異世界転生でチートを授かった俺、最弱劣等職なのに実は最強だけど目立ちたくないのでまったりスローライフをめざす ～奴隷を買って魔法学(以下略)

修行の成果

　全身を翻し、着地。
　着陸地点から、ぶわっと土ぼこりが拡散する。

　ふむ。
　俺は自分の体を確認する。なんともない。
　どうやら、高度一万メートルくらいからの落下に耐えられる程度の力はついているみたいだ。正直、もうすこし痛みを感じると思ったが、意外となんともなかった。ちょっと足がじーんとするくらいだ。

「ふぅ」

　まずは、ここがどこかを調べないとな。
　周囲を見渡す。どこからどうみても森だ。そして霧が濃い。

「なんか見覚えがあるな」

　森は王国のいたるところにあるが、ここまで深い森は珍しい。
　そしてこの大自然の空気間。
　うん。わかるぞ。懐かしさを感じる。

「エルフの里だ、ここ」

　いつか訪れたエルフの住む森だ。森のどこにいるのかは分からないが、まぁなんとなく歩いていたらなんとかなるだろう。
　俺は歩き出す。それにしても霧が濃い。
　この森ってこんな濃霧が出るところだっけ？

　そんなことを考えながら歩いていると、上方から巨大なモンスターが現れた。降って湧いたとはこのことだ。
　四つ足の獣。顔は猿、胴体は虎、尾は蛇。いわゆるキメラってやつかな。
　キメラはぎょろりとした目で俺を睨み、分厚い咆哮を轟かせた。

「いきなりだな」

　剣の柄に手をかける。
　今の俺がどこまでやれるか、試してみるのも面白い。

　やってやるぜ。
　と思ったのも束の間。

「見つけたナリ！」

「これ以上この森を荒らさせるなでやんす！」

　聞き覚えのある声が聞こえてきた。
　あっと言う間に十数人のエルフが、キメラと俺を取り囲んでしまう。

「あれは……人間ナリか？」

「なぜ人間が聖域の森に……」

「今はそんなことを言っている場合ではないでやんす！　モンスターの駆除が先決でやんすよ！」

　おお。
　オーサと副長だ。久しぶりだ。
　相変わらず露出を極めた服装をしているんだな。乳首と局部だけを隠すようなきわどすぎる服装は、やはりこの世界のエルフだった。

　彼女達の品のないエロい装いを見ると、ああ俺はこの世界に帰ってきたんだなぁと実感する。
　思い出を反芻する俺に、容赦なくキメラが襲いかかる。その鋭く獰猛な爪が、凄まじい勢いで横薙ぎに迫った。

「あっ」

　と思った時にはもう遅い。
　俺は反射的に抜剣し、キメラの顔面から尾の先までを真っ二つに斬り捨てていた。

「あれ？　いま……」

　エルフの誰かが口にする。
　キメラの体はそのままだ。奴はすれ違った俺に振り返り、再び襲いかかろうとする。

　が、その瞬間。
　キメラが、二つに割れて崩れ落ちた。血や臓物を撒き散らし、キメラは絶命する。

　ああ、なるほど。
　俺の斬撃が速すぎて、死んだことにも気付いてなかったみたいだ。
　これはちょっと考えものだな。相手に死んだことをちゃんと気付かせてあげないと申し訳ない。

「これは……現実ナリか……？」

「少なくとも、夢ではないでやんすよ」

　副長とオーサのそんなやり取りを、剣を収めながら聞く俺だった。