのやつめ。
 世界の調和を整えるために、致命的な矛盾を作り出してしまったな。
 まぁ、俺が戻ってくるなんて考えてもいなかったんだろう。俺が戻ってきたこと自体、神の意思を超越する出来事だったわけだからな。

 こうなりゃ、一刻も早くみんなに会いに行かないとな。突破口があるとしたら、俺と強い繋がりがあった人だろうから。
 そうと決まれば話は早い。

「よし。オーサ、馬をくれるか。そろそろ行こうと思う」

「もうでやんすか? さっきまでやりまくってたのに、疲れてないでやんすか……?」

「やりまくってたって……そうだけどもうちょっと言い方があるだろ。女子なんだから」

「女子なんて歳じゃないでやんす」

 どこからどう見ても幼女なんだけどなぁ。エルフの年齢感覚はわからん。

「まぁ、疲れてはないぞ。体力はあるからな」

 はぁ~、とオーサは感心しているようだった。

「流石はキマイラを一刀のもとに切り伏せる男でやんすね」

「それほどでも」

 実は、驚いているのは俺も同じだった。精力が強すぎる。単純計算で連続百回の発射を行ったわけだが、萎えるどころかまだまだこれからだって感じのそそり立ち具合だった。
 これはおそらく、修行の成果だと思う。常識を越えた鍛え方によって、桁外れの精力を手に入れたのだろう。

 ふざけた話じゃない。
 精力が強いということは、単純に肉体が強いということに直結するからだ。
 スキルや魔法で肉体を強化しても、こうはならないだろう。〈妙なる祈り〉でも同じだ。

 つまり、俺の力は純粋な強度からきているということになる。
 人っていうのは、鍛え方次第でここまでのものになれるんだなぁ。

「あいわかったでやんす。すぐに馬を準備させるでやんすから、ちょいと待っててくれでやんす」

「すまんな。急かしちまって」

「気にすることはないでやんす。こちらの頼みを聞いてもらったのが先でやんすから」

 にぱっと笑って、オーサは家から出ていった。

 ふむ。
 思ったんだけど、これから生まれてくるエルフって、全員俺の子どもってこと? いつのことになるか分からないけど、エルフ全員に俺の血が入っていることになるんじゃ?
 深く考えていなかったけど、それはやばいな。
 全てのエルフの父になっちまう。
 やってしまったものは仕方ないから、腹は括るけどさ。

 扉が開き、オーサが戻ってきた。

「ロートス。待たせたでやんすな」

「あんまり待ってないよ」

「こっちに来てくれでやんす」

 オーサに手招きされ、外に出る。
 仏頂面の副長が、立派な馬を二頭引いていた。

「おお」

 思わず声が出る。
 精悍な漆黒の馬と、気品に満ちた白馬。かっこいい。

「私の馬だ。好きな方を選ぶナリ」

「いいのか?」

「キマイラを討ち、種の存続にも手を貸してくれた。これでも足りないくらいナリよ」

 副長は不機嫌そうに腕を組み、顔を背ける。

「なんだよ。ツンデレか?」

「うるさい。早く選ぶナリ」

 うーむ。どっちにしようかな。どっちもかっこいいけど。

「決めた。黒い方にする」

「一応理由を聞いておくナリ」

「俺に白馬は似合わないだろ?」

「間違いないナリな」

 王子様って柄じゃないしな。

「早速乗るぜ」

 言いながら、俺は乗馬する。

「こいつの名前は?」

「フォルティス。ちなみに雌ナリよ」

「おう。よろしくな。フォルティス」

 俺が首の裏を叩くと、ぶるぶると鼻嵐を鳴らす。

「言っとくナリが、貸すだけナリ。用が終わったらちゃんと返しに来るナリよ」

「わかってるって」

「エルフにとって馬は貴重でやんすからな。乱暴に扱わないでやってほしいでやんす」

「了解だ。大切にするよ」

 俺が旅立つとなると、里中からエルフが集まってきた。
 さきほど抱いた子達もいる。

「じゃあ、行ってくる」

「気を付けるでやんすよ。なんでか知らんでやんすが、ロートスは人間なのにうちの子達から好かれるようでやんす。ちょくちょく顔を出して欲しいでやんすよ」

「ああ。そうするよ。俺もみんなのお腹が気になるしな」

 たぶん、二年前の出来事が影響しているんだろう。俺が『清き異国の雄』であることを本能で感じ取っているのだ。記憶にはなくとも、魂は憶えているにちがいない。

「それじゃあな!」

 俺はフォルティスを走らせる。
 爽快な加速感に乗って、里を飛び出した。

 エルフ達が名残惜しそうに手を振っている。
 後ろ髪引かれる思いだが、俺にはやるべきことがあるからな。
 会わなきゃいけない人だっている。

「目指すは王都ブランドン。魔法学園だ」

 俺はフォルティスを駆り、エルフの森を駆け抜けるのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。

みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ! そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。 「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」 そう言って俺は彼女達と別れた。 しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

処理中です...